(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年4月14日00時20分
兵庫県姫路港
(北緯34度45.8分 東経134度39.2分)
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第五清栄丸 |
総トン数 |
12トン |
登録長 |
16.30メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
150 |
3 事実の経過
第五清栄丸(以下「清栄丸」という。)は,平成2年6月に進水した軽合金製漁船で,同15年8月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,友人1人を乗せ,姫路市内で遊興する目的で,船首0.1メートル船尾1.7メートルの喫水をもって,同17年4月13日23時50分兵庫県坊勢漁港を発し,同県姫路港飾磨西防波堤と同東防波堤間の出入口(以下「防波堤出入口」という。)から防波堤内に入るつもりで,同港奥の岸壁へ向かった。
翌14日00時14分A受審人は,姫路港の広畑航路第1号灯浮標付近から港域内に入り,同時16分飾磨東防波堤灯台から223度(真方位,以下同じ。)1.8海里の地点に達したとき,GPSプロッター画面上で前示防波堤出入口に向けて針路を044度に定め,機関を全速力前進の回転数毎分2,100にかけ,28.0ノットの速力で,レーダーを作動させ,手動操舵によって進行した。
ところで,当時,A受審人は,姫路港における昼間航行の経験は幾度もあったものの,夜間航行の経験はほとんどなく,周囲に陸上の明るい灯光が多数存在する状況下では,防波堤出入口に設置されている飾磨東防波堤灯台や飾磨西防波堤東灯台などの航行目標となる灯火を的確に見極めることが困難であったことから,レーダーを活用するなどして船位の確認を十分に行うことが求められる状況であった。
そして,00時18分半A受審人は,飾磨東防波堤灯台から221度0.6海里の地点に至ったとき,飾磨東防波堤の中央部付近が正船首方約0.7海里に位置することとなり,そのまま続航すると同部付近に衝突するおそれがある状況となったが,防波堤出入口から0.1海里のところまで接近するとGPSの警報が鳴るように設定していたことから,警報が鳴るまでは大丈夫と思い,作動させていたレーダーを活用して船位の確認を十分に行うことなく進行した。
こうして,00時19分少し過ぎA受審人は,防波堤出入口から0.1海里の地点に至ったとき,GPSの警報音が聞こえたことから目視にて前方を注視したものの,予定転針地点に至ったことに気付かず,港奥へ向けて転針することなく続航中,00時20分飾磨東防波堤灯台から062度140メートルの地点において,清栄丸は,原針路,原速力で,その左舷船首が飾磨東防波堤と18度の挟角で衝突した。
当時,天候は晴で風力1の北北西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期であった。
衝突の結果,左舷船首外板に破口及び擦過傷を生じるとともに,同乗者が海中に転落したが,通報を受けて駆けつけた水上警察の救助艇によって無事救助された。
(海難の原因)
本件防波堤衝突は,夜間,姫路港において,港外から港奥の岸壁へ向けて航行中,船位の確認が不十分で,防波堤に向首して進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,姫路港において,港外から港奥の岸壁へ向かって航行する場合,周囲に陸上の明るい灯光が多数存在して,航行目標となる灯火を的確に見極めることが困難な状況であったことから,防波堤出入口の転針予定地点で安全に転針できるよう,作動中のレーダーを使用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,転針予定地点に至ったことに気付かず,港奥へ向けて転針することなく進行して防波堤との衝突を招き,左舷船首外板に破口及び擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。