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平成17年門審第28号
件名

遊漁船イトシマ運航阻害事件(簡易)

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成17年6月22日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(西林 眞)

理事官
花原敏朗

受審人
A 職名:イトシマ船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
なし

原因
燃料油タンクの油量確認不十分

裁決主文

 本件運航阻害は,燃料油タンクの油量確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年11月23日08時00分
 長崎県壱岐島東方沖

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船イトシマ
総トン数 4.9トン
登録長 11.65メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 356キロワット

3 事実の経過
 イトシマは,平成12年12月に建造されたFRP製遊漁船で,船体中央やや船尾寄りに操舵室と客室からなる上部構造物を有し,同構造物の甲板下に機関室を配置しており,同室へは操舵室内後方の甲板上に設けられたさぶた付の開口部から出入りするようになっていた。
 機関室は,ほぼ中央に,主機として,UM6SD1TCG型ディーゼル機関を据付け,その船首側に船首側動力取出軸でベルト駆動される充電用発電機などを配置し,主機の両舷には容量750リットルの燃料油タンクをそれぞれ備え,軽油を両タンク船尾寄り底部の取出口から共通配管で直接主機に供給するようになっていた。また,燃料油タンクは,甲板上にキャップ式の補給口を設け,船尾側側面に外径10ミリメートル長さ約500ミリメートルのアクリル製油面計を取り付けていたが,油量の遠隔表示器は備えられていなかった。
 A受審人(昭和58年12月一級小型船舶操縦士免許取得)は,平成8年から遊漁船業を始めたのち,同15年4月にイトシマを購入し,福岡県岐志漁港からの所要時間が1時間ばかりの玄界灘及び壱岐島周辺海域での遊漁を年間50日程度行っており,主機の燃料消費量については,航走時に常用する回転数毎分2,000,速力約20ノットのとき1時間当たり約100リットルで,中立回転数の毎分500として充電用発電機などを運転する場合には1時間当たり約10リットルであることを把握し,航走時間を目安になじみの給油業者に依頼して満タンまで補給するようにしていたものの,補給後などに自ら油面計などで燃料油タンクの油量を確認することはなかった。
 その後,A受審人は,イトシマを売却して遊漁船業を休業することにしたので,同16年11月23日に常連の釣客を招待して最後の遊漁を行うことを計画し,同日06時40分ごろ本船に到着して発航準備に取り掛かったが,前回補給後の航走時間数からまだ燃料油は十分に保有しているものと思い,燃料油タンクの油量を確認しなかったので,同油量が残りわずかになっていることに気付かないまま,主機を始動した。
 こうして,イトシマは,A受審人が1人で乗り組み,釣客6人を乗せ,船首0.2メートル船尾1.2メートルの喫水をもって,同日07時00分岐志漁港を発し,主機を回転数毎分2,000にかけ壱岐島東方沖の馬渡大瀬に向けて速力20.0ノットで航行中,08時00分名島灯台から真方位058度3.7海里の地点において燃料切れとなり,主機が停止した。
 当時,天候は晴で風力1の西風が吹き,海上は穏やかであった。
 A受審人は,セルモータを何度かけても主機が再始動せず,釣客の1人に燃料油系統の空気抜きを行ってもらっても効果がないことから,携帯電話で唐津海上保安部に救助を求め,来援した巡視艇の立合いで両燃料油タンクとも空になっていることを認め,のち同艇から燃料油の補給を受け自力で岐志漁港に帰港した。

(原因)
 本件運航阻害は,福岡県岐志漁港を発航するにあたり,燃料油タンクの油量確認が不十分で,壱岐島東方沖の釣場に向かって航行中,燃料切れとなったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,釣場に向けて福岡県岐志漁港を発航する場合,帰港するまで燃料油を保有できるよう,燃料油タンクの油量を確認すべき注意義務があった。ところが,同人は,前回補給後の航走時間数からまだ燃料油は十分に保有しているものと思い,燃料油タンクの油量を確認しなかった職務上の過失により,航行中に燃料切れとなって主機が停止し,自力航行が不能となるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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