(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年8月7日23時40分
鳥取県鳥取港
2 船舶の要目
船種船名 |
遊漁船第10天聖丸 |
総トン数 |
5.21トン |
登録長 |
11.76メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
279キロワット |
3 事実の経過
第10天聖丸(以下「天聖丸」という。)は,船体中央部に操舵室があるFRP製遊漁船で,A受審人(昭和50年7月一級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み,釣り客5人を乗船させ,遊漁の目的で,船首0.4メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,平成16年8月7日18時00分鳥取県鳥取港を発し,同港西方で約5時間釣りを行ったのち,帰途に就いた。
23時30分A受審人は,鳥取港灯台から297度(真方位,以下同じ。)2.2海里の地点において,針路を鳥取港第3防波堤灯台(以下「第3防波堤灯台」という。)に向首する110度に定め,機関を全速力前進にかけて19.0ノットの対地速力とし,レーダーを休止したまま,釣り客を船首尾の甲板に腰掛けさせ,自らは舵輪後方に立ち,手動操舵と見張りに当たって進行した。
ところで,A受審人は,約15年前から副業として遊漁船業を営んでおり,普段から第3防波堤灯台を船首目標として帰航していたので,その手前には西方に延びた第1防波堤が存在し,その先端には緑色標識灯があることを承知しており,いつも同防波堤を左舷に替わしたのち,同標識灯を左舷に,第3防波堤灯台を右舷にそれぞれ見て港口を通過していた。
23時37分少し前A受審人は,鳥取港灯台から309度1,300メートルの地点に達したとき,同灯台の視認状況から港口に接近したことを知ったが,第3防波堤灯台に向首することに気をとられ,右舷方の鳥取港灯台の方位を測るとか,レーダーを作動させて第1防波堤までの距離を測定するなど,その後の船位の確認を十分に行わず,10.0ノットの対地速力に減速して続航した。
A受審人は,第1防波堤に著しく接近したことに気付かず,同防波堤に向首したまま進行し,23時40分鳥取港灯台から354度470メートルの地点において,天聖丸は,原針路原速力のまま,同防波堤に衝突した。
当時,天候は晴で風力2の南東風が吹き,潮候は下げ潮の末期であった。
衝突の結果,第1防波堤には損傷を生じなかったものの,船首部外板に亀裂を生じ,のち修理された。また,釣り客2人が負傷した。
(原因)
本件防波堤衝突は,夜間,鳥取県鳥取港に向け帰航中,右舷方の鳥取港灯台の視認状況から港口に接近したことを知った際,その後の船位の確認が不十分で,第1防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,鳥取県鳥取港に向け帰航中,右舷方の鳥取港灯台の視認状況から港口に接近したことを知った場合,第3防波堤灯台を船首目標としていたから,その手前で西方に延びた第1防波堤への接近状況が分かるよう,鳥取港灯台の方位を測るとか,レーダーを作動させて同防波堤までの距離を測定するなど,その後の船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,第3防波堤灯台に向首することに気をとられ,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,第1防波堤に著しく接近したことに気付かず,同防波堤に向首したまま進行して衝突を招き,船首部外板に亀裂を生じさせ,釣り客2人が負傷する事態を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。