(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年1月8日23時00分
香川県小豆島南岸
(北緯34度24.9分 東経134度14.5分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第八進洋丸 |
総トン数 |
496トン |
全長 |
65.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
第八進洋丸(以下「進洋丸」という。)は,昭和62年7月に進水した船尾船橋型鋼製の砂利採取運搬船で,A受審人及びB指定海難関係人ほか2人が乗り組み,空倉のまま,海水バラスト45トンを張り,船首1.3メートル船尾2.7メートルの喫水をもって,平成17年1月8日18時00分和歌山県湯浅広港を発し,鳴門海峡経由予定で,愛媛県新居浜港に向かった。
A受審人は,自ら発航操船に当たったのち,3時間半の船橋当直を次直の一等航海士に交替することとしたが,それまでB指定海難関係人が無難に同当直を遂行していたので任せておいても大丈夫と思い,一等航海士に対し,眠気を催した際には立って見張りに当たるなど,居眠り運航の防止措置をとり,その旨を次々直の同指定海難関係人に申し送るよう指示せず,同当直を交替して降橋した。
22時00分播磨灘で一等航海士と交替したB指定海難関係人は,何ら申し送りのないまま,単独で操舵と見張りに当たり,大角鼻灯台から140度(真方位,以下同じ。)7.8海里の地点において,針路を296度に定め,機関を全速力前進にかけ,11.0ノットの対地速力で,所定の灯火を表示し,自動操舵により進行した。
ところで,B指定海難関係人は,正月前後の数日間を自宅で休養しており,その後の航海も普段と同様の作業に従事していたので,休息と睡眠を十分にとることが可能で,疲労も睡眠不足も感じるような状況ではなかった。
B指定海難関係人は,操舵室内を暖房していなかったので厚着をし,舵輪後方に置いた背もたれと肘掛け付きのいすに腰掛けて当直中,22時30分ごろ付近に航行の妨げとなる船舶がいなくなり,気の緩みから眠気を催したが,まさか居眠りすることはないものと思い,立って見張りに当たるなど,居眠り運航の防止措置をとることなく,同じ姿勢のまま続航した。
B指定海難関係人は,いつしか居眠りに陥り,22時49分少し過ぎ地蔵埼灯台から114度2.0海里の地点で備讃瀬戸東航路の東口に向かう針路に変更することができず,香川県小豆島南岸に向首したまま進行し,23時00分地蔵埼灯台から086度500メートルの地点において,進洋丸は,原針路原速力のまま,同南岸に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風力2の北西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期で,視界は良好であった。
A受審人は,乗揚の衝撃で目覚め,事後の措置に当たった。
乗揚の結果,船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じて浸水したが,僚船の援助を受けて離礁し,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,播磨灘を西行中,居眠り運航の防止措置が不十分で,香川県小豆島南岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは,船長が,次直の船橋当直者に対し,眠気を催した際には立って見張りに当たるなど,居眠り運航の防止措置をとり,その旨を次々直の船橋当直者に申し送るよう指示しなかったことと,同当直者が,気の緩みから眠気を催した際,立って見張りに当たるなど,居眠り運航の防止措置をとらなかったこととによるものである。
(受審人等の所為)
A受審人は,船橋当直を次直の船橋当直者に交替する場合,同当直者に対し,眠気を催した際には立って見張りに当たるなど,居眠り運航の防止措置をとり,その旨を次々直の船橋当直者に申し送るよう指示すべき注意義務があった。しかるに,同受審人は,それまでB指定海難関係人が無難に船橋当直を遂行していたので任せておいても大丈夫と思い,眠気を催した際には立って見張りに当たるなど,居眠り運航の防止措置をとり,その旨を次々直の船橋当直者に申し送るよう指示しなかった職務上の過失により,同指定海難関係人が居眠りに陥り,香川県小豆島に向首したまま進行して同島南岸への乗揚を招き,船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じて浸水させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が,単独で操舵と見張りに当たり,播磨灘を西行中,気の緩みから眠気を催した際,立って見張りに当たるなど,居眠り運航の防止措置をとらなかったことは,本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては,勧告しない。