(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年6月1日03時00分
島根県隠岐諸島島後南岸
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第八事代丸 |
総トン数 |
19トン |
全長 |
23.35メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
558キロワット |
3 事実の経過
第八事代丸は,中型まき網漁業船団の網船で,A受審人(昭和50年3月一級小型船舶操縦士免許取得)は同船団の船団長及び船長としてほか10人が乗り組み,船首0.6メートル船尾1.6メートルの喫水で,平成16年5月31日21時00分島根県西郷港を発進し,隠岐諸島島後南方の漁場に向かった。
A受審人は,前示漁場に到着したのち,魚群探索中の灯船から魚群発見の連絡を待っていたが,同船から連絡がないので自船も魚群探索を行うこととし,23時00分島後南方3海里沖の海域で,操舵室右舷側の休憩用木製台の前端に腰掛け,魚群探索を開始した。
ところで,A受審人は,漁場到着後2回ばかり漂泊して各20分間ずつ前記の休憩用木製台の上で横になって休息したものの,魚群探索を開始してからは,前方の見張りも行いながら魚群探知器の画面を注視していたことから神経を使う状態が続き,時間の経過とともに次第に疲労が蓄積する状態になっていた。
翌6月1日02時19分A受審人は,西郷岬灯台から214度(真方位,以下同じ。)4.7海里の地点で針路を025度に定め,自動操舵により,6.0ノットの対地速力で魚群探知器の画面を見ながら進行した。
A受審人は,02時30分西郷岬灯台から216度3.6海里の地点で疲労のため眠気を催したが,漂泊中に休息したので居眠りすることはあるまいと思い,出漁してから魚群を発見していないのでもう少し探索を続けることとし,休息中の他の乗組員を起こして当直交代するなど居眠り運航の防止措置をとらないで,休憩用木製台に腰掛けたまま右後方の壁に寄りかかっているうち,いつしか居眠りに陥った。
こうして,第八事代丸は,A受審人が居眠りに陥ったまま島後南岸に向けて進行するうち,03時00分西郷岬灯台から258度0.9海里の島後南岸に原針路原速力のまま乗り揚げた。
当時,天候は曇で風力1の北西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果,球状船首及びソナー室付近船底外板に破口及び凹損を生じて同室に浸水し,同室内の電子機器類に濡損を生じたが,のちいずれも修理された。
(原因)
本件乗揚は,夜間,島根県隠岐諸島の島後南方沖合の漁場で魚群探索中,居眠り運航の防止措置が不十分で,島後南岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,島根県隠岐諸島の島後南方沖合の漁場で魚群探索中に眠気を催した場合,魚群探索を続行すると居眠りに陥るおそれがあったから,居眠り運航とならないよう,休息中の乗組員を起こして当直交代するなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,漂泊中に休息したので居眠りすることはあるまいと思い,出漁してから魚群を発見していないのでもう少し探索を続けることとし,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,居眠り運航となり,島後南岸に向首進行して乗揚を招き,球状船首やソナー室付近船底外板に破口及び凹損を生じさせてソナー室に浸水し,同室内の電子機器類に濡損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。