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平成17年横審第65号
件名

遊漁船第13五エム丸手漕ぎボート(船名なし)衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年10月21日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(小寺俊秋)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:第13五エム丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第13五エム丸・・・損傷ない
手漕ぎボート(船名なし)・・・トランサムに割損及び破口,乗組員が右手挫傷

原因
第13五エム丸・・・見張り不十分,船員の常務(避航動作)不遵守

裁決主文

 本件衝突は,第13五エム丸が,見張り不十分で,錨泊中の手漕ぎボート(船名なし)を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年12月12日10時53分
 神奈川県真名瀬漁港南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第13五エム丸 手漕ぎボート(船名なし)
総トン数 11トン  
全長 17.50メートル 3.5メートル
機関の種類   ディーゼル機関
出力 518キロワット  

3 事実の経過
 第13五エム丸(以下「五エム丸」という。)は,船体中央より少し船尾方に操舵室を備えたFRP製小型兼用船(旅客船)で,平成13年6月交付の一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人が1人で乗り組み,釣り客4人を乗せ,遊漁の目的で,船首0.70メートル船尾1.45メートルの喫水をもって,同16年12月12日10時50分神奈川県真名瀬漁港を発し,同港南西方沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は,発航後,小雨模様であったので,操舵室前面の両舷に設けられた旋回窓を作動し,同窓越しに周囲の見張りを行いながら操船に当たり,10時51分少し前葉山灯台から100度(真方位,以下同じ。)400メートルの地点で,針路を220度に定め,機関を回転数毎分1,000にかけ,10.0ノットの対地速力とし,手動操舵により進行した。
 ところで,真名瀬漁港の南側には,芝埼が西方に突き出し,同埼先端から約400メートル西方沖合まで岩礁(以下「芝埼岩礁」という。)が存在していた。
 10時51分半A受審人は,葉山灯台から130度350メートルの地点に達したとき,芝埼岩礁の約50メートル沖合となる,ほぼ正船首約480メートルのところに,釣りをしている2隻の手漕ぎボートを認め,同ボートと同岩礁の間を南下するつもりで続航した。
 A受審人は,10時53分少し前葉山灯台から182度580メートルの地点に達したとき,2隻の手漕ぎボートと芝埼岩礁との間が狭いことに危険を感じ,急遽(きゅうきょ),同ボートの沖合を航過することとしたが,前路の同ボートに気をとられ,転針方向の見張りを十分に行わなかったので,右舷船首30度50メートルに投錨していたもう1隻の手漕ぎボート(船名なし)(以下「B号」という。)に気付かないまま,針路を250度に転じた。
 転針したときA受審人は,B号に向首して衝突の危険のある態勢となったが,同船が船首ブルワークの陰となって見えず,同船を避けないまま進行中,10時53分葉山灯台から186度600メートルの地点において,五エム丸は,同じ針路,速力のまま,その船首がB号の正船尾に,平行に衝突した。
 当時,天候は小雨で風力3の北風が吹き,潮候はほぼ低潮時で,視界は良好であった。
 また,B号は,FRP製手漕ぎボートで,Cが釣具店から賃借し,同人が乗組員として1人で乗り組み,釣りの目的で,友人達が賃借した他の手漕ぎボート2隻とともに,同センターのモーターボートに曳航され,07時00分真名瀬漁港北方約500メートルの森戸海岸を発し,同海岸南西方沖合の釣り場に向かった。
 C乗組員は,名島の南側沖合まで曳航され,07時20分その付近で投錨して釣りを開始し,友人達は,芝埼岩礁の沖合まで曳航され,同岩礁の約50メートル沖合で投錨して釣りを開始した。
 10時35分C乗組員は,釣果が思わしくなかったので釣り場を発進して芝埼岩礁の沖合に向かい,10時50分前示衝突地点に至り,重さ約3キログラムで,鉄管及び棒鋼製手作りの錨を投入して間もなく,五エム丸が真名瀬漁港を発航し,やがて南西方に針路を定め,友人達の手漕ぎボートと芝埼岩礁との間を南下する態勢で接近してくるのを認めた。
 C乗組員は,五エム丸の動静を監視しながら,直径7ミリメートルの化繊製錨索を約20メートル繰り出し船首に係止していたところ,10時53分少し前同船が突然右転し自船に向首して進行してきたが,どうすることもできず,B号は,250度を向首したとき,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,B号は,トランサムに割損及び破口を生じたが,のち修理され,C乗組員が右手挫傷等を負った。

(原因)
 本件衝突は,神奈川県真名瀬漁港南西方沖合おいて,釣り場へ向かって南西進中の五エム丸が,前路の錨泊船の沖合を航過するため右転する際,転針方向の見張り不十分で,錨泊中のB号を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,神奈川県真名瀬漁港南西方沖合おいて,釣り場へ向かって南西進中,前路の錨泊船の沖合を航過するため右転する場合,右舷船首方に錨泊していたB号を見落とすことのないよう,転針方向の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,前路の錨泊船に気をとられ,転針方向の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,B号に気付かず,同船を避けないまま進行して衝突を招き,同船のトランサムに割損及び破口を生じさせ,同船乗組員に右手挫傷等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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