1 第二審請求に至る経過
本件の第二審請求は,平成17年3月7日受審人B(以下「請求人」という。)から原審である門司地方海難審判庁を経由してなされたものであるが,その経過は次のとおりである。
(1)平成16年3月23日門司地方海難審判庁において,「漁船福成丸プレジャーボートアンクルトムII衝突事件」が請求人出廷のうえ審理され,結審した。
(2)前同日,「本件衝突は,福成丸が,見張り不十分で,漂泊中のアンクルトムIIを避けなかったことによって発生したが,アンクルトムIIが,動静監視不十分で,注意喚起信号を行わず,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。受審人A及び受審人Bをいずれも戒告する。」旨の裁決が言い渡された。
(3)門司地方海難審判庁は,平成17年3月4日付け請求人作成の第二審請求書が送付され,同月7日これを受理した。
よって,この第二審請求が,海難審判法(以下「法」という。)第46条第3項の規定する裁決の言渡の日から7日以内になされたものでないことは明らかである。
2 請求人の請求理由に対する判断
請求人は,第二審請求の理由として,本件審理の過程でアンクルトムIIのホーンを吹鳴しても相手船の操船者に聞こえる状況にはなかった旨を陳述したが,それが採用されることなく結審したところ,平成17年3月2日海上保安部が同事件の補充捜査を行った結果,ホーンを吹鳴しても,数メートル離れた所を走行中の相手船の操船者に全く聞こえないことが判明し,このことが,法第46条第4項の規定する,「その責に帰することのできない事由」に該当すると主張するので,このことについて検討する。
法第46条は,第二審の請求権者,請求期間などについて規定するところであるが,その請求理由については,同条及び法全体の条項に何らの規定がない。このことは,その理由について法的制限はなく,受審人等第二審の請求権者の意思に委ねられているものと解される。
そして,同条第4項の規定する,「その責に帰することのできない事由」とは,第二審請求権の行使が裁決の言渡の日から7日以内という制限に対して,正当な事由があるときは,当該事由がやむまでは請求権の時効を停止するというものであるが,これは,第二審の請求権者が当該裁決をなした地方海難審判庁に請求の意思を表示しようとしたとき,天災地変などの理由でその意思を伝達する手段,方法がないときであると限定的に解するのが相当である。
ところで,請求人は,第二審請求は裁決の言渡の日から7日以内にこれをしなければならないことを知っており,第二審を請求する意思を門司地方海難審判庁に伝達する方法があったにもかかわらず,その有効な期間である平成16年3月30日まで何らの連絡を行わなかったものであり,そして,こうした手続規定に対して,アンクルトムIIのホーンの可聴距離がどの程度であったかという実体を事由にあげるものであって,これは,法第46条第4項の規定する事由に該当するものと解することはできない。
3 結論
請求人がなした本件第二審の請求は,その手続が規定に違反したものであるから,法第48条を適用してこれを棄却する。
よって主文のとおり裁決する。
|