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平成17年那審第6号
件名

漁船第十八郡正丸浸水事件(簡易)

事件区分
浸水事件
言渡年月日
平成17年4月25日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(杉崎忠志)

理事官
上原 直

受審人
A 職名:第十八郡正丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
主機直結の冷却海水ポンプ吐出管のゴム継手,主機セルモータ,ビルジポンプ,主機始動用及び補機始動・船内電源用の各蓄電池及び各充電機など

原因
主機の冷却海水管系の点検不十分

裁決主文

 本件浸水は,主機の冷却海水管系の点検が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年11月13日14時10分
 沖縄県渡嘉敷島阿波連埼南西沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八郡正丸
総トン数 14.18トン
登録長 11.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 301キロワット

3 事実の経過
 第十八郡正丸(以下「郡正丸」という。)は,昭和56年2月に進水した,一本釣り漁業及びまぐろはえ縄漁業などに従事するFRP製漁船で,甲板下には,船首方から順に,船首格納庫,1番ないし4番魚倉,次いで船体中央部から船尾方にかけて機関室,船員室及び舵機室などを配置し,機関室上部に操舵室及び機関室出入口ハッチを備えた同室囲壁を配置していた。
 機関室は,その中央に,主機としてB社製の6KH-ST型と称する定格回転数毎分2,000の過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関を装備し,主機の前部に主機始動用及び補機始動・船内電源用の各充電用発電機(以下「充電機」という。),主機の右舷側前方に補機で駆動される漁労用交流発電機,同発電機の前方に主機始動用蓄電池2個,主機の左舷側に補機始動・船内電源用蓄電池4個をそれぞれ備えていたほか,同室後部隔壁のほぼ中央部に蓄電池を電源とする電動機駆動のビルジポンプを備えていた。また,同室には,ビルジ高位警報装置が備えられていなかった。
 一方,操舵室は,主機の回転計,冷却清水温度計及び潤滑油圧力計並びに冷却清水温度上昇及び潤滑油圧力低下などの警報装置が組み込まれた遠隔操縦装置を備え,同室から主機の回転数制御及び逆転減速機の嵌脱操作ができるようになっていた。
 ところで,主機の冷却海水管系は,船底に設けられた海水吸入弁から主機直結の冷却海水ポンプにより吸引,加圧された海水が,清水冷却器,空気冷却器,潤滑油冷却器及び逆転減速機用潤滑油冷却器を順に冷却したのち,右舷側外板の水面上に設けられた船外吐出口から船外に排出されるようになっており,同ポンプ入口管に外径80ミリメートル(以下「ミリ」という。)内径63.5ミリのゴム製管継手(以下「ゴム継手」という。),及び清水冷却器に至る同ポンプ吐出管に外径61.8ミリ内径50.8ミリ長さ70ミリの同継手が主機右舷側架構の点検しやすい箇所にそれぞれ取り付けられていた。
 A受審人は,昭和50年5月に一級小型船舶操縦士(平成16年4月一級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士免許に更新)の免許を取得し,総トン数約3トンの漁船を所有してそでいか旗流し漁業などに従事していたところ,それまで乗り組んでいた船長が下船したため,沖縄県那覇市泊漁港で2箇月ほど係船されていた郡正丸の船舶所有者から乗船の依頼があったので,平成16年10月上旬同漁港に赴いて船長として郡正丸に乗り組んだ。
 そして,A受審人は,郡正丸が行っていた操業をまぐろはえ縄漁業からそでいか旗流し漁業に切り替えたうえで,同漁業を同年11月中旬ごろから開始することとし,貝殻などが付着した船体を上架し,同漁業で使用する漁具の積込みに取り掛かったほか,主機オイルパン内の潤滑油の取替え,潤滑油及び燃料油の各こし器の整備などを行うなどして操業切替えの準備を行ったが,主機について,船舶所有者からピストン抜きを含む全般的な整備が長期間行われていないことを聞いていたのに,出渠したのち,主機の冷却海水管系の海水吸入弁などを開放のままで係船していても,機関室ビルジに変化がなかったので同管系に問題はあるまいと思い,同準備中に同管系を点検しなかったので,主機直結の冷却海水ポンプ吐出管のゴム継手が経年劣化により弾力性を失い,同継手の表面に亀裂が生じ,これが次第に進展するおそれがあることに気付かなかった。
 こうして,郡正丸は,A受審人ほか甲板員2人が乗り組み,主機の試運転を行う目的で,船首0.6メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,同年11月13日12時00分泊漁港を発し,主機を全速力前進にかけ,同漁港西方沖の慶良間列島に向けて航行中,かねてより主機直結の冷却海水ポンプ吐出管のゴム継手に生じていた亀裂が同ポンプの吐出圧力などの影響を受けて進展し,同亀裂部から海水が吹き出すようになったものの,機関室巡視が行われていなかったので,誰もこのことに気付かないまま運転が続けられ,
 14時10分阿波連埼灯台から真方位214度4.1海里の地点において,船尾甲板上で漁具の整理を終えた甲板員が,操舵室に戻る途中,開放のままとなっていた機関室出入口ハッチから同室をのぞいたところ,多量の海水が浸入しているのを発見した。
 当時,天候は晴で風力3の東風が吹き,海上は穏やかであった。
 操舵室で操船に就いていたA受審人は,甲板員から機関室の異状発生の報告を受け,直ちに主機を停止して同室出入口ハッチからのぞき込んだところ,同室の床面上まで海水が浸入しているのを認め,ビルジポンプの始動スイッチを投入したものの,補機始動・船内電源用の各蓄電池が冠水して同ポンプが作動せず,主機の冷却海水管系の海水吸入弁などを閉弁して海水の浸入を止めたのち,操舵室で主機の始動を試みたが,これも果たせず,運転不能と判断し,海上保安庁に救助を要請するよう船舶電話で船舶所有者に依頼した。
 その結果,郡正丸は来援した巡視船により泊漁港に引き付けられ,のち主機の冷却海水管系の各ゴム継手が取り替えられたほか,ぬれ損した主機セルモータ,ビルジポンプ,主機始動用及び補機始動・船内電源用の各蓄電池及び各充電機などが修理された。

(原因)
 本件浸水は,1箇月余の時間をかけて操業切替えの準備を行う際,主機の冷却海水管系の点検が不十分で,経年劣化が著しく進行していた主機直結の冷却海水ポンプ吐出管のゴム継手がそのまま放置され,主機の試運転の目的で航行中,同継手に生じていた亀裂が進展し,海水が同亀裂部から吹き出したことによって発生したものである。
 

(受審人の所為)
 A受審人は,1箇月余の時間をかけて操業切替えの準備を行う場合,船舶所有者から主機のピストン抜きを含む全般的な整備が長期間行われていないことを聞いていたのであるから,運転中,主機の冷却海水管系が損傷して海水が機関室に浸入することのないよう,同準備の期間中に同管系の点検を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,出渠したのち,同管系の海水吸入弁などを開放のままで係船していても同室ビルジに変化がなかったので問題はあるまいと思い,同準備の期間中に同管系の点検を十分に行わなかった職務上の過失により,主機直結の冷却海水ポンプ吐出管のゴム継手に経年劣化による亀裂が生じていることに気付かず,主機の試運転の目的で航行中,同亀裂が進展して多量の海水が同室に浸入する事態を招き,主機セルモータ,ビルジポンプ,主機始動用及び補機始動・船内電源用の各蓄電池及び各充電機などをぬれ損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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