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平成16年仙審第56号
件名

モーターボートサンミッキーII運航阻害事件(簡易)

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成17年2月24日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(勝又三郎)

理事官
西山烝一

受審人
A 職名:サンミッキーII船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
航行不能

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件運航阻害は,水路調査が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年5月4日15時15分
 新潟港西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートサンミッキーII
総トン数 7.3トン
全長 10.33メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 235キロワット

3 事実の経過
 サンミッキーII(以下「サンミッキー」という。)は,平成5年1月に建造され,レーダーとGPSプロッターを装備した2機2軸のFRP製モーターボートで,同16年2月一級小型船舶操縦士(5トン限定)及び特殊小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,同乗者1人を乗せ,操縦練習と観光の目的で,船首尾とも0.5メートルの等喫水をもって,同年5月3日15時30分新潟県阿賀野川泰平橋付近の係留地を発し,19時00分ごろ新潟県両津港に到着して1泊し,翌4日13時30分同港を出航して帰途についた。
 ところで,A受審人は,平成2年四級小型船舶操縦士の免許を取得したのち,船外機付和船型ボートを友人と共同購入し,新潟港の周辺海域で釣りのため航行していたものの,同16年2月末にサンミッキーを購入して整備等を行い,同船を初めて操縦して佐渡島へ向かうこととし,同島への航海も初めてであったうえ,装備していたGPSプロッターには海岸線,新潟港の防波堤及び針路線を記憶させていただけだった。
 また,B組合は,周年の雑漁小型定置漁業を営み,新潟港西区西突堤灯台(以下「西突堤灯台」という。)から254度(真方位,以下同じ。)2.4海里の地点(以下「イ点」という。),イ点から230度530メートルの地点(以下「ロ点」という。),ロ点から147度790メートルの地点(以下「ハ点」という。),ハ点から057度500メートルの地点(以下「ニ点」という。)を順に結んだ範囲内に漁業区域を設け,それらの各地点に,高さ約4から5メートルの竹棒の下に約7キログラムの錘を付け,その上方に直径30センチメートルの黄色浮玉を固縛して海面に浮かせ,同棒の海面上約1.5メートルのところに約30ルックスのサインライトを結び,同棒の頂点に1メートル四方の赤旗を取付けて設置区域を表示し,同区域内にアジ定置網(以下「定置網」という。)を設置していた。
 定置網は,敷網部分が約230メートル,手網部分が約325メートルで構成され,それぞれの網を100キログラムの錨を取付けた多数のロープ(以下「固定用ロープ」という。)で固定し,その周囲に18個のボンデンを設置していた。
 一方,A受審人は,佐渡島への往復航の航海を初めて行うこととしたが,今まで新潟港周辺海域を航行しても何もなかったので大丈夫と思い,発航前に同港西方沖合の定置網等の設置状況を海上保安部に問い合わせるなどして水路調査を十分に行うことなく,定置網が設置されていることに気付かず,GPSプロッターに設置状況を記憶させることができずに係留地を発航したものであった。
 こうして,両津港発航後A受審人は,カーフェリーの出航を認めたので,その後方について航行し,姫埼南東方沖合から新潟市内の県庁舎を目標にして南東進し,15時07分少し前西突堤灯台から243.5度5.0海里の地点で,針路を第2西防波堤北東端に向く057度に定め,機関回転数毎分3,000の全速力前進にかけ,19.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)として手動操舵で進行した。
 15時15分少し前A受審人は,船首左右前方100メートルのところに数個のボンデンを視認したものの,刺し網用のものと考えて航行していたところ,至近になって固定用ロープを初認したので一旦機関を停止したのち,再び機関を前進にかけてボンデン間に向けて続航中,サンミッキーは,15時15分西突堤灯台から250度2.43海里の地点において,原針路,原速力のまま,定置網に乗り入れ,推進器両翼に固定用ロープを絡ませ,機関が停止して航行不能となり,運航が阻害された。
 当時,天候は曇で風力4の北北西風が吹き,潮候は下げ潮の末期であった。
 A受審人は,サンミッキー購入店に連絡し,海上保安部に救助を依頼するなどの事後の措置をとった。
 その結果,A受審人及び同乗者は海上保安部のヘリコプターで救助され,翌日,サンミッキーは海上保安部の巡視艇で新潟港西区に引き付けられて陸揚げされ,定置網の所有者立会いのもとで推進器両翼から固定用ロープを取り外し,同翼等に損傷はなく,定置網は同ロープの切断等の損傷はなかった。

(原因)
 本件運航阻害は,新潟港西方沖合において,佐渡島への航海を初めて行い,同港西方を航行して帰航することとした際,発航前の水路調査が不十分で,設置されていた定置網に向首進行し,推進器両翼に固定用ロープが絡み,機関が停止して航行不能となったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,新潟港西方沖合において,佐渡島への航海を初めて行い,同港西方を航行して帰航することとした場合,設置されていた定置網に接近しないよう,係留地を発航する前に同港西方の定置網等の設置状況を海上保安部に問い合わせるなどして水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,今まで新潟港周辺を航行しても何もなかったので大丈夫と思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,定置網に向首進行して乗り入れ,サンミッキーの推進器両翼に固定用ロープを絡ませ,機関が停止して航行不能に陥り,同人及び同乗者が海上保安部のヘリコプターで救助され,サンミッキーが同港西区に引き付けられて陸揚げされ,のち固定用ロープの取り外し等を行わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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