日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2005年度(平成17年度) >  衝突事件一覧 >  事件





平成17年函審第4号
件名

遊漁船第八タツミ丸モーターボートドリーム衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年6月23日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(西山烝一)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第八タツミ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:ドリーム船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第八タツミ丸・・・右舷側船首部外板に擦過傷
ドリーム・・・右舷側前部から後部外板にかけて亀裂を伴う凹損及び操舵室上部の圧壊などの損傷 船長が,右肩関節及び右膝関節などに挫傷の負傷

原因
第八タツミ丸・・・見張り不十分,船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
ドリーム・・・動静監視不十分,注意喚起信号不履行,船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は,第八タツミ丸が,見張り不十分で,錨泊中のドリームを避けなかったことによって発生したが,ドリームが,動静監視不十分で,注意喚起信号を行わず,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年9月26日12時20分
 北海道石狩湾港北北西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第八タツミ丸 モーターボートドリーム
総トン数 4.91トン  
全長   5.67メートル
登録長 10.40メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 169キロワット 36キロワット

3 事実の経過
 第八タツミ丸(以下「タツミ丸」という。)は,船体中央部やや後方に操舵室を設けたFRP製小型遊漁兼用船で,A受審人(平成10年10月一級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み,釣り客11人を乗せ,遊漁の目的で,船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,平成16年9月26日05時50分北海道石狩湾港花畔(ばんなぐろ)ふ頭船溜まりを発し,同港北北西方沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は,06時50分ごろ石狩湾港北北西方沖合11海里の釣り場に着いて遊漁を開始したが,釣果が思わしくなく,5回ばかり南下しながら釣り場を移動して遊漁を行わせ,6箇所目の釣り場で遊漁の終了時刻となったので帰航することとし,12時06分石狩湾港北防波堤北灯台(以下「石狩湾港北灯台」という。)から328度(真方位,以下同じ。)4.8海里の地点を発進し,針路を144度に定め,機関を回転数毎分2,000にかけ,10.0ノットの対地速力で進行した。
 ところで,A受審人は,交通事故の後遺症で視力が悪くなり,遠方が見えにくかったことから,同年4月から常連客の一人(以下「見張補助員」という。)に,遊漁料金を取らないで航行中の見張り,係留作業及び釣り客への援助などを依頼していたが,発進後,見張補助員に船首部で見張りを行うよう依頼しなかった。
 A受審人は,舵輪後方に立った姿勢で見張りと手動操舵に当たり,12時17分石狩湾港北灯台から330.5度3.0海里の地点に達したとき,正船首930メートルのところにドリームが存在し,船首部に見張補助員を立てていれば,同船を視認したとの合図を受けることができる状況で,同船が錨泊中の形象物を掲げていなかったものの,北西方に向首したまま移動していないことから錨泊していることがわかり,その後,同船と衝突のおそれのある態勢で接近したが,海面が穏やかなので自分一人の見張りで大丈夫と思い,同補助員を立てて合図させるなどして,前路の見張りを十分に行っていなかったので,ドリームの存在に気付かず,同船を避けないまま続航した。
 A受審人は,前路の見張りが不十分のまま進行中,12時20分石狩湾港北灯台から330度2.5海里の地点において,タツミ丸は,原針路,原速力のまま,その右舷船首部がドリームの右舷前部に前方から15度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風力1の北西風が吹き,潮候は上げ潮の末期であった。
 また,ドリームは,ほぼ船体中央部に操舵室を有し,電気モーターホーンを備えた船外機付きFRP製モーターボートで,B受審人(平成7年9月四級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み,魚釣りの目的で,船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって,同日08時00分石狩湾港の石狩放水路付近の砂場を発し,同港北方沖合5海里の釣り場に向かった。
 B受審人は,08時20分ごろ前示釣り場に着いてさば釣りを行ったが,釣果がよくないので南西方に移動しながら釣りを続け,11時00分前示衝突地点に至って機関を止め,水深約24メートルの海底に船首から重さ5キログラムの錨を投じ,直径約20ミリメートルの化学繊維製の錨索を40メートル延出し,錨泊中の形象物を掲げないまま錨泊した。
 錨泊後,受審人は,右舷側後部で釣りを行っていたところ,12時13分半右舷船首方2,000メートルのところに自船に向かってくるタツミ丸を初めて視認したが,一瞥して錨泊している自船を避けていくものと思い,その後,タツミ丸に対する動静監視を十分に行うことなく,釣りを続けた。
 12時17分B受審人は,船首が309度を向いていたとき,タツミ丸が右舷船首15度930メートルとなり,自船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近したが,動静監視が不十分で,このことに気付かず,注意喚起信号を行うことも,機関を始動して衝突を避けるための措置をとることもなく,錨泊して釣りを続けた。
 B受審人は,12時20分わずか前機関音を聞いて右舷方を見たとき,タツミ丸が右舷船首方至近に迫り,衝突の危険を感じたものの,どうすることもできず,咄嗟に甲板に体を伏せた直後,ドリームは,船首が309度を向いたまま,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,タツミ丸は,右舷側船首部外板に擦過傷を生じ,ドリームは,右舷側前部から後部外板にかけて亀裂を伴う凹損及び操舵室上部の圧壊などを生じて航行不能となり,石狩湾港に曳航されたのち修理され,B受審人は,右肩関節及び右膝関節などに挫傷を負った。

(原因)
 本件衝突は,北海道石狩湾港北北西方沖合において,南下中のタツミ丸が,見張り不十分で,前路で錨泊中のドリームを避けなかったことによって発生したが,ドリームが,動静監視不十分で,注意喚起信号を行わず,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,石狩湾港北北西方沖合において,同港に向け南下する場合,視力が弱く遠方が見えにくかったのであるから,錨泊中の他船を見落とさないよう,船首部に見張補助員を立てて合図させるなどして,前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし,同受審人は,海面が穏やかなので自分一人の見張りで大丈夫と思い,前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,錨泊中のドリームの存在に気付かず,同船を避けないまま進行して衝突を招き,タツミ丸の右舷側船首部外板に擦過傷を,ドリームの右舷側外板に亀裂を伴う凹損及び操舵室上部の圧壊などを生じさせ,B受審人の右肩関節及び右膝関節などに挫傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は,石狩湾港北北西方沖合において,釣りのために錨泊中,自船に向首するタツミ丸を認めた場合,衝突のおそれの有無を判断できるよう,同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかし,同受審人は,一瞥して錨泊している自船を避けていくものと思い,タツミ丸に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により,同船が衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず,注意喚起信号を行うことも,衝突を避けるための措置をとることもしないで釣りを続け,同船との衝突を招き,前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION