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平成17年那審第25号
件名

漁船倫陽丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年10月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(平野研一)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:倫陽丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
両舷ビルジキール欠損,舵頭材,プロペラ軸及びプロペラ翼曲損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年4月12日01時45分
 沖縄県沖縄島大嶺鼻西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船倫陽丸
総トン数 4.81トン
全長 13.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 132キロワット

3 事実の経過
 倫陽丸は,昭和54年3月に進水し,船体中央部船尾寄りに操舵室を設けたFRP製漁船で,昭和51年1月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が,1人で乗り組み,そでいか旗流し漁の目的で,船首0.3メートル船尾1.4メートルの喫水をもって,平成17年4月5日13時00分那覇港内の新港ふ頭小船だまりを発し,同港南東方沖合50海里の漁場で,そでいか400キログラムを獲たのち,4月11日20時00分同漁場を発し,帰港の途についた。
 倫陽丸の操舵室は,前部右舷側にレーダーが,同中央部に舵輪及び主機計器盤が,前部左舷側には,主機遠隔操作ハンドル,磁気コンパス及びGPSプロッターが,それぞれ設置され,操舵室後部左舷側には,座席が取り付けられていた。
 ところで,A受審人は,平素,那覇港から喜屋武埼に至る海域を往来しており,同海域の状況を十分に承知し,船位の確認にあたっては,目視によるほか,レーダー及びGPSプロッターを利用していたので,それぞれの取扱いに十分に慣れ,同プロッター上に赤色で表示される過去の航跡をたどって目的地に向かうこととしていた。
 翌12日01時00分A受審人は,喜屋武埼灯台から287度(真方位,以下同じ。)3.3海里の地点で,座席に腰掛けて操船に当たり,レーダーを6海里レンジとし,GPSプロッター上の過去の航跡を確認して同航跡に乗せ,大嶺鼻西方の干出さんご礁の西端に位置し,西方位標識である琉球大瀬灯標の西方沖合に向けて針路を000度に定め,機関を全速力前進にかけ,7.5ノットの対地速力で,自動操舵により進行した。
 定針したのち,A受審人は,折からの南東流の影響により,右方に1.5度圧流されて001.5度の実航針路で続航し,01時35分喜屋武埼灯台から330度6.2海里の地点に達したとき,予定針路よりも150メートル右偏し,前示の干出さんご礁に著しく接近する状況となっていたが,GPSプロッター上の過去の航跡に乗せて航行しているので,琉球大瀬灯標の西方沖合を安全に航過できるものと思い,琉球大瀬灯標の灯火が右舷方に見えるのを確認したり,GPSプロッター画面を拡大して見るなど,船位の確認を十分に行わなかったので,このことに気付かないで進行した。
 01時42分A受審人は,依然船位の確認を十分に行わなかったので,前示の干出さんご礁が,著しく接近していることに気付かないまま続航中,01時45分倫陽丸は,那覇国際空港飛行場灯台から255度1.5海里の地点の干出さんご礁に原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力1の南東風が吹き,潮侯は下げ潮の末期で,付近には約1ノットの南東へ流れる潮流があった。
 乗揚の結果,倫陽丸は,両舷ビルジキールに欠損を,舵頭材,プロペラ軸及びプロペラ翼に曲損をそれぞれ生じたが,のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,沖縄県沖縄島大嶺鼻南方沖合を北上中,船位の確認が不十分で,潮流により右方に圧流され,同鼻西方の干出さんご礁に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,沖縄県沖縄島大嶺鼻南方沖合を北上する場合,同鼻西方沖合の干出さんご礁に著しく接近することのないよう,琉球大瀬灯標の灯火が右舷方に見えるのを確認したり,GPSプロッター画面を拡大して見るなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,GPSプロッター上の過去の航跡に乗せて航行しているので,琉球大瀬灯標の西方沖合を安全に航過できるものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,折からの南東流の影響を受けて,右方に圧流され,大嶺鼻西方の干出さんご礁に著しく接近していることに気付かないまま進行して乗揚を招き,両舷ビルジキールに欠損を,舵頭材,プロペラ軸及びプロペラ翼に曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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