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平成17年広審第25号
件名

漁船第十八 三吉丸外1隻漁船浜丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年9月30日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(川本 豊)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:第十八 三吉丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:浜丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第十八 三吉丸外1隻・・・ない
浜丸 ・・・船尾部に亀裂を伴う凹損

原因
第十八 三吉丸外1隻・・・見張り不十分,追越し船の航法(避航動作)不遵守(主因)
浜丸 ・・・見張り不十分,警告信号不履行(一因)

裁決主文

 本件衝突は,浜丸を追い越す第十八 三吉丸外1隻が,見張り不十分で,浜丸を確実に追い越し,かつ,十分に遠ざかるまでその進路を避けなかったことによって発生したが,浜丸が,見張り不十分で,警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年10月16日09時30分
 香川県三本松港北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八 三吉丸 漁船第十五三吉丸
総トン数 4.9トン 4.9トン
全長 13.10メートル  
登録長   10.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 15 15
船種船名 漁船浜丸  
総トン数 4.85トン  
登録長 11.30メートル  
機関の種類 ディーゼル機関  
漁船法馬力数 15  

3 事実の経過
 第十八 三吉丸(以下「18号」という。)は,平水区域を航行区域とし,船体前部に操舵室を,同室後方にローラーをそれぞれ有するFRP製漁船で,A受審人(昭和51年4月二級小型船舶操縦士免許取得)及び甲板員1人が乗り組み,いわし二そう引き網漁の目的で,船首0.2メートル船尾1.4メートルの喫水をもって,船長及び甲板員1人が乗り組んだ同型船の第十五三吉丸(以下「15号」という。)とともに,平成15年10月16日05時00分香川県三本松港を発し,同港北方沖合の漁場に向かった。
 ところで,18号が行ういわし二そう引き網漁は,18号及び15号両船の船尾から引き縄をそれぞれ1本ずつ延出し,両船で1枚の網を1時間ないし1時間30分引いたのち,15号の後部甲板に袋網を引き揚げて漁獲物を獲るもので,係留地と漁場との往復や漁場を移動するときには,18号右舷の船首部及び後部並びに15号左舷の船首部及び後部に設置した連結用金物にそれぞれ合成繊維製索をとり,18号の右舷側と15号の左舷側とを接舷して連結した状態(以下,18号及び15号が接舷して連結した状態を「三吉丸列」という。)で航行していた。
 A受審人は,05時20分目的の漁場に至り,15号とともに操業を始め,第1回目の操業を終えて三吉丸列を形成し,漂泊して漁獲物の選別作業や漁網の修理作業などを行っていたところ,探索船から無線連絡を受けて漁場を移動することとし,15号の後部甲板に甲板員を乗り移らせて同船の乗組員2人とともに漁網の修理作業などを続行させたまま,09時27分少し前三本松港一文字防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から032度(真方位,以下同じ。)2.6海里の地点を発進するとともに,針路を三本松港北方沖合約1海里の香川県一ツ島に向く190度に定め,18号及び15号の機関を全速力前進にかけて9.0ノットの対地速力で,手動操舵により進行した。
 A受審人は,発進したとき前路を一瞥して他船はいないものと思い,その後見張りを十分に行うことなく,操舵室中央に備えた舵輪後方に立った姿勢で,時折右舷後方の15号後部甲板を振り返り,作業の様子を見ながら続航した。
 09時28分A受審人は,防波堤灯台から033度2.43海里の地点に達したとき,左舷船首10度420メートルのところに南下する浜丸を視認でき,その後同船を追い越し衝突のおそれがある態勢で接近する状況であったが,見張りを十分に行わなかったので浜丸を見落として,このことに気付かず,浜丸を確実に追い越し,かつ,十分に遠ざかるまでその進路を避けることなく進行し,09時30分防波堤灯台から036度2.16海里の地点において,三吉丸列は,原針路,原速力のまま,18号の船首が,浜丸の船尾に後方から26度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風力2の西風が吹き,潮候は上げ潮の初期にあたり,視界は良好であった。
 また,浜丸は,船体中央の操舵室と同室後方に設置したローラーの左舷側にそれぞれ舵輪を有して底引き網漁業に従事するFRP製漁船で,B受審人(昭和51年4月一級小型船舶操縦士免許取得)が単独で乗り組み,操業の目的で,船首0.6メートル船尾0.9メートルの喫水をもって,同日06時00分香川県三本松港を発し,同港北方沖合の漁場に向かった。
 B受審人は,07時ごろ目的の漁場に至り,所定の形象物を表示しないまま操業を始め,08時59分防波堤灯台から036度3.5海里の地点で,針路を同灯台に向く216度に定め,機関を全速力前進にかけて2.5ノットの対地速力で,ローラーの左舷後方に設置した舵輪後方に立って手動操舵にあたり,曳網しながら進行した。
 09時28分B受審人は,防波堤灯台から036度2.24海里の地点に達したとき,右舷船尾36度420メートルのところに三吉丸列を視認でき,その後三吉丸列が自船を追い越し衝突のおそれがある態勢で接近する状況であったが,追い越す他船が自船の進路を避けるものと思い,後方の見張りを十分に行わなかったので,このことに気付かなかった。
 B受審人は,警告信号を行うことなく続航し,09時30分少し前網の状況を見ようと後方を振り返ったところ,至近に三吉丸列を初めて認め,衝突の危険を感じ,船首部に向かって逃げる途中,浜丸は,原針路,原速力のまま,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,三吉丸列は,損傷がなく,浜丸は,船尾部に亀裂を伴う凹損を生じ,のち廃船処理された。

(原因)
 本件衝突は,香川県三本松港北方沖合において,浜丸を追い越す三吉丸列が,見張り不十分で,浜丸を確実に追い越し,かつ,十分に遠ざかるまでその進路を避けなかったことによって発生したが,浜丸が,見張り不十分で,警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,香川県三本松港北方沖合において,三吉丸列を形成し,単独の船橋当直にあたって漁場を移動する場合,前路の他船を見落とすことがないよう,見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,発進したとき前路を一瞥して他船はいないものと思い,見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,浜丸を見落とし,同船を追い越し衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず,同船を確実に追い越し,かつ,十分に遠ざかるまでその進路を避けることなく進行して同船との衝突を招き,浜丸の船尾部に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3条を適用して同人を戒告する。
 B受審人は,香川県三本松港北方沖合において,操業しながら南下する場合,低速力で航行していたのであるから,後方から接近する他船を見落とすことがないよう,後方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,追い越す他船が自船の進路を避けるものと思い,後方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,自船を追い越し衝突のおそれがある態勢で接近する三吉丸列に気付かず,警告信号を行うことなく進行して三吉丸列との衝突を招き,浜丸に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3条を適用して同人を戒告する。


参考図
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