(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年12月13日23時29分
備讃瀬戸南航路
(北緯34度20.0分 東経133度45.5分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船明神丸 |
総トン数 |
246トン |
全長 |
60.19メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
明神丸は,冬期に愛媛県中島港から大阪港へみかんの輸送を行うほかは大分県佐伯港から三重県鵜殿港に木材チップを輸送する貨物船で,船長B,A受審人ほか2人が乗り組み,みかん約213トンを積載し,船首1.08メートル船尾2.78メートルの喫水で,平成16年12月13日17時40分中島港を発し,大阪港に向かった。
B船長は,大阪港までの船橋当直を,19時から23時までの間を自身が,23時から翌03時までの間をA受審人が,03時から07時までの間を一等航海士がそれぞれ単独で入直する体制とした。
A受審人は,23時00分粟島北方の備讃瀬戸南航路において当直をB船長から引き継いで同航路をこれに沿って東行し,23時14分波節岩灯標から190度(真方位,以下同じ。)2.2海里の地点で,針路を062度に定め12.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
定針したときA受審人は,備讃瀬戸南航路第8号灯浮標(以下「8号灯浮標」という。)の灯火をほぼ正船首3海里に見るようになったが,もう少し接近したところで転針して同灯浮標を右舷側30メートルばかりに離す予定で進行した。
23時24分A受審人は,波節岩灯標から131度1.8海里の地点に達したとき,8号灯浮標が正船首1.0海里となり,その後同灯浮標に衝突のおそれのある態勢で接近したが,そのころ左舷方に自船の進路を横切ろうとする漁船の緑灯及び黄色回転灯を認めたので,その動向に気を奪われ,8号灯浮標に著しく接近しているかどうか判断できるよう,船位の確認を十分に行わなかったので,このことに気付かず続航するうち,明神丸は,23時29分波節岩灯標から108度2.4海里の地点でその左舷船首が8号灯浮標に衝突した。
当時,天候は曇で風力2の南東風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。
B船長は,自室にいたところ衝撃を感じて何事かと急ぎ昇橋して事後の措置にあたった。
衝突の結果,船首外板に擦過傷を生じ,8号灯浮標に曲損等の損傷を生じた。
(海難の原因)
本件灯浮標衝突は,夜間,備讃瀬戸南航路を東行中,船位の確認が不十分で,前路の灯浮標に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,備讃瀬戸南航路において,8号灯浮標を船首目標にして東行する場合,同灯浮標に著しく接近しているかどうか判断できるよう,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,左舷方の漁船の動向に気を奪われ,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,8号灯浮標に著しく接近していることに気付かず進行して同灯浮標との衝突を招き,自船の船首外板に擦過傷を生じさせたほか,同灯浮標に曲損等の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。