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平成16年長審第59号
件名

旅客船はまなす火災事件

事件区分
火災事件
言渡年月日
平成17年3月29日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(山本哲也,藤江哲三,稲木秀邦)

理事官
清水正男,花原敏朗

指定海難関係人
A社B造船所 責任者:所長C 業種名:造船業
D 職名:A社B造船所L部長
E 職名:A社B造船所L部主席技師
F 職名:A社B造船所L部電武機装課機装係長
G 職名:H社M部主事
補佐人
I,G(いずれも全指定海難関係人選任)

損害
発電機関室及び同室天井の排気管群貫通部を焼損,協力会社社員が両手及び顔面に火傷の負傷

原因
燃料油系統の点検作業時,配管のフランジガスケットが破断して噴出したA重油が補助発電機原動機の排気集合管に降りかかり,周囲の可燃物が炎上したこと,造船所の防火等に対する安全管理不十分

主文

 本件火災は,造船所で艤装中の大型カーフェリーにおいて,海上試運転を終えて乾ドックへ入渠作業中,主発電機原動機の燃料油系統の点検作業が行われ,配管のフランジガスケットが破断して噴出したA重油が補助発電機原動機の排気集合管に降りかかり,周囲の可燃物が炎上したことによって発生したものである。
 造船所の防火等に対する安全管理が十分でなかったことは本件発生の原因となる。

理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年5月9日15時18分
 長崎港A社B造船所
 (北緯32度44.1分 東経129度51.4分)

2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 旅客船はまなす
総トン数 16,810トン
全長 224.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関及び電動機
出力 25,200キロワット(ディーゼル機関)
  17,600キロワット(電動機)
(2)建造の経緯
 はまなすは,A社がK社から建造を受注した同型姉妹船2隻のうちの第1船で,平成15年8月に同社B造船所の本工場において,旅客定員820人,車両最大搭載台数がトレーラー158台及び乗用車66台,計画航海速力が30.5ノットの大型高速カーフェリー「2191番船」として起工し,翌16年1月に行われた命名進水式で「はまなす」と命名され,第2船「N号」とともに同年6月末に引き渡しの予定で艤装が進められていた。
(3)一般配置
 船体は,7層の全通甲板(以下,下方から順に1甲板ないし7甲板と呼称する。)を有する船首船橋中央機関室型の全通船楼構造で,船尾にランプウェイを装備し,船体中央の2甲板下に機関室が設けられ,同室船尾側の1甲板が自動車搭載区画に,2及び3甲板はトレーラー搭載区画に,4甲板船尾側は乗組員居住区等に,4甲板船首側,5甲板及び6甲板船首側が客室区画にそれぞれ区画され,6甲板客室区画後方は化粧煙突の基部を囲う構造物になっていて,7甲板は船首部に船橋及び乗組員居室が,その船尾側中央からやや後方に化粧煙突が設けられ,6甲板の化粧煙突囲い構造物内に機関室給気ファンルームと非常用発電機室が,4甲板の乗組員居住区ほぼ中央に火災制御室がそれぞれ配置されていた。
(4)ポッド推進器
 推進装置は,2機1軸で駆動される可変ピッチプロペラ及びポッド推進器と呼称される補助推進装置を組み合わせた構造で,本船建造当時,電動機と固定ピッチプロペラが一体に組み込まれて360度回転するポッド推進器は客船を中心に内外ですでに多数の搭載実績があったが,1軸プロペラとの組合せは世界初の試みで,同組合せによって優れた操船性能に加え,二重反転式プロペラとして推進効率の改善と大幅な省エネルギー効果が見込まれ,客船並みの豪華な乗客設備とともに業界の注目を集め,また,A社も,その性能が実証されれば同種船の受注に弾みがつくものと万全を期して建造に取り組んでいた。
(5)機関室及び機関設備等
 機関室は,船首側から補機室,発電機室,発電機関室及び主機室の4区画に区画され,それぞれが1甲板によって上下2段に仕切られていて,主機室上段の1甲板右舷側に設けた機関制御室から機関の運転及び監視ができるようになっていた。
 主機は,O社が製造した出力12,600キロワットの12V46C型過給機付ディーゼル機関2機で,主機室の左右に据え付けられていた。
 一方,発電機関室には,中央にP社製の8DK32C型過給機付ディーゼル機関(以下「補発機関」という。)と同機を原動機とする出力3,450キロボルトアンペアの補助発電機が,補発機関及び補助発電機の両側に主機と同型のO社製ディーゼル機関(以下「主発機関」という。)がそれぞれ据え付けられ,また,発電機室には航海中,船内電源とともにポッド電動機に給電するため,14,353キロボルトアンペアという大出力の主発電機2台を備え,それぞれ主発機関で駆動するようになっていた。
 また,機関室天井に当たる2甲板から6甲板の化粧煙突囲い構造物床面まで,左右幅3メートルで前後長さ42ないし25メートルの機関室囲壁が船体中央を貫通するかたちで設けられ,同囲壁の中を通風路や主機,発電機関,ボイラ等の排気管が通してあった。
 なお,主機及び主発機関は,それぞれ右舷側が1号機,左舷側が2号機と呼称され,燃料油として,補発機関も同様にA重油,C重油及び両油の混合油がいずれも使用できる仕様となっていた。
 発電機関室下段の右舷側は,主発機関用の燃料油加圧ポンプ(以下「加圧ポンプ」という。)及び燃料油循環ポンプ(以下「循環ポンプ」という。)が各2台のほか,燃料油加熱器,バッファチャンバーなどの機器類が据え付けられた主発機関用ポンプ室(以下「ポンプ室」という。)となっていて,同室の船首部に4甲板まで通じるエスケープトランクが設けられていた。
 主発機関の燃料油系統は,加圧循環方式でA重油,C重油または混合油の常用タンクから複式の金網式こし器を経て加圧ポンプで吸引された同油が,0.39メガパスカル(Mp)まで加圧され,自動逆洗式こし器を通ってバッファチャンバーに送られ,さらに循環ポンプで吸引されて0.98Mpまで加圧されたうえ,3次こし器及び遮断機能を備えた入口弁を経て機関に供給され,同機関からの戻り油がバッファチャンバーに戻るようになっており,圧力調整弁(以下「調圧弁」という。)等によって機関入口圧力が0.7ないし0.9Mpの設定範囲に調整されるようになっていた。
 なお,機関出口からバッファチャンバーに至る戻り油系統には,同チャンバー入口弁の手前に,A重油及びC重油の各常用タンクに至る分岐管が設けられ,それぞれ止め弁(以下「循環弁」という。)を介して戻り油を各常用タンクに還すことができるようになっていた。
(6)防火消防設備
 船橋に火災探知警報装置,防火扉遠隔閉鎖装置などが,火災制御室に車両甲板スプリンクラー送水制御盤並びに機関室用の高膨張泡消火装置制御盤,局所消火装置制御盤,燃料及び潤滑油タンク遮断装置などがそれぞれ設置され,消火ポンプとして機関室に消防・バラスト兼ビルジポンプ1台と消防・雑用兼ビルジポンプ2台を備えていたほか,消火ホース,移動式の粉末消火器,持運式各種消火器などが各所に配置されていた。
 高膨張泡消火装置及び局所消火装置は,主機,発電機関,ボイラ等の上方に取り付けたノズルから消火液または清水を高圧で噴射し,発生する大量の泡または噴霧で火災現場を包囲して消火を図るもので,局所消火装置は手動または自動の切替えができ,自動モードにしておくと,火災を検知した当該箇所に自動的に噴霧するようになっていたが,溶接の火花や煙などに誤作動して機器や電気配線に濡れ損が生じるおそれがあるので通常は手動モードに設定され,高膨張泡消火装置は局所消火装置が使用可能であったことから,当時消火液がまだ積載されていなかった。
 また,入渠中の船舶には,陸の消火設備から甲板上に消火水ヘッダーを積み込んで随所に消火ホースが引かれ,ほかに機関室等では持運式消火器の設置箇所が隣と10メートル以上離れているときは,これを補うかたちで造船所の消火器が設置されていた。

3 安全管理体制
 ところで,B造船所は,平成14年10月に,当時本工場で建造中であった世界最大級の豪華客船で火災を発生させ,船体の約4割を焼損するという未曾有の事態に遭遇し,事故後,企業の信頼回復のため,海外から招聘した火災対策専門家を交えるなどして,災害及び火災防止体制の見直しを行い,新たに安全衛生についての管理要領を定め,また,防火管理要領については主として建造中の船舶に重点を置いた改訂を加えるなど,次のような安全管理体制を整え,事故の再発防止に向けて全社を挙げて取り組んでいた。
(1)安全衛生管理
 労働安全衛生法に基づいて安全衛生管理要領を定め,所長が総括安全衛生管理者としてB造船所全般の安全衛生管理を総括管理し,管理部門担当の副所長が必要に応じて所長を代行するなど,その職務を補佐するようになっており,造船及び機械各部門担当の副所長が,それぞれ副総括安全衛生管理者として各部門の安全衛生管理を統括管理し,さらに,部長がそれぞれの部の安全衛生管理実施責任者としての職務を行うようになっていた。
 また,B造船所社員と協力会社社員等との混在作業による災害を防止するため,統括安全衛生管理要領を定め,造船及び機械各部門担当の副所長が,統括安全衛生責任者として各部門を,また,各部の部長が部統括安全衛生責任者として各部をそれぞれ統括管理しており,L部の部長は,建造船及び修繕船にそれぞれ船統括安全衛生責任者を置いて同船の統括管理業務を行わせていた。
(2)防火管理
 消防法に基づいて防火管理要領を定め,所長が防火対象物の管理権限者として防火管理組織を編成して統括防火管理者,防火管理者及び防火責任者を置くようにしており,L部については,部長が防火責任者として所管区域内の防火管理の責を負い,新造船及び修繕船においては船統括安全衛生責任者を防火責任者として,防火管理組織を編成させて火災発生時には消防隊長の任に当たらせ,一方,海上試運転等の臨時航行時には,別途防火部署表を編成し,航行中における防火体制を敷いていた。
 また,火災発生時は,火災第一発見者が遅滞なく消防機関へ通報するように定め,建造船及び修繕船の船橋及び機関制御室には直接船外と通話できるように構内電話を設置していた。
 このように,B造船所は,安全衛生及び防火管理体制を整えて安全管理に努めるほか,定期的に防災イベント,消防署との合同消防訓練,各種災害防止教育,指差呼称や危険予知訓練等を実施し,また,A所長が所長就任後,安全上の問題点を効果的に発見して指摘できるよう所内パトロール要領を改善し,できるだけ現場職員と会話の機会を持つなどして,職員及び関係者への安全管理意識の浸透を図っていた。

4 事実の経過
(1)主発機関燃料油系統の加圧ポンプ,フランジガスケット
 主発機関の燃料油系統は,平成16年2月6日に配管工事を終えたが,機関入口弁の入荷が間に合わなかったため,1,2号機とも3次こし器出口側に仮配管を取り付けてフラッシングを行い,そのままの状態で3月5日に規定の圧力1.32Mpで耐圧試験が実施された。そして,同入口弁が入荷したので同月27日に仮配管を取り外し,同弁とともに3次こし器出口管が熟練工によって取り付けられたが,2号機の同出口管取付フランジのガスケット(以下「2号機ガスケット」という。)が,品質不良によるものか,あるいは異物噛み込みによるものか当たり不良となり,燃料油圧力の上昇によって漏洩するおそれがある状態となった。
 ところで,加圧循環方式の燃料油系統においては,機関の負荷が低いときは戻り油量が増加し,系統全体の圧力が上昇することは知られるところである。そして,例えば機関停止の状態で加圧ポンプ及び循環ポンプの運転が続けられると,循環ポンプの吐出油全量が機関からバッファチャンバーに戻って循環することとなり,十数分で系統は一種の飽和状態となり,調圧弁の調整範囲を超えて圧力が上昇し,吐出油を吸入側に返す加圧ポンプ付調圧弁やバッファチャンバーの安全弁が開いて圧力が保たれるようになっていた。
 加圧ポンプは,循環ポンプとともに国内メーカーの実機実績も豊富な歯車ポンプであったが,はまなすが1番船だったこともあって,主発機関の初期調整運転時に低負荷運転が長時間続けられ,その際フラッシング不足によるものか,加圧ポンプに入り込んだ微細ごみが開いたままのポンプ付調圧弁を介してポンプ内を循環し,いつしかポンプ歯車やケーシングが異常摩耗して1,2号両ポンプともポンプ性能が低下していた。
 主発機関は,燃料油の機関入口弁取付け後,3月29日に陸上ロードタンクによる40パーセント負荷までの負荷試験,その後,係留試運転が行われたが,加圧ポンプの性能低下で燃料油機関入口圧力が設定下限値付近までしか上昇せず,また,いずれも負荷が低かったので,2号機ガスケットから燃料油が漏洩することも,加圧ポンプの性能低下が発見されることもなかった。
(2)予行海上試運転
 はまなすは,4月20日から5日間の日程で,ポッド推進器の出力試験を主目的の一つとする予行海上試運転(以下「予行運転」という。)が行われ,主発機関が本船搭載後初めて全負荷運転される予定となったが,同出力試験が制御系統の不具合によって不能となり,やむを得ず5月7日から予定されていた2回目の予行運転まで延期されることとなった。
 当時,B造船所では,前述の火災に遭った大型客船が修復を終えて5月末に10箇月遅れの引渡しを控え,はまなすとともにN号が6月末の引渡しに向けて終盤の艤装が進められるなどフル稼働の状態であった。また,L部にとっては,準備に傾注していたポッド推進器出力試験の不首尾は,このような環境の工程全体に遅延を招きかねない手痛い誤算であり,5月25日からはまなすの海上公試運転が予定されていたこともあって,同部ではその前の第2回予行運転で同出力試験を是非とも成功させる必要に迫られた。
 このような状況のもと,スケジュールが過密となって従業員の作業中の火災発生に対する危機意識が低下することが予想されたが,B造船所は,全従業員に対し,安全管理体制は組織管理のもとでこそ効果的に機能することを再認識させ,職務上の指示と報告及び職務組織間の連絡を密接に行うよう指示するなど,防火等に対する安全管理の徹底を図っていなかった。
 また,D部長は,E統括責任者にはまなすの第2回予行運転を行わせるに際し,現場職員の火災発生に対する危機意識が懸案事項遂行のため低下するおそれがあったが,自身が業務に忙殺されていたこともあって,必要な作業については職務間で対処を十分検討したうえ安全な管理体制のもとで行うことなど,予行運転中の防火等に対する安全管理について改めて指示していなかった。
(3)本件発生に至る経緯
 はまなすは,E統括責任者,F運転機関長及びG主任技師のほか,L部の機装係や電装係ほか各課員,協力会社作業員,各機関メーカーの担当技師など85人が乗り組み,第2回予行運転の目的で,船首5.85メートル船尾6.50メートルの喫水をもって,平成16年5月7日08時00分B造船所水ノ浦岸壁を発し,長崎県野母埼西方海域に向かった。
 E統括責任者は,予行運転中,機器の不具合等が発生すれば担当責任者から報告があるものと考え,不具合等に対する必要な作業を職務間で検討させることができるよう,適宜各部責任者を集めて報告事項がないか確認するなど,機器の不具合状況等を確実に把握する措置をとっていなかった。
 はまなすは,予定海域に至ってポッド出力試験を実施していたところ,O社技師が,主発機関の負荷が定格の60パーセント以上になると燃料油機関入口圧力が設定値以下に低下することに気付き,これを指摘されたF運転機関長が,G主任技師らとともに燃料油系統のこし器など各部を点検し,原因は両加圧ポンプの性能低下であることを突き止め,同ポンプを並列運転にすれば主発機関の高負荷運転時にも同圧力を設定下限値の0.7Mp付近で維持できることを確認した。
 F運転機関長は,主発機関の負荷に応じて加圧ポンプを適宜並列及び単独に切り替えて運転すれば,最優先課題のポッド出力試験に影響を与えることなく対応できるので,船橋で総合指揮に当たっていたE統括責任者に対し,機関の運転諸元等を頻繁に連絡していたが,加圧ポンプ性能低下については予行運転終了後にでも連絡すれば十分と考えて報告しなかった。
 また,乗船していたR部S課の課員も,主発機関の燃料油圧力低下と加圧ポンプの不具合を知り,同課事務所に連絡したうえ検討の結果,原因は同ポンプの損傷と特定し,予行運転終了後,ポンプメーカーに点検させれば問題は解決するものと同課の方針を固めていたが,同方針はF運転機関長にもE統括責任者にも伝えられなかった。
 はまなすは,3日間にわたり24時間の徹夜体制で予行運転が続けられ,5月9日午前中にポッド推進器など推進性能について所定の成績を無事確認し,L部艤装関係者らが一様に疲労感を覚えながらも安堵のうちに帰途に就き,途中,香焼工場沖合で約30人が下船したのち,13時30分第2ドック前に至って機関終了が令され,第2回予行運転の航海を終えた。
 はまなすは,第2ドックへの入渠作業を開始し,不要電源が順次切られてゆくなか,火災警報装置の電源も手順の一環として切られ,14時10分ごろ船内電源を主発電機から補助発電機に切り替え,14時25分に所定位置に位置固めされ,あとは陸上電源への切替え,これに続く補助発電機の停止やボイラの缶水ブローなどの作業を残すだけとなり,F運転機関長以下機装係全員が機関制御室で待機していた。
 なお,発電機関室は,通風装置として同室上段船尾左舷側に排気ファン1台及び給気ファンルームに給気ファン2台をそれぞれ備え,船内電源切替えに伴って補発機関単独運転となった際,すべて運転されていたこれら通風ファンのうち,給気ファン1台が停止されたものの給気過剰気味となり,室内空気は一部が排気ファンに吸引されて船尾左舷方へ向かい,ほとんどが船尾側天井の排気管群貫通部から上方の機関室囲壁に向かうようになった。
 G主任技師は,O社機関の取扱い経験も何度かあり,燃料油系統を含め主発機関のことは熟知していたが,新品同様の加圧ポンプが2台同時に損傷するのは希なことで,燃料油圧力低下の原因はポンプ不具合以外にも存在するのではないかと一抹の疑念を持ち,念を入れる意味で公試運転までに点検しておいた方が良いと考えていたところ,大勢の機装係が機関制御室で待機していたので,下船までの時間を利用して同点検作業を実施することを思い付き,F運転機関長に申し出た。
 F運転機関長は,G主任技師から点検作業の申出を受けたとき,おおよその作業内容は推定できたことから,同燃料油系統は耐圧試験を実施済であり,主発機関を運転するわけでもないので問題ないものと思い,機装係作業長(以下「作業長」という。)に作業の補佐に就くよう指示しただけで,点検作業の実施についてE統括責任者に報告しなかったばかりか,同作業の内容を十分に把握したうえ燃料油の漏洩などの不測の事態に備え,周囲を点検して監視員を配置するなどの措置をとらなかった。
 G主任技師は,主発機関を停止したまま加圧及び循環両ポンプのみを運転してバルブ操作だけで機関運転時の燃料油圧力状態を再現しようと考え,火災発生の危険を伴う不安全作業には当たらないと思い,F運転機関長に点検作業を行うことを申し出た際,配管に詳しい機装係を補佐に就けるよう依頼しただけで,具体的な作業内容を伝えず,また,作業に先立って燃料油漏洩などの事態に備え周囲を確認しなかったので,1甲板下に沿って配置されていた補発機関の排気集合管過給機入口付近に防熱材の未施工箇所が残っていることに気付かないまま14時40分点検に取り掛かった。
 はまなすは,14時45分ドックの水門が閉じられて排水が開始され,着床前でタラップは掛けられていなかったがクレーンで吊ったゴンドラを使用し,航海の手仕舞い作業に従事する機装係や電装係など約20人を残して乗船者が順次下船し始めた。
 E統括責任者は,はまなすが航海状態を終了して入渠状態に移行する入渠作業中であったが,F運転機関長に対して報告事項がないか確認しなかったので,加圧ポンプの不具合も入渠作業中に燃料油系統の圧力点検作業が開始されようとしていることも一切知らずに,D部長に試運転が無事終了したことを直接報告するため,15時少し前に下船して構内の事務所に向かった。
 こうして,はまなすは,タラップが取り付けられるまで陸上との往来が制限され,構内電話用ケーブルや陸上消火用ホースなどが未接続で,消防対策上不完全な状態となる入渠作業中に,艤装中で防火対策上不完全な箇所が残っているおそれがある発電機関室において,運転中の補発機関の近くで燃料油系統の圧力点検という不安全作業が開始された。
 G主任技師は,具体的な作業手順を説明しないまま作業長に指示しながらA重油系統を使用して点検作業を開始し,最初に1号及び2号加圧ポンプそれぞれについて,ポンプ付調圧弁を閉止したうえ出口弁を徐々に絞って吐出圧力の上昇具合を確かめ,ポンプの内部摩耗が確実なことを確認した。
 15時過ぎG主任技師は,続いて調圧弁の点検作業に取り掛かり,燃料油系統の各弁を通常の運転状態として加圧ポンプ及び循環ポンプ各1台を始動し,A重油常用タンクへの循環弁を開いて機関負荷状態の燃料油の流れを再現したうえ,調圧弁が設定圧力の0.88Mp以下で作動して燃料油が逃げていないか確認するため,循環弁の開度を絞って機関入口圧力を同設定圧力近くに調整し,調圧弁調整ねじを締め込んで設定圧力を高めても同弁入口圧力が変化しないことを確かめた。
 これら一連の点検作業の間,加圧及び循環ポンプの発停に伴って燃料油圧力変動が繰り返されていたところ,このとき機関入口圧力が,3次こし器出口管が取り付けられて以来,初めて設定範囲の上限値近くまで上昇し,当たり不良となっていた2号機ガスケットに亀裂が生じ,フランジの漏油飛散防止テープが未施工だったので,A重油が補発機関排気集合管の防熱材未施工箇所に向けて糸状に噴出し,同油の一部が表面温度摂氏280度ばかりとなっていた排気管に付着して加熱され,やがて発生した油蒸気に着火して周囲の可燃物がくすぶり始めたが,火災警報装置の電源が切られ,監視員が配置されず,また,発生した黒煙は空気の流れに伴い,発電機関の排気管群に沿って上方の機関室囲壁内に吸い込まれ,室内に拡散しなかったことから,誰も異状に気付かなかった。
 発電機関室下段では,1号主発機関船尾右舷側のポンプ室隔壁近くに配置された調圧弁のところで2人が作業中,作業長が連絡要員として呼んだ協力会社社員1人が加わった。
 15時12分G主任技師は,続いて調圧弁の開弁及び閉弁各圧力を確かめる作業に取り掛かり,燃料流量が少ない方が確認しやすいことから,作業長らに指示して1号主発機関出口弁及びバッファチャンバー入口弁を閉止させ,自らは循環弁を1.5回転ばかり開とし,作業長に調圧弁入口圧力計の監視に就くよう指示したうえ,加圧ポンプに続いて循環ポンプをスタートさせたところ,しばらくして循環ポンプの出口側圧力が,圧力波の作用によるものか,1.3Mp近くにまで上昇し,亀裂が発生していた2号機ガスケットが破損し,この少し前,くすぶっていた補発機関の排気管防熱材などが一気に炎上したことから,噴出した油が裸火に触れて着火し,床下に飛散したA重油に引火した。
 作業長は,調圧弁のところに着いて間もなく,入口圧力計の指針が急に上昇し,調圧弁の作動で1.0Mp付近まで数回ハンチングするのを認め,その直後,1号主発機関船尾方の同室後壁が炎に照射されたように明るくなったので不審に思い,船尾方に赴いて床下から火炎が上がっていることを発見し,はまなすは,15時18分長崎港旭町防波堤灯台から真方位215度1,400メートルの地点において,発電機関室が火災となった。
 当時,天候は曇で風力2の南風が吹いていた。
 作業長は,携帯していた機関室専用のイヤホン付トランシーバーに向かって「火事だ,火事だ」と大声で連呼して機関制御室に火災の発生を知らせ,F運転機関長は,この少し前,作業の様子をうかがいにポンプ室に降りてきたときに作業長の大声を聞き,また,G主任技師は,循環ポンプを始動したのち調圧弁の圧力計で予想以上に圧力が上昇したことを認め,ポンプ室に戻って両燃料ポンプを停止した直後に作業長の声で火災発生を知った。
 F運転機関長は,発電機関室の3人とともに各所に設置された持運式消火器を用いて消火を試みたが,火勢が強くて効果がなく,15時19分過ぎ消火作業を続けることは危険と判断して全員に現場からの避難を指示し,ポンプ室のエスケープトランクからG主任技師及び作業長とともに4甲板に避難し,消火に夢中で退避指示に気付かなかった協力会社社員は少し遅れて補発機関船首側の階段から室外に逃れた。
 機関制御室では,機装係員8人が待機していたところ,主発機関の計器盤を監視していた技能スタッフが2号機燃料油入口圧力がハンチングして1.3Mp近くまで上下するのを認め,トランシーバーを通じて作業長に圧力が高い旨連絡したすぐあと,イヤホン及び同室のスピーカーを通して作業長が火事だと連呼するのを聞き,主機室上段に飛び出した機装係数人が,天井の機関室囲壁船首側開口部から主発機関の排気管が燃えて火の粉が落下しているのを認め,持運式消火器等を持って階段を駆け上がり,2甲板の同囲壁出入り口から排気管周囲の消火に当たった。
(4)消火活動
 4甲板に逃れたF運転機関長は,消防署へ通報しようとしたが,構内電話が未接続なので船舶電話を使用することとし,急いで船橋に向かい,G主任技師及び作業長は機関制御室及び2甲板に戻って消火活動に加わった。
 こうして,はまなすは,火災発見がやや遅れて初期消火は果たせなかったものの,機装係員等が中心となり,船内消火ホースによる射水を開始し,機関室通風機の停止,給気ファンルームの吸入ダンパーの閉鎖などに続き,局所消火装置を手動作動させ,発電機関燃料油を危急遮断するなど,客船火災以来頻繁に繰り返されてきた消防訓練の効果もあって,混乱のなか手違いも生じたが,限られた人数で有効な消火活動が続けられた。
 当日は日曜日であったが,B造船所では多くの職員が出勤しており,はまなすの煙突などから排出される黒煙を認めて火災発生を知り,同船を先に下船していたドックマスターが,15時25分所内の事務所から第一報を,続いて,同時26分F運転機関長が船橋から携帯電話で,それぞれ長崎市消防局に火災発生を通報した。
 D部長及びE統括責任者は,ともに事務所の自席で火災発生を知り,第2ドックに急行して陸上の消火ホースを2甲板に送り込ませるなど,駆け付けた下船者や他の職員とともに消火支援に当たった。
 一方,通報を受けた消防局は,直ちに消防車を出動させ,15時40分ごろはまなすに到着したとき,一時中断されたタラップの取付け作業中で乗船することができなかったが,消火ホースをクレーンで吊り上げて船上に送り込むとともに,造船所がドックサイドに設けた消防指揮所において,機関室図面による火元接近経路等の説明を受けた。
 はまなすは,15時45分船尾タラップが架設され,消防署員が乗り込んで消火活動に当たり,火災は17時16分鎮圧され,18時27分鎮火が確認された。
 火災の結果,はまなすは発電機関室及び同室天井の排気管群貫通部を焼損し,協力会社社員が逆火で両手及び顔面に火傷を負って救急車で病院に搬送され,約2週間の入院加療が必要と診断された。
 はまなすは,その後,B造船所の懸命の復旧工事によって当初の予定通り,6月25日に完工引渡しされ,続く28日にN号が引き渡された。

5 本件後の処置
 A社は,東京本社及びB造船所に特別対策本部及び事故対策本部を設置し,火災翌日にはL部により,N号など所内の建造船について,火災発生要因に対する総点検を実施して不具合箇所の是正を図るとともに,原因究明と再発防止についての検討を開始し,客船火災以来,全社を挙げて取り組んできた安全管理に不十分な点があったとの認識から,防災対策の見直しと検討を行い,できるだけスケジュールが過密となることのないよう生産計画の見直しを行って工程管理の精度向上を図り,具体的防災対策には防火等に対する危機意識の低下を補うことができるよう,チェックリストを利用するなど工夫して以下のような再発防止策を施行した。
(1)試運転時に可燃性油系統において圧力確認または調整作業が必要と判断される不具合が発生した場合,担当課責任者は速やかに運転統括者に報告し,不具合処理の実施要領と手順を各部署責任者と協議のうえ決定し,さらにチェックリストの適用範囲を拡大してその後の不具合処理作業時にも適用する。
(2)発電機関,主機及びボイラ等,燃料油等を用い,高温の排気を伴う装置を起動させる前に,可燃性油系統のフランジ等から油類が漏洩飛散するおそれがあるものについては,飛散防止対策を施工するとともに,起動時に燃料油及び潤滑油管の飛散防止策が設計図の指示どおり施工されていることを,チェックリストで確認することとし,さらに,主機及び発電機関起動時にはL部長が同リストによる確認結果をもとに現場確認する。
(3)前示装置を起動させる前に,配管等の高温部には所定の防熱措置を施すとともに,起動時に防熱措置が設計図の指示どおり施工されていることをチェックリストで確認することとし,さらに,主機及び発電機関起動時にはL部長が同リストによる確認結果をもとに現場確認する。
(4)海上試運転時,乗船者全員に対する操練の実施を義務付け,消火隊による放水訓練を実施する。

(本件発生に至る事由)
1 耐圧試験が終了したのち日を改めて取り付けられた2号機ガスケットが当たり不良となっていたこと
2 加圧ポンプの性能が早期に低下していたが第2回予行運転まで気付く者がいなかったこと
3 B造船所が防火等に対する安全管理の徹底を図っていなかったこと
4 D部長がE統括責任者に対して予行運転中の防火等に対する安全管理について改めて指示していなかったこと
5 E統括責任者が機器の不具合状況等を確実に把握する措置をとっていなかったこと
6 F運転機関長が加圧ポンプの性能低下をE統括責任者に連絡していなかったこと
7 S課が加圧ポンプ不具合の対処方針をE統括責任者にもF運転機関長にも連絡していなかったこと
8 入渠作業が開始された段階で火災警報装置の電源が切られていたこと
9 G主任技師が燃料油圧力点検作業を入渠作業中の時間を利用して行うことを思い付いたこと
10 F運転機関長がG主任技師から点検作業の申出を受けたとき,E統括責任者に報告しないまま入渠作業中に行うことを許可したこと
11 F運転機関長が作業に監視要員を配置しなかったこと
12 G主任技師がF運転機関長に点検作業の作業内容を詳しく説明しなかったこと
13 G主任技師が事前に周囲の点検を行わなかったこと
14 点検作業中に燃料油機関入口圧力が2号機ガスケットが取り付けられて以来,初めて設定上限値近くまで上昇して同ガスケットに亀裂が生じて破損したこと
15 フランジ接合面の油飛散防止テープ及び補発機関排気管の一部防熱材がいずれも未施工であったことから,噴出したA重油が表面温度摂氏約280度の排気管露出部に降りかかってやがて着火したこと

(原因の考察)
 本件火災は,予行運転を終えて乾ドックへ入渠作業中,限られた手仕舞い要員だけが残った機関室において,運転中のディーゼル機関の側で行われた燃料油系統の圧力点検作業中に発生したもので,作業実施者の間には同作業が不安全作業に当たるとの認識はなかった。しかしながら,本船はまだ艤装途上の状態で機関室には排気管の防熱材未施工箇所などが残存しているおそれがあり,また,作業の点検内容からも火災発生の危険性に対する危機意識を働かせて考慮すれば,当然,不安全作業と見なされる作業であった。このように,本件は,発生事由に関わる関係者の誰かが火災発生に対する高い危機意識のもとで行動していれば,本件を回避できる機会は何度もあったと考えられる。
 指定海難関係人B造船所は,日本を代表する総合機械製造企業の地方事業所であり,平成14年10月に当時建造中であった世界最大級の客船で大規模な火災を発生させ,威信回復のため安全管理のあり方を見直して防火対策に万全を期していた。
 本件火災は,このような状況のもと,同所において建造中の大型カーフェリーにおいて再び発生した火災であり,企業の社会的地位,求められる安全管理の完成度の高さ,本件火災が社会に対して与えた影響の大きさを考えると,その企業責任を問わざるを得ない。
 従って,B造船所が防火等に対する安全管理の徹底が不十分で,現場職員の火災発生に対する危機意識が低下したまま,入渠作業中に不安全作業が実施され,同作業中,燃料油圧力が上昇したとき,当たり不良となっていた2号機ガスケットに亀裂が生じて破損し,フランジ接合面の油飛散防止テープ及び補発機関排気管の一部防熱材が未施工であったことから,噴出したA重油が摂氏約280度の排気管露出部に降りかかって着火したことは本件発生の原因となる。
 また,D部長がE統括責任者に対して予行運転中の防火等に対する安全管理について改めて指示していなかったこと,E統括責任者が機器の不具合状況等を確実に把握する措置をとっていなかったこと,F運転機関長がE統括責任者に報告することも監視要員を配置することもないまま燃料油圧力点検作業を入渠作業中に行うことを許可したこと及びG主任技師が事前に周囲の点検を行わないまま同点検作業を行ったことは,いずれも本件発生の原因となる。
 しかしながら,これら指定海難関係人個々人の所為は,スケジュールが過密ななか組織業務遂行の目的意識のもとで,互いに複合して本件発生の原因となったと捉えるのが相当で,それぞれに情状酌量の余地があり,また,耐圧試験が終了したのち日を改めて取り付けられた2号機ガスケットが当たり不良の状態であったなど予見の困難な発生事由の存在を考慮すると,払うべき注意を著しく怠ったとするまでもない。
 加圧ポンプ性能低下に早期に気付く者がいなかったこと,F運転機関長が同性能低下についてE統括責任者に連絡していなかったこと,S課が加圧ポンプ不具合の対処方針をE統括責任者にもF運転機関長にも連絡していなかったこと,火災警報装置の電源が早い段階で切られていたこと及びG主任技師が入渠作業中に点検を思い付いてF運転機関長に申出を行ったとき作業内容を詳しく説明しなかったことは,いずれも本件発生に至る過程で関与した事実ではあるが,本件結果と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これらは事故再発防止の観点から是正されるべき事項である。

(海難の原因)
 本件火災は,造船所で艤装中の最新鋭大型カーフェリーにおいて,海上試運転を終えて乾ドックへ入渠作業中,試運転で判明した主発電機原動機の燃料油系統不具合箇所の圧力点検作業が行われ,燃料配管のフランジガスケットが破断し,噴出したA重油が運転中の補助発電機原動機の排気集合管に降りかかり,同油が着火して周囲の可燃物が炎上したことによって発生したものである。
 造船所の防火等に対する安全管理が十分でなかったことは本件発生の原因となる。
 防火等に対する安全管理が十分でなかったのは,造船業者が防火等に対する安全管理の徹底が不十分で,現場職員の火災発生に対する危機意識が低下するまま,L部長が船統括責任者に対して海上試運転中の防火等に対する安全管理について改めて指示していなかったこと,船統括責任者が機器の不具合状況等を確実に把握する措置をとっていなかったこと,運転機関長が船統括責任者に報告することも監視要員を配置することもないまま燃料油圧力点検作業を入渠作業中に行うことを許可したこと及び主任技師が事前に周囲の点検を行わないまま同点検作業を実施したこととによるものである。
 
(指定海難関係人の所為)
 指定海難関係人A社B造船所が,大型客船や大型カーフェリー等の引渡しを間近に控えてスケジュールが過密な状況となった際,防火等に対する安全管理の徹底が不十分で,現場職員の火災発生に対する危機意識が低下していたことは本件発生の原因となる。
 指定海難関係人A社B造船所に対しては,本件後,直ちに火災発生要因に対する総点検を実施して不具合箇所の是正を図ったうえ,原因究明と再発防止について検討し,それまで全社を挙げて取り組んできた安全管理体制に不十分な点があったとの認識から,生産計画の見直しを行って作業工程の均一化を図るとともに,有効な防災対策を実施していることに徴し,勧告しない。
 また,D指定海難関係人がE指定海難関係人に対して海上試運転中の防火等に対する安全管理について改めて指示していなかったこと,E指定海難関係人が海上試運転中に機器の不具合状況等について確実に把握する措置をとっていなかったこと,F指定海難関係人がE指定海難関係人に報告することも監視要員を配置することもないまま点検作業を入渠作業中に行うことを許可したこと及びG指定海難関係人が事前に周囲の点検を行わないまま点検作業を行ったことは,いずれも本件発生の原因となる。
 しかしながら,これらD,E,F及びG各指定海難関係人の所為は互いに複合して本件発生の原因となったもので,それぞれの所為に対しては,勧告するまでもない。

 よって主文のとおり裁決する。





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