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平成17年長審第26号
件名

漁船第18値賀漁丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年10月31日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(稲木秀邦)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第18値賀漁丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船体中央部船底に凹損と亀裂

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年10月25日02時05分
 長崎県相浦港南西方沖合のオトナ瀬

2 船舶の要目
船種船名 漁船第18値賀漁丸
総トン数 19トン
登録長 17.99メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190

3 事実の経過
 第18値賀漁丸(以下「値賀漁丸」という。)は,B組合員の漁獲物を長崎県小値賀漁港で積載し,水揚げのため同県相浦港まで運搬するFRP製漁船で,A受審人(平成12年4月一級小型船舶操縦士免許取得,平成16年4月一級小型船舶操縦士免許と特殊小型船舶操縦士免許に更新)ほか2人が乗り組み,相浦港で漁獲物の水揚げを終え,帰航する目的で,船首1.2メートル船尾2.5メートルの喫水をもって,平成16年10月25日01時50分同港を発し,小値賀漁港に向かった。
 ところで,A受審人は,平成13年4月から値賀漁丸に船長として乗り組んで漁獲物の運搬業務に従事していたので,相浦港港界から西方1海里付近に餅米瀬灯浮標及び丸曽根灯浮標が南北に並んで存在することや,餅米瀬灯浮標の西方約0.5海里のところにオトナ瀬と称する浅礁が存在することもよく承知しており,平素,相浦港から小値賀漁港に向かう際には,昼夜とも相浦港1号防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)を通過し,針路目標とする丸曽根灯浮標を船首少し右に見ながら南下して同灯浮標に並航したのち,針路を牛ケ首灯台沖合約500メートルに向くよう右に転じて,オトナ瀬を左舷側に離して航過していた。
 発航後,A受審人は,法定灯火を掲げ,レーダーを作動させて甲板員2人を操舵室後方で休ませ,自らは舵輪の後方で椅子に座って操舵操船に当たり,01時52分半防波堤灯台を左舷側に航過したのち,機関を全速力前進にかけて西行し,01時53分肥前大平瀬灯標から071度(真方位,以下同じ。)1.6海里の地点において,丸曽根灯浮標を右舷側に約150メートル離すよう,針路を231度に定め,機関を全速力前進のまま,11.0ノットの速力で,手動操舵によって進行した。
 02時01分少し前A受審人は,肥前大平瀬灯標から136度0.55海里の地点に達して丸曽根灯浮標に並航間近となったとき,レーダーで,転針予定針路線上に当たる右舷船首20度0.5ないし0.8海里のところに,集魚灯を点灯して操業中の漁船群を認め,これらを右舷側に離して航過しようと左舵をとって針路を225度に転じたところ,オトナ瀬に向首する態勢となったが,同針路でオトナ瀬を左舷側に十分離して航過できるものと思い,作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行うことなく,このことに気付かないで続航した。
 こうして,A受審人は,オトナ瀬に向首したまま進行中,02時05分値賀漁丸は,肥前大平瀬灯標から190度1,770メートルの地点に当たるオトナ瀬の浅礁に,原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力2の東風が吹き,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,船体中央部船底に凹損と亀裂を生じたが,自力で離礁し,のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,長崎県相浦港南西方沖合において,同港から小値賀漁港に向けて西行中,船位の確認が不十分で,オトナ瀬と称する浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,長崎県相浦港南西方沖合において,同港から小値賀漁港に向けて西行中,転針予定針路線上の漁船群を右舷側に離して航過するよう針路を転じた場合,前路にオトナ瀬の浅礁があることを知っていたのであるから,同浅礁に向首進行することのないよう,作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,同針路でオトナ瀬を左舷側に十分離して航過できるものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,オトナ瀬に向首進行して乗揚を招き,船体中央部船底に凹損と亀裂を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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