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平成17年門審第33号
件名

漁船萬福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年5月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(清重隆彦)

副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:萬福丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板に破口を生じて浸水,のち全損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年1月27日03時35分
 山口県萩市鵜山岬沿岸部

2 船舶の要目
船種船名 漁船萬福丸
総トン数 4.06トン
登録長 10.29メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 50

3 事実の経過
 萬福丸は,いか一本つり漁に従事するFRP製漁船で,昭和51年5月に二級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が単独で乗り組み,操業の目的で,船首0.3メートル船尾1.6メートルの喫水をもって,平成17年1月27日03時30分山口県大井漁港を僚船とともに発し,同漁港北方の漁場に向かった。
 発航後,A受審人は,舵と機関とを適宜使用して漁港外に出航し,03時33分少し前ウツ瀬灯標から067度(真方位,以下同じ。)850メートルの地点で,針路を299度に定め,機関を全速力前進に掛けて11.0ノットの対地速力とし,操舵室中央部の操縦席に腰を掛け,遠隔操舵装置による手動操舵によって進行した。
 A受審人は,03時33分半少し過ぎ先行する僚船が見島方向に針路をとったのを認め,鵜山岬先端部の岩場から沖側に30メートルばかり突き出た浅礁があることを知っていたが,当日,月明かりで陸岸が見える状況であったことから,自船は更に岸寄りを航行することとし,針路を000度に転じて北上していたところ,同時34分半少し前右舷前方に白い磯波がたっているのを認め,沖出しすることとして309度に転じて同じ速力で続航した。
 03時34分半少し過ぎA受審人は,ウツ瀬灯標から043度880メートルの地点に達し,右転して目的地に向けることとしたとき,鵜山岬先端部の岩場が月明かりで目視できる状況であったが,岸に近づけば白波が見えるので大丈夫と思い,同岩場の航過距離を目測するなどして船位の確認を十分に行うことなく,再び針路を000度に転じ,立ち上がってかっぱを着たり長靴を履くなどの身繕いを始めた。
 A受審人は,転じた針路が鵜山岬沿岸部の浅礁に向首したことに気付かないまま,同じ針路及び速力で続航中,萬福丸は,03時35分ウツ瀬灯標から036度1,050メートルの地点に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力3の東南東風が吹き,潮候は下げ潮の中央期で,月齢は16.6日であった。
 乗揚の結果,船底外板に破口を生じて浸水し,のち,波にたたかれて全損となった。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,浅礁が存在する鵜山岬沿岸南部を航行中,漁場に向け転針する際,船位の確認が不十分で,同沿岸部の浅礁に向けて転針したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,浅礁が存在する鵜山岬沿岸南部を航行中,漁場に向け転針する場合,月明かりで同岬先端部の岩場を視認することができたのであるから,沿岸部の浅礁に著しく接近することのないよう,同岩場の航過距離を目測するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,岸に近づけば白波が見えるので大丈夫と思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,転じた針路が同浅礁に向首したことに気付かず進行して乗揚を招き,船底外板に破口を生じて浸水させ,波にたたかれて全損となるに至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して,同人を戒告する。





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