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平成17年神審第61号
件名

漁船第八孝漁丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年9月15日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(橋本 學)

理事官
平野浩三

受審人
A 職名:第八孝漁丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底に破口,のち廃船処分

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は,針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年12月26日02時10分
 富山湾
 (北緯36度59.0分東経137度37.4分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八孝漁丸
総トン数 19.62トン
全長 21.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 95キロワット

3 事実の経過
 第八孝漁丸(以下「孝漁丸」という。)は,昭和56年8月に進水したFRP製漁船で,平成16年1月に交付された一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人ほか4人が乗り組み,かごなわ漁の目的で,船首0.85メートル船尾1.85メートルの喫水をもって,同年12月26日02時00分富山県宮崎漁港を発し,同港北東方沖合8海里付近の漁場へ向かった。
 02時05分A受審人は,越中宮崎港西防波堤灯台から270度(真方位,以下同じ。)20メートルの地点に至ったとき,針路を022度に定め,機関を半速力前進にかけ,8.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,法定灯火を表示して,手動操舵によって進行した。
 ところで,平素,A受審人は,老眼であることに起因して,夜間の暗い船橋内ではマグネットコンパスの示度を読み難い状態であったので,同じ漁場へ向かう僚船の後に従って航行していたのであるが,当日は,折悪しく先航する僚船がいなかったことから,自ら針路を選定して前示漁場へ向かったのであった。
 また,宮崎漁港沖合には,港口の越中宮崎港西防波堤灯台から北北東方へ約1,300メートルに渡って辺ノ島,中ノ島及び沖ノ島が点在しているうえ,北西方300ないし1,600メートル付近にかけては定置網が敷設されていることから,同港から出漁する漁船は,それら島嶼近くの浅礁に乗り揚げたり,定置網敷設海域内に乗り入れたりしないよう,双方から十分に離れた安全な針路を選定して漁場へ向かっていたのであるが,夜間においては,宮崎鼻灯台に併設されている宮崎鼻沖ノ島照射灯が,同灯台から北北東方約1,300メートル沖合の沖ノ島に設置されている,平均水面上の高さ2.4メートルの標柱を照射していることから,目視にて同標柱を確認して,沖ノ島近くの危険海域から十分に離れた安全な針路を選定することも可能な状況であった。
 針路を定めたとき,A受審人は,マグネットコンパスの示度を確認するなり,目視にて前示標柱を確認するなりして,沖ノ島付近の危険海域から十分に離れて航行することが求められていたが,左舷側の定置網敷設海域が気に掛かったことや,手元に老眼鏡がなかったことなどから,おおよその見当で,平素より沖ノ島側に約10度近寄った針路としたまま,同海域から十分に離れた安全な針路とすることなく続航した。
 こうして,A受審人は,その後も,沖ノ島近くの危険海域から十分に離れた安全な針路とすることなく進行中,02時10分わずか前沖ノ島が右舷側に並行したとき,いつものように前示漁場へ向けて右転したところ,02時10分宮崎鼻灯台から011度1,300メートルの地点において,船首が北東方を向いたとき,沖ノ島北側の浅瀬に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力2の南南西風が吹き,潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果,船底に破口を生じ,のち廃船処分された。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,富山県宮崎漁港沖合において,漁場へ向けて航行中,針路の選定が不適切で,沖ノ島北側の浅瀬に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,富山県宮崎漁港から北東方沖合の漁場へ向かう場合,同港沖合には防波堤出口付近から北北東方へ連なる辺ノ島,中ノ島及び沖ノ島の3島が存在することから,それら島嶼近くの浅瀬に乗り揚げないよう,十分に離れた安全な針路を選定すべき注意義務があった。しかしながら,同人は,左舷側の定置網敷設海域が気に掛かり,沖ノ島付近の危険海域から十分に離れた安全な針路を選定しなかった職務上の過失により,同島北側の浅瀬に向首進行して乗揚を招き,船底に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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