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平成17年長審第19号
件名

モーターボート第三みなと丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年10月13日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(山本哲也)

理事官
平良玄栄

損害
船底に擦過傷,推進器プロペラに曲損等

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年10月31日14時10分
 熊本県御所浦島中瀬戸

2 船舶の要目
船種船名 モーターボート第三みなと丸
総トン数 1.3トン
登録長 7.76メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 80キロワット

3 事実の経過
 第三みなと丸(以下「みなと丸」という。)は,甲板上船尾寄りに船室を設け,風防で囲われた同室屋根の後部に舵輪や主機操縦レバーを取り付けた和船型のFRP製モーターボートで,船長A(小型船舶操縦士免許を受有し,受審人に指定されていたが,死亡により,受審人指定が取り消された。)が1人で乗り組み,息子及び一家が経営する会社従業員の2人を乗せ,釣りの目的で,船首0.4メートル船尾0.8メートルの喫水をもって,平成16年10月31日07時20分係船地とする熊本県宇城市三角町波多の船着き場を発し,同時50分ごろ予定していた同県天草上島北側の釣り場に到着したが魚群探知機に魚影はなく,移動先に迷っていたところ,同従業員から同県御所浦島周辺海域が提案された。
 ところで,A船長は,平成15年3月に家業を息子に任せて引退し,20数年来の趣味である釣りを続けていたもので,それまで釣り場は係船地からせいぜい30分で行ける近場に限られていて,船内に海図の備えも御所浦島周辺海域の航行経験もなく,同海域に向かうには,係船地に戻って海図等で周辺海域の状況を十分に調査したうえ,遅くなるようなら日を改めて出かけるなどの措置をとる必要があった。
 しかしながら,A船長は,従業員から提案を受けたとき,少し不安は覚えたものの,御所浦島周辺にはいけすが多数敷設してあってチヌやタイなど大物が釣れるという話に興味を引かれ,低速で航行すれば大丈夫と思い,係船地に戻って海図に当たるなど,水路調査を十分に行わなかったので,御所浦島とその北西方の牧島を隔てる中瀬戸には,最狭部に架けられた中瀬戸橋の下方に水上岩が在って,同岩から牧島側に浅礁が拡延していることを知らないまま,提案に従って同島周辺海域に向かうこととした。
 A船長は,予定していた釣り場をそのまま通過して天草上島東岸沿いに南下し,09時20分ごろ御所浦島沖合に到着して釣り場を物色し,牧島東部北側の湾内に決め,同時30分御所浦港嵐口4号防波堤灯台から300度(真方位,以下同じ。)2,400メートルの地点において,同湾内に敷設された養殖いかだに接舷して釣りを開始したが,釣果が上がらなかったうえ北風が強くなってきたので,中瀬戸を通って牧島南側の島陰に移ることとした。
 こうして,A船長は,釣り場移動の目的で,14時00分養殖いかだから離れ,同時05分御所浦港本郷北防波堤灯台から026度1,750メートルの地点において,針路を中瀬戸の中央に向く197度に定め,水上岩から拡延する浅礁に向首していることに気付かないまま,機関を半速力に掛け,6.5ノットの対地速力で手動操舵によって進行中,同時10分わずか前浅礁に立てられた目印の鉄柱に気付き,不審に思って主機クラッチを切った直後,14時10分御所浦港本郷北防波堤灯台から037度800メートルの地点において,みなと丸は,同じ針路及び速力で浅礁の西端部に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力4の北風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果,みなと丸は左舷中央部船底に擦過傷,推進器プロペラに曲損等を生じたが,同日21時ごろ自然離礁し,御所浦島の造船所に曳航され,のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は,熊本県御所浦島周辺海域において,釣り場を移動中,水路調査が不十分で,同島北西側の中瀬戸ほぼ中央に存在する浅礁に向首進行したことによって発生したものである。





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