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平成17年広審第117号
件名

漁船海栄丸漁船勝福丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年12月20日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(島友二郎)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:海栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:勝福丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
海栄丸・・・左舷船首部外板に亀裂
勝福丸・・・船首部外板に擦過傷,甲板員が左腕骨折

原因
勝福丸・・・見張り不十分,船員の常務(避航動作)不遵守

裁決主文

 本件衝突は,勝福丸が,見張り不十分で,漂泊中の海栄丸に向けて発進したことによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年7月12日00時15分
 岡山県下津井漁港
 (北緯34度26.15分 東経133度48.27分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船海栄丸 漁船勝福丸
総トン数 4.36トン 1.1トン
登録長 9.77メートル 7.61メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 15 25

3 事実の経過
 海栄丸は,主に刺し網漁業に従事するFRP製漁船で,A受審人(昭和49年11月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み,船首尾とも0.5メートルの等喫水をもって,平成16年7月11日22時00分岡山県下津井漁港の係留地を発し,22時10分ごろ同県松島西側の漁場に至り,昼間仕掛けた刺し網を揚げ,水揚げのため,翌12日00時ごろ同漁場を発進し,両色灯及び黄色回転灯を表示して同港の荷揚桟橋に向かった。
 A受審人は,00時12分下津井漁港東側入口の防波堤を通過したとき,夜間も陸上の照明灯などで明るい港内の前示荷揚桟橋東側に着桟して荷揚げ中の勝福丸を認め,同桟橋沖合で待機することとし,00時14分同桟橋の手前20メートルばかりの地点に至り,船首を317度(真方位,以下同じ。)に向けて機関を中立運転とし,漂泊を開始した。
 A受審人は,00時14分半勝福丸が離桟してゆっくりと後進し,00時15分わずか前左舷前方30メートルのところで後進を終えて右転前進を開始し,増速しながら自船に向かって接近するのを認めたが,どうすることもできず,00時15分下津井港一文字防波堤灯台から104度1,345メートル地点の,田之浦一文字防波堤東端に設けられた緑色灯から308度134メートルの地点において,海栄丸は,317度を向いて漂泊中,その左舷船首部に,勝福丸の船首部が前方から20度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風はなく,潮候は下げ潮の末期であった。
 また,勝福丸は,主に延なわ漁業に従事するFRP製漁船で,B受審人(昭和51年5月四級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み,船首0.1メートル船尾0.6メートルの喫水をもって,同月11日16時00分下津井漁港の係留地を発し,岡山県井島北方の漁場で操業を終えたのち帰港し,23時45分前示揚荷桟橋に着桟して漁獲物の荷揚げを開始した。
 B受審人は荷揚げを終え,翌12日00時14分半係留地に戻るため船尾のマストに白色全周灯1灯,両色灯及び甲板上に作業灯1灯をそれぞれ点灯し,同桟橋を発してゆっくりと時計回りに後進し,同桟橋の南端を替わって後進を終えたとき,右舷前方30メートルのところに,着桟待機のため漂泊中の海栄丸を視認できる状況であったが,左舷側の荷揚桟橋の様子を見ることに気をとられ,周囲の見張りを十分に行わなかったので同船の存在に気付かなかった。
 00時15分わずか前B受審人は,海栄丸に気付かないまま,機関を半速力前進にかけ,右転増速しながら同船に向かって発進し,船首が117度を向き,8.0ノットの対地速力となったとき,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,海栄丸は,左舷船首部外板に亀裂を生じたが,のち修理され,勝福丸は,船首部外板に擦過傷を生じ,甲板員が左腕骨折を負った。

(海難の原因)
 本件衝突は,夜間,岡山県下津井漁港において,勝福丸が,見張り不十分で,右舷船首方至近で漂泊中の海栄丸に向けて発進したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は,夜間,岡山県下津井漁港において,荷揚桟橋から係留地に向けて発進する場合,同桟橋沖合で漂泊中の海栄丸を見落とさないよう,周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,左舷方の荷揚桟橋の様子を見ることに気をとられ,周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,右舷船首方至近で漂泊中の海栄丸に気付かず,同船に向けて発進して衝突を招き,海栄丸の左舷船首部外板に亀裂を,勝福丸の船首部外板に擦過傷をそれぞれ生じさせ,また,勝福丸の甲板員に左腕骨折を負わせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人の所為は,本件発生の原因とならない。


参考図
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