日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2005年度(平成17年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成17年横審第33号
件名

モーターボートメリージェーン乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年7月22日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(田邉行夫)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:メリージェーン船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底及び右舷船側に破口

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年7月24日21時45分
 伊勢湾北部揖斐川河口付近
 (北緯35度02.4分 東経136度42.7分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートメリージェーン
総トン数 14トン
登録長 11.92メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 603キロワット

3 事実の経過
 メリージェーンは,最大とう載人員15人のFRP製プレジャー用モーターボートで,平成14年2月交付の一級小型船舶操縦士の免許を受有するA受審人が1人で乗り組み,友人など11人を乗せ,花火見物の目的で,船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって,平成16年7月24日16時00分三重県四日市市の係留地を発し,17時15分同県桑名港内で錨泊した。
 A受審人は,21時15分ごろ帰途につき,操舵室内での操船は見張りの死角となる部分が多いこともあって,GPSやレーダーの表示装置のないフライングブリッチに上がって操船をしていた。
 A受審人は,いったん揖斐川河口の導流堤に寄せ,同堤まで10メートルぐらいまで接近したとき左転し,導流堤に沿って南下するつもりで,21時42分わずか前桑名港灯台から062度(真方位,以下同じ。)740メートルの地点で,針路を同堤に向かう211度に定め,10.0ノットの対地速力で,手動操舵によって進行した。
 ところで,A受審人は,この付近海域を何度も航行した経験があり,付近の水路の状況に関してはよく知っており,この導流堤が高潮時前後には水没すること,当時,同堤が水没していて視認できない状況にあることも知っていた。
 定針後,A受審人は,フライングブリッチに見張り要員を上げ,自らは,操舵室に降り,導流堤が表示されるようになっていたGPSやレーダーを利用するなどして船位の確認を十分に行わなかったので,同堤に著しく接近していることに気付かないまま続航し,21時45分わずか前導流堤の手前10メートルばかりに達したものと思い左舵をとった直後の,21時45分桑名港灯台から165度500メートルの地点において,メリージェーンは,原速力のまま,導流堤に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の南東風が吹き,潮候は上げ潮の末期で視界は良好であった。
 乗揚の結果,船底及び右舷船側に破口を生じた。

(原因)
 本件乗揚は,伊勢湾北部揖斐川河口付近を航行中,船位の確認が不十分で,水面下に没していた導流堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,伊勢湾北部揖斐川河口付近において,GPSやレーダーの表示装置のないフライングブリッチで操船中,水没している揖斐川河口の導流堤に寄せ,同堤に接近したとき転針して導流堤に沿って航行しようとする場合,操舵室に降り,同堤が表示されるようになっていたGPSやレーダーを利用するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,導流堤に著しく接近していることに気付かず,同堤に向首したまま航行して導流堤への乗揚を招き,船底及び右舷船側に破口を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION