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平成17年仙審第7号
件名

漁船第二十五興富丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年4月27日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(大山繁樹)

理事官
寺戸和夫

受審人
A 職名:第二十五興富丸船長 海技免許:四級海技士(航海)

損害
右舷船首部外板に亀裂を伴う凹損,右舷側外板に凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は,居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年3月25日22時00分
 青森県八戸港

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十五興富丸
総トン数 143トン
全長 36.61メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 713キロワット

3 事実の経過
 第二十五興富丸(以下「興富丸」という。)は,昭和61年6月に進水した,沖合底びき網漁業に従事する鋼製漁船で,A受審人ほか13人が乗り組み,操業の目的で,船首1.8メートル船尾3.0メートルの喫水をもって,平成16年3月25日02時30分青森県八戸港を発し,同港北東方沖合の漁場に向かった。
 興富丸は,04時40分ごろ目的の漁場に到着して操業を始め,漁労長が船橋で操船しながら操業を指揮し,A受審人以下乗組員が甲板上で漁労作業に従事して20時ごろ操業を終え,八戸港外港中央防波堤北灯台(以下「中央防波堤北灯台」という。)の北東方22海里ばかりの地点を発進し,帰途についた。
 A受審人は,他の乗組員とともに漁獲物整理及び手仕舞いの各作業に当たり,20時30分中央防波堤北灯台から047度(真方位,以下同じ。)18.2海里の地点で同作業を終え,漁労長と交替して単独の船橋当直に就き,同灯台にほぼ向首する228度の針路に定め,機関を全速力前進にかけて12.5ノットの対地速力とし,自動操舵により進行した。
 ところで,興富丸は,前日まで未明に八戸港を出港し,その日の夜中に帰航する操業を数日繰り返していたが,その間,A受審人は,同港と漁場との往復航海に当たっては単独で船橋当直に就き,漁場では前示の漁労作業に従事していたことから,睡眠不足が続き,疲労が蓄積した状態となっていた。
 A受審人は,暖房した操舵室内で立って見張りに当たっていたところ,21時10分中央防波堤北灯台まで10海里の地点に達したとき,眠気を催したが,外気に当たって眠気を覚ましたので,居眠りすることはあるまいと思い,休息中の乗組員を起こして2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置を十分にとることなく,同じ針路,速力で続航した。
 21時45分前A受審人は,中央防波堤北灯台から043度2.7海里の地点において,中央防波堤と第2中央防波堤との間の水路までの距離が3海里となったとき,レーダーで前路に他船がいないことを確認したのち,港界近くになってから再度転針することとして,中央防波堤南東端に向首する208度の針路に転じ,自動操舵のまま,同じ速力で進行した。
 A受審人は,間もなく,操舵室左舷側のレーダーの後方で立ったまま居眠りに陥り,21時57分転針予定地点に達したものの,このことに気付かずに続航中,22時00分中央防波堤北灯台から151度1,610メートルの地点において,中央防波堤南東端に興富丸の右舷船首が衝突した。
 当時,天候は曇で風力1の南南東風が吹き,海上は穏やかで,潮候は下げ潮の末期であった。
 A受審人は,衝突の衝撃で目覚め,直ちに機関を後進にかけて行きあしを止め,事後の措置に当たった。
 衝突の結果,右舷船首部外板に亀裂を伴う凹損を,右舷側外板に凹損をそれぞれ生じた。

(原因)
 本件防波堤衝突は,夜間,漁を終えて青森県八戸港に帰航中,居眠り運航の防止措置が不十分で,同港外港中央防波堤南東端に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,漁を終えて単独で船橋当直に当たって青森県八戸港に帰航中,眠気を催した場合,連日の操業により睡眠不足と疲労が蓄積していたのであるから,居眠り運航とならないよう,休息中の乗組員を起こして2人当直とするなど,居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,外気に当たって眠気を覚ましたので居眠りすることはあるまいと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,港の入口近くで居眠りに陥り,中央防波堤南東端に向首進行して同防波堤との衝突を招き,右舷船首部外板に亀裂を伴う凹損を,右舷側外板に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。


参考図





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