(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年1月14日06時57分
沖縄県那覇港
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第八青鷹 |
総トン数 |
298トン |
全長 |
53.00メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
736キロワット |
3 事実の経過
第八青鷹は,平成16年2月に進水した船尾船橋型の鋼製貨物船で,昭和58年3月に四級海技士(航海)の免許を取得したA受審人ほか3人が乗り組み,植物油400トンを積載し,船首2.6メートル船尾3.6メートルの喫水をもって,平成17年1月11日12時15分岡山県水島港を発し,沖縄県那覇港に向かった。
越えて同月14日03時40分A受審人は,那覇港新港第1防波堤南灯台(以下「南灯台」という。)から314度(真方位,以下同じ。)840メートルの地点に至り,同日07時とされた那覇ふ頭2号岸壁への着岸予定時刻にあわせて投錨仮泊した。
ところで,A受審人は,以前,2度那覇港に入港した経験があり,夜間,同港の唐口を経由して那覇ふ頭に着岸する際,那覇ふ頭付近に敷設された那覇港導灯(前灯)と同導灯(後灯)のなす127.4度の重視線にほぼ重なる針路をとって進行したのち,同ふ頭手前で右に進路をとり,同導灯(前灯)を左舷側に見ながら接近していた。
A受審人は,2時間ばかり仮眠をとったのち昇橋して単独で船橋配置につき,レーダーを始動したのち1.5海里レンジとして揚錨を始め,06時40分抜錨して同錨地を発進し,ほぼ北に向首していた船首を港内に向けようと機関を微速力にかけて右転中,折から,那覇港導灯がその業務を休止していたことから,06時42分船首がほぼ南灯台に向首したとき,右舷船首40度付近に視認した那覇国際空港北側の進入路を示す航空導灯(以下「航空導灯」という。)の灯火を,以前,那覇ふ頭に着岸する際に目標とした那覇港導灯の灯火と勘違いし,航空導灯の灯火の方向に向けて回頭を続けた。
06時45分A受審人は,南灯台から305度500メートルの地点で,針路を航空導灯の灯火を正船首少し左舷側に見る195度に定め,4.0ノットの対地速力で進行した。
定針したとき,A受審人は,儀間ノ瀬に著しく接近する態勢となっていることを認め得る状況であったが,航空導灯の灯火を那覇港導灯の灯火と勘違いしたまま,那覇港導灯の灯火を正船首少し左舷側に見ているので那覇ふ頭に向かっているものと思い,周囲の航路標識の灯火を確認するなり,レーダー画面を確認するなりして,船位の確認を十分に行わなかったので,このことに気付かず,同一針路,速力で続航した。
06時55分少し前,A受審人は,那覇防波堤南端を,右舷側に100メートルの距離を隔てて並航し,儀間ノ瀬に著しく接近する態勢のまま進行したが,依然,船位の確認を十分に行っていなかったので,このことに気付かずに続航中,06時57分南灯台から215度1,410メートルの地点において,原針路,原速力のまま,儀間ノ瀬付近の浅礁に乗り揚げた。
当時,天候は雨で,風力5の北北東風が吹き,潮候は上げ潮の中央期で,沖縄本島中南部沿岸に強風・波浪注意報が発表され,日出は07時18分であった。
乗揚の結果,船首船底に亀裂及び両舷ビルジキールに曲損をそれぞれ生じさせたが,のち,いずれも修理された。
(原因)
本件乗揚は,那覇港において,夜間,同港唐口を経て那覇ふ頭に向け進行する際,船位の確認が不十分で,儀間ノ瀬に著しく接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,那覇港において,夜間,同港唐口を経て那覇ふ頭に向け進行する場合,同口南側に存在する儀間ノ瀬に著しく接近することのないよう,周囲の航路標識の灯火を確認するなり,レーダー画面を確認するなりして,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,以前,那覇ふ頭に着岸した際,那覇港導灯(前灯)の灯火を左舷側に見て同ふ頭に接近した経験があったことから,錨地を発進して右転中,視認した航空導灯の灯火を,折から,その業務を休止していた那覇港導灯の灯火と勘違いし,那覇港導灯の灯火を正船首少し左舷側に見ているので那覇ふ頭に向かっているものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,儀間ノ瀬に著しく接近する態勢となっていることに気付かないまま進行し,同瀬付近の浅礁への乗揚を招き,船首船底に亀裂及び両舷ビルジキールに曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。