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平成17年函審第44号
件名

漁船第三十八海豊丸漁船第三十八福栄丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年11月30日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(西山烝一)

副理事官
福島正人

受審人
A 職名:第三十八海豊丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:第三十八福栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第三十八海豊丸・・・左舷側船首ブルワークに亀裂を伴う凹損
第三十八福栄丸・・・船首ハンドレールなどに曲損

原因
第三十八海豊丸・・・見張り不十分,船員の常務(前路に進出)不遵守

裁決主文

 本件衝突は,第三十八海豊丸が,見張り不十分で,無難に航過する態勢にあった第三十八福栄丸の前路に向け,左転進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年7月21日08時50分
 北海道枝幸港東南東方沖合
 (北緯44度54.5分 東経142度41.6分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十八海豊丸 漁船第三十八福栄丸
総トン数 14トン 14トン
全長 20.60メートル  
登録長   16.48メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 150 160

3 事実の経過
 第三十八海豊丸(以下「海豊丸」という。)は,船体中央部に操舵室を備えた,ほたて貝桁網漁業に従事するFRP製漁船で,A受審人(昭和49年11月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか4人が乗り組み,操業の目的で,船首1.0メートル船尾2.0メートルの喫水をもって,平成16年7月21日03時15分北海道枝幸港の係留地を発し,同港東南東方沖合4.8海里の漁場に向かった。
 ところで,枝幸港の北方沖合から南東方沖合にかけて,ほたて貝桁網漁業の共同漁業権漁場区域が設定され,北から目梨泊,枝幸,山臼及び音標と称する各ブロック別の区域があり,枝幸ブロック区域は72区画に分割されており,当時,海豊丸と第三十八福栄丸(以下「福栄丸」という。)は,同区域内に指定された同じ漁場区画で操業することになっていた。
 前示区域でのほたて貝桁網漁は,潮流などを考慮して指定された区画の南から北に向かって曳網し,区画の北側境界線付近で桁網を船内に取り入れて漁獲したあと,南側境界線に戻って操業を繰り返すというものであった。
 A受審人は,03時35分指定された漁場区画に着いて操業を開始し,08時49分ごろ13回目の操業を終えてほたて貝約7.5トンを漁獲したあと,08時49分半わずか過ぎ北見枝幸港島防波堤灯台(以下「枝幸港灯台」という。)から108.5度(真方位,以下同じ。)4.21海里の地点で停留していたとき,同区画の南側境界線に向けて発進することとした。
 A受審人は,操舵輪の右舷側に立って操舵操船に当たり,発進時,船首が225度を向いていたとき,左舷船首40度75メートルのところに,桁網を曳網しながら北上中の福栄丸を視認でき,少しの間停留していれば,船首方約45メートルを隔てて無難に航過することが分かる状況であったが,投網地点に早く向かうことに気を奪われ,周囲の見張りを十分に行わなかったので,この状況に気付かなかった。
 A受審人は,発進と同時に左舵一杯とし,機関を中立回転から回転数毎分1,500まで上げながら,平均6.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で福栄丸の前路に向かって左転進行し,衝突の危険がある態勢で接近したものの,依然見張り不十分で,このことに気付かず,08時50分わずか前左舷船首至近に同船を初めて視認し,衝突の危険を感じ,左舵一杯のまま機関を全速力後進にかけたが,効なく,海豊丸は,08時50分枝幸港灯台から109度4.2海里の地点において,船首が170度を向いて,5.5ノットの速力で,その左舷船首が福栄丸の船首に前方から20度の角度で衝突した。
 当時,天候は雨で風力4の北東風が吹き,潮候は下げ潮の中央期で,視程は約1.5海里であった。
 また,福栄丸は,船体中央部に操舵室を備えた,ほたて貝桁網漁業に従事するFRP製漁船で,B受審人(平成4年7月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか4人が乗り組み,操業の目的で,船首0.7メートル船尾1.7メートルの喫水をもって,同日03時15分枝幸港の係留地を発し,同港東南東方沖合4.8海里の枝幸ブロック区域の指定された漁場区画に向かった。
 B受審人は,03時45分前示漁場区画に着いて操業を開始し,12回目の操業を終えてほたて貝約8トンを漁獲したあと,操舵輪の右舷側に立って操舵操船に当たり,同区画の南側境界線に戻って桁網を投網したのち,330度の針路及び2.0ノットの速力で曳網を始め,08時48分枝幸港灯台から109.5度4.26海里の地点に至ったとき,右舷船首15度170メートルのところに,海豊丸が停留しているのを初めて認め,同船と無難に航過する態勢と判断して同じ針路及び速力で進行した。
 08時49分半わずか過ぎB受審人は,枝幸港灯台から109.1度4.21海里の地点に至り,海豊丸を右舷船首35度75メートルに見るようになったとき,同船が急に左転を開始し,自船の前路に向けて接近するのを認め,衝突の危険を感じ,海豊丸に対し,無線電話で危ないと警告したあと,機関を全速力後進にかけたが,福栄丸は,原針路のまま,前進行きあしが止まったとき,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,海豊丸は,左舷側船首ブルワークに亀裂を伴う凹損を,福栄丸は,船首ハンドレールなどに曲損をそれぞれ生じたが,のちいずれも修理された。

(海難の原因)
 本件衝突は,北海道枝幸港東南東方沖合において,海豊丸が,漁場を移動するため発進する際,見張り不十分で,無難に航過する態勢にあった福栄丸の前路に向け,左転進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,北海道枝幸港東南東方沖合において,漁場を移動するため発進する場合,曳網しながら北上中の福栄丸を見落とさないよう,周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし,同受審人は,投網地点に早く向かうことに気を奪われ,周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,船首方を無難に航過する態勢の福栄丸に気付かず,至近距離で同船に向け左転進行して衝突を招き,海豊丸の左舷側船首ブルワークに亀裂を伴う凹損を,福栄丸の船首ハンドレールなどに曲損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人の所為は,本件発生の原因とならない。


参考図
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