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平成17年那審第1号
件名

貨物船よね丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年5月31日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(加藤昌平)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:よね丸船長 海技免許:三級海技士(航海)

損害
よね丸・・・球状船首及び船首部外板に破口を伴う凹損
防波堤・・・ケーソンに破口及び欠損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年9月12日01時15分
 沖縄県那覇港

2 船舶の要目
船種船名 貨物船よね丸
総トン数 499トン
全長 81.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット

3 事実の経過
 よね丸は,平成2年9月に竣工し,可変ピッチプロペラとフラップラダーを装備した船尾船橋型の鋼製貨物船で,A受審人ほか5人が乗り組み,雑貨等681トンを積載し,船首2.5メートル船尾4.3メートルの喫水をもって,同16年9月11日21時55分沖縄県運天港を発し,那覇港浦添ふ頭に向かった。
 翌12日01時05分A受審人は,那覇港新港第1防波堤北灯台(以下「北灯台」という。)から344度(真方位,以下同じ。)1.5海里の地点で,針路を191度に定め,機関を全速力前進として13.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で自動操舵により進行し,レーダー及びGPSプロッターを作動させ,入港準備のために機関用意を令したのち,01時08分半北灯台から323度1,770メートルの地点に達したとき,機関を港内全速力として速力を11.0ノットに減速し,手動操舵に切り替えて小舵角の左舵と舵中央を繰り返しながら,那覇港倭口に向けて転針を開始した。
 ところで,那覇港倭口は,同港北側にほぼ東西に延びる長さ約1,300メートルの浦添第1防波堤及び同港西側にほぼ南北に延びる長さ約3,400メートルの新港第1防波堤によって構成される可航幅約300メートルの防波堤入口をなし,同口を経由して浦添ふ頭に向かうには,倭口のほぼ東方約1海里の港奥に敷設された内防波堤(北)及び内防波堤(南)によって構成される可航幅約200メートルの防波堤入口を通過し,同ふ頭に進行するものであった。
 また,A受審人は,浦添ふ頭に着岸した経験が豊富で,夜間,北方から倭口経由で同ふ頭に向かうに当たっては,北灯台の北西方約1海里の地点で,港内全速力の11.0ノットに減速し,手動操舵として5度程度の左舵と舵中央を適宜繰り返し,半径1,000メートルばかりの円弧状の航跡を描きながら倭口のほぼ中央部に至り,その後,港奥の内防波堤(北)南端に設置された緑色閃光を表示する那覇港浦添北内防波堤灯台(以下「浦添防波堤灯台」という。)にほぼ向首する098度の針路で同ふ頭に向かう入港進路としていた。
 転針を開始したときA受審人は,左舷船首方の自船の入港進路近くに,投錨しようとして低速で航行する他船を視認したことから,同船の動静を肉眼で監視しながら回頭を続けたところ,左舵が遅れ気味となって入港進路から大きく外側に外れて進行したが,同船の動静監視に気をとられ,レーダーやGPSプロッターを利用して防波堤の位置を把握するなど,船位の確認を十分に行っていなかったので,このことに気付かないまま続航した。
 その後,A受審人は,前示他船を無難に右舷後方に航過したころ,左舷船首方に浦添防波堤灯台の発する緑色閃光を視認し,01時14分北灯台から244度460メートルの地点で,同灯台に向首する080度の針路としたところ,新港第1防波堤に向首する状況となったものの,依然として,船位の確認を十分に行っていなかったので,入港進路から大きく外側に外れていることも,新港第1防波堤に向首していることにも気付かないまま進行した。
 こうして,よね丸は,080度の針路で続航中,01時15分北灯台から188度130メートルの地点において,原速力のまま新港第1防波堤に衝突した。
 当時,天候は晴で風力3の南東風が吹き,潮候は上げ潮の初期であった。
 衝突の結果,よね丸は,球状船首及び船首部外板に破口を伴う凹損を,新港第1防波堤のケーソンに破口及び欠損を生じさせた。

(原因)
 本件防波堤衝突は,夜間,那覇港入港のために同港倭口に向けて転針する際,船位の確認が不十分で,新港第1防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,那覇港入港のために同港倭口に向けて転針する場合,倭口を構成する防波堤に向首することのないよう,レーダーやGPSプロッターを利用して防波堤の位置を把握するなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,転針を開始したとき,左舷船首方の自船の入港進路近くに,投錨しようとして低速で航行する他船を視認したことから,同船の動静を監視することに気をとられ,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,入港進路から大きく外側に外れ,新港第1防波堤に向首していることに気付かないまま進行して同防波堤への衝突を招き,球状船首及び船首部外板に破口を伴う凹損を,新港第1防波堤のケーソンに破口及び欠損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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