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平成17年広審第45号
件名

漁船公丸手漕ぎボート(船名なし)衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年7月6日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:公丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:手漕ぎボート(船名なし)乗組員

損害
公丸・・・船首部に塗装剥離
手漕ぎボート・・・左舷側中央部に擦損,乗組員が右腕などを打撲

原因
公丸・・・見張り不十分,船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
手漕ぎボート・・・見張り不十分,船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は,公丸が,見張り不十分で,前路で錨泊中の手漕ぎボート(船名なし)を避けなかったことによって発生したが,手漕ぎボート(船名なし)が,見張り不十分で,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月27日09時40分
 島根県七類港

2 船舶の要目
船種船名 漁船公丸 手漕ぎボート(船名なし)
総トン数 0.3トン  
全長   2.8メートル
登録長 4.18メートル  
機関の種類 電気点火機関  
漁船法馬力数 30  

3 事実の経過
 公丸は,一本釣り漁に従事するFRP製漁船で,A受審人(昭和51年9月一級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み,操業の目的で,船首0.15メートル船尾0.50メートルの喫水をもって,平成15年7月27日09時30分島根県七類港の船だまりを発し,同港内の法田平島北東方の漁場に向かった。
 A受審人は,09時35分七類港沖防波堤灯台(以下「沖防波堤灯台」という。)から251度(真方位,以下同じ。)980メートルの地点において,針路を沖防波堤の南側にある幅約20メートルの切り通しに向かう085度に定め,機関を半速力前進にかけ4.7ノットの対地速力とし,舵柄による手動操舵で進行した。
 09時37分A受審人は,沖防波堤灯台から246度700メートルの地点に達したとき,正船首方430メートルのところに,錨泊中の船舶が掲げる形象物を表示していないものの,移動しないことから錨泊中であることが容易に分かる手漕ぎボート(船名なし)(以下「手漕ぎボート」という。)を視認でき,その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近したが,前方に航行の妨げとなる他船はいないものと思い,船首方の見張りを十分に行わなかったので,このことに気付かず,手漕ぎボートを避けることなく続航した。
 A受審人は,09時40分わずか前船首方からの叫び声を聞いたので急ぎ機関の回転数を減じたが効なく,09時40分沖防波堤灯台から220度330メートルの地点において,公丸は,原針路原速力のまま,その船首部が,手漕ぎボートの左舷側中央部に,後方から59度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は上げ潮の中央期で,視界は良好であった。
 また,手漕ぎボートは,オール2本を備えたゴム製ボートで,B指定海難関係人が1人で乗り組み,同乗者1人を乗せ,きす釣りの目的で,同日09時00分七類港の南側岸壁を発し,沖防波堤西方の釣り場に向かった。
 B指定海難関係人は,前示釣り場に至って20分ばかり釣りをしたのち,09時30分衝突地点に移動して水深7メートルの海中に重さ約3キログラムの錨を投じ,長さ15メートルの化学繊維ロープを延出してその先端を左舷側中央部に係止し,錨泊中の船舶が掲げる形象物を表示せずに錨泊を始め,船尾方を向いて物入れの蓋に腰掛けて釣りを開始した。
 B指定海難関係人は,09時37分船首が026度を向いていたとき,左舷船尾59度430メートルのところに公丸を視認でき,その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近したが,釣りに熱中して周囲の見張りを十分に行わなかったので,このことに気付かないまま釣りを続けた。
 B指定海難関係人は,公丸が避航の気配のないまま間近に接近したが,錨を揚げて前進するなど,衝突を避けるための措置をとることなく錨泊するうち,09時40分わずか前,同乗者の発する声で左舷方至近距離に接近する公丸を認めたが,何をする間もなく,手漕ぎボートは前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,公丸は,船首部に塗装剥離を,手漕ぎボートは,左舷側中央部に擦損をそれぞれ生じ,B指定海難関係人が右腕などを打撲した。

(原因)
 本件衝突は,島根県七類港において,漁場に向け東行中の公丸が,見張り不十分で,前路で錨泊中の手漕ぎボートを避けなかったことによって発生したが,手漕ぎボートが,見張り不十分で,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,島根県七類港において,漁場に向け東行する場合,手漕ぎボートを見落とさないよう,船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,前方に航行の妨げとなる他船はいないものと思い,船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,前路で錨泊中の手漕ぎボートに気付かないまま進行して同船との衝突を招き,公丸の船首部に塗装剥離を,手漕ぎボートの左舷側中央部に擦損をそれぞれ生じさせたほか,B指定海難関係人の右腕などに打撲傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人が,七類港内で錨泊して釣りをする際,釣りに熱中して周囲の見張りを十分に行わなかったことは,本件発生の原因となる。
 B指定海難関係人に対しては,勧告しない。


参考図
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