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平成17年函審第33号
件名

漁船第35菊水丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年10月25日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(堀川康基)

副理事官
福島正人

受審人
A 職名:第35菊水丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
右舷船底外板に破口,推進器翼及び舵柱に曲損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年7月21日01時57分
 北海道厚岸湾

2 船舶の要目
船種船名 漁船第35菊水丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.81メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 90

3 事実の経過
 第35菊水丸(以下「菊水丸」という。)は,船体中央やや後部に操舵室を設けた,さんま流し網漁業などに従事するFRP製漁船で,A受審人(昭和53年4月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか2人が乗り組み,操業の目的で,船首0.6メートル船尾1.6メートルの喫水をもって,平成16年7月19日09時10分北海道厚岸港を発し,同港南東方40海里ばかりの漁場に向かった。
 ところで,菊水丸は,さんま流し網漁の定められた漁期一杯を行わず,7月10日から同月30日まで操業することとし,09時ごろ出航し,漁場で一昼夜半操業して翌々日の02時ごろに帰航する操業を連続して行っていた。
 また,A受審人は,入港してから出港までの4時間ばかりと漁場で投網した後2時間ばかり休息をとることができたが,漁場往復の操船も単独で行っていたので十分な休息がとれず,疲労が蓄積された状況にあった。
 A受審人は,14時ごろ漁場に到着して操業を始め,投網後にわずかの仮眠をとりながら6回の操業を行い,それまでにさんま350キログラムばかりを漁獲したところで操業を切り上げ,厚岸港に向け帰途に就くこととし,翌20日22時00分落石岬灯台から180度(真方位,以下同じ。)13.8海里の地点を発進した。
 A受審人は,単独で操船に当たり,翌21日01時16分厚岸灯台から210度2.6海里の地点に達したとき,針路を厚岸湾に向かう001度に定め,9.0ノットの対地速力で自動操舵により続航した。
 定針したのち,A受審人は,操舵室右舷側後部入口の敷居に腰を下ろした姿勢でレーダーを監視しながら進行していたとき,蓄積された疲労から眠気を催すようになったが,港も近いのでそれまで我慢できるものと思い,立ち上がって手動操舵に切り替えるとともに,休息中の乗組員を昇橋させて2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置を十分にとることなく,同姿勢をとったまま続航した。
 こうして,菊水丸は,A受審人がいつしか居眠りに陥り,居眠り運航となって,転針予定地点を航過し,アイカップ埼東方の海岸に向首したまま進行中,01時57分厚岸灯台から344度4.1海里の浅所に,原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 A受審人は,衝撃により目覚めて乗り揚げたことを知り,事後の措置に当たった。
 当時,天候は霧で風力2の南南西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果,右舷船底外板に破口を,推進器翼及び舵柱に曲損をそれぞれ生じたが,のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,北海道落石岬南方沖合の漁場から厚岸港へ向けて帰航中,居眠り運航の防止措置が不十分で,厚岸湾アイカップ埼東方海岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,単独で船橋当直に就き,北海道落石岬南方沖合の漁場から厚岸港へ向けて帰航中,厚岸湾に向かって針路を定めたのち,連日の操業によって蓄積された疲労から眠気を催すようになった場合,居眠り運航とならないよう,立ち上がって手動操舵に切り替えるとともに,休息中の乗組員を昇橋させて2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかし,同人は,港も近いのでそれまで我慢できるものと思い,居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥ったまま進行してアイカップ埼東方海岸への乗揚を招き,菊水丸の右舷船底外板に破口を,推進器翼及び舵柱に曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。





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