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平成17年横審第50号
件名

水上オートバイ ブラックパール水上オートバイ ダイヤモンドサーペイント号乗組員負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成17年9月9日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(西田克史)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:ブラックパール船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
ブラックパール・・・ない
ダイヤモンドサーペイント号・・・船長が1週間の安静加療を要する頭挫創等の負傷

原因
ブラックパール・・・船間距離の確保不十分

裁決主文

 本件乗組員負傷は,ブラックパールが,船首方至近を先航するダイヤモンドサーペイント号との船間距離の確保が不十分で,横転して落水した同船の乗組員と接触したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年6月12日15時50分
 愛知県幡豆郡吉良町宮崎海水浴場東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 水上オートバイ ブラックパール
総トン数 0.1トン
機関の種類 電気点火機関
出力 106キロワット

船種船名 水上オートバイ ダイヤモンドサーペイント号
登録長 2.45メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 80キロワット

3 事実の経過
 ブラックパール(以下「ブ号」という。)は,B社が製造した最大搭載人員3人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで,A受審人(平成16年4月特殊小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み,後部座席に友人1人を乗せ,遊走の目的で,喫水不詳のまま,平成16年6月12日15時00分ダイヤモンドサーペイント号(以下「ダ号」という。)とともに愛知県幡豆郡吉良町の宮崎海水浴場を発し,東方沖合に向かった。
 また,ダ号は,B社が製造した最大搭載人員2人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで,Cが船長として1人で乗り組み,後部座席に友人1人を乗せ,遊走の目的で,喫水不詳のまま,同日15時00分ブ号とともに宮崎海水浴場を発し,東方沖合に向かった。
 ところで,A受審人は,同日11時過ぎからC船長等3人と一緒に宮崎海水浴場周辺でブ号及びダ号の両船を使い遊走に興じていたもので,そのうち同海水浴場から東方4キロメートル沖合にある前島まで行こうという話がまとまり,自身を含め全員が救命胴衣を着用のうえ,両船に2人ずつ分乗して発進したものであった。
 A受審人は,前島に向かう途中,機関を止めてたばこを吸ったり,休憩をとって進路方向を確かめたり,その場で旋回して楽しんだりしながらダ号とともに東行を続け,同郡幡豆町寺部の南方沖合に至ったところ,波が高くなってきたので引き返すこととして反転し,15時45分30秒東幡豆港正面防波堤西灯台から230度(真方位,以下同じ。)1,000メートルの地点で,針路を270度に定め,時速30キロメートルの対地速力で進行した。
 15時49分50秒A受審人は,悪波灯標から110度480メートルの地点に達し,宮崎海水浴場まで約1,000メートルに近づいたとき,それまで自船の左舷正横近距離に並走していたダ号が急いで帰るつもりからか,少し速力を上げて自船の船首方至近を先航するようになったが,このままでも次第に離れていくものと思い,並走中から自船より小型で凌波性(りょうはせい)に劣るダ号が折からの風浪を左舷船首方から受けて船首を左右に振りつつ,波頭が来襲するたびに海面をジャンプする不安定な状況を認めていたのであるから,同船がバランスを崩して横転するようなことがあっても十分に対処できるよう,直ちに減速するなどして船間距離を十分に確保することなく,同じ針路,速力で続航した。
 A受審人は,波浪の状態を見ながら自船の保針に留意して進行中,15時50分わずか前5メートル前方に横転したダ号と落水したC船長等2人を認め,慌ててハンドルを右に切ったが及ばず,15時50分悪波灯標から110度400メートルの地点において,ブ号は,ほぼ原針路,原速力のまま,その左舷船首部が同船長に接触した。
 当時,天候は晴で風力3の南西風が吹き,潮候は下げ潮の初期であった。
 その結果,ブ号に損傷はなかったが,C船長が1週間の安静加療を要する頭部挫創等を負った。

(原因)
 本件乗組員負傷は,愛知県幡豆郡吉良町の宮崎海水浴場東方沖合において,ブ号が,船首方至近を先航するダ号との船間距離の確保が不十分で,横転して落水した同船の乗組員と接触したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人が,愛知県幡豆郡吉良町の宮崎海水浴場東方沖合において,並走中のダ号が少し速力を上げて自船の船首方至近を先航するようになった場合,並走中から自船より小型で凌波性に劣るダ号が折からの風浪を左舷船首方から受けて船首を左右に振りつつ,波頭が来襲するたびに海面をジャンプする不安定な状況を認めていたのであるから,同船がバランスを崩して横転するようなことがあっても十分に対処できるよう,直ちに減速するなどしてダ号との船間距離を十分に確保すべき注意義務があった。しかるに,同人は,このままでも次第に離れていくものと思い,同船との船間距離を十分に確保しなかった職務上の過失により,横転して落水したダ号の乗組員との接触を招き,同人に頭部挫創等を負わせる至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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