(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年2月16日01時40分
香川県本島西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船山貴丸 |
総トン数 |
498トン |
全長 |
74.04メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,323キロワット |
3 事実の経過
山貴丸は,主として鋼材輸送に従事する船尾船橋型鋼製貨物船で,船長B及びA受審人ほか3人が乗り組み,鋼材1,556トンを積載し,船首3.35メートル船尾4.40メートルの喫水をもって,平成16年2月13日14時40分千葉県千葉港を発し,山口県小野田港に向かった。
B船長は,船橋当直を,一等航海士,A受審人及び自身の3人による単独4時間制とし,両当直者に対して当直中に航行の支障になることがあれば報告するよう指示した。
A受審人は,翌々15日23時30分男木島東方4海里ばかりの備讃瀬戸東航路で,船長と当直を交替し,翌16日01時30分江浦港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から080度(真方位,以下同じ。)2.4海里の地点に達して針路を250度に定め,機関を全速力前進にかけて10.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,自動操舵により備讃瀬戸北航路を西行した。
A受審人は,01時33分西防波堤灯台から082度1.9海里の地点で,前方150メートルに底曳網漁に従事する小型漁船1隻を認めたので左舵をとって避航し,その後前方の同航路内に6隻ばかりの小型漁船を認めたので右舵をとってこれらの漁船を避航した。
01時35分A受審人は,西防波堤灯台から079度1.5海里の地点において,前方の小型漁船を避航したとき,船首が017度を向いて同航路から離れる針路となったが,レーダーを活用するとかコンパス方位を確認するとかして船位の確認を行わなかったので,自船の船位を見失い,備讃瀬戸北航路に戻ることができないまま,本島と広島の間に南北方向に細長く拡延する園州南方の浅所に著しく接近する態勢となって北上した。
A受審人は,01時37分西防波堤灯台から069度1.7海里の地点で前方の本島が近くなったので左転しながら続航し,01時40分少し前,不安になって機関の毎分回転数を20回転ばかり下げ,船長を起こして船橋に戻ったとき機関音が変わり,山貴丸は,01時40分西防波堤灯台から054度3,380メートルの地点で,船首方位330度及び速力8.0ノットで園州南方の浅所に乗り揚げた。
B船長は,急ぎ昇橋して乗り揚げたことを知り事後の措置に当たった。
当時,天候は晴で風力2の北東風が吹き,潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果,船底外板に擦過傷を生じたが,その後高潮時を待って自力離礁した。
(原因)
本件乗揚は,夜間,備讃瀬戸北航路を西行中,操業中の漁船群を避航した際,船位の確認が不十分で,同航路から外れて本島と広島の間に拡延する園州に著しく接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,備讃瀬戸北航路を西行中,操業中の漁船群を避航した場合,レーダーを使用するとかコンパス方位を確認するとかして船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,船位の確認を行わなかった職務上の過失により,自船の船位を見失い本島と広島間に拡延する園州南方の浅所に著しく接近して乗り揚げる事態を招き,船底外板に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。