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平成16年長審第51号
件名

貨物船第三十住若丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年3月25日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(稲木秀邦)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第三十住若丸一等航海士 海技免許:五級海技士(航海)(履歴限定)

損害
船体中央部から船尾船底にかけて凹損と擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年6月7日04時00分
 長崎県相浦港南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三十住若丸
総トン数 498トン
全長 73.64メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第三十住若丸(以下「住若丸」という。)は,平成8年5月に進水した船尾船橋型貨物船で,船長B及びA受審人ほか4人が乗り組み,石灰石1,650トンを載せ,船首3.4メートル船尾4.9メートルの喫水をもって,同16年6月6日09時30分大分県津久見港を発し,長崎県相浦港に向かった。
 発航後,B船長は,相浦港までの船橋当直を自らを含むA受審人及び二等航海士の3人が単独で入直する4時間交替の3直制とし,発航操船に引き続いて船橋当直に当たり,その後,二等航海士,A受審人の順に交替で入直する体制をとって関門海峡から九州北西岸を西行した。
 翌7日02時00分A受審人は,津埼鼻灯台から300度(真方位,以下同じ。)2.5海里の地点で,二等航海士から当直を引き継いで,単独で船橋当直に当たり,陸岸沿いに航行して02時40分平戸瀬戸を通過したのち,03時45分牛ケ首灯台から320度1.0海里の地点において,針路を同灯台を左舷側に約500メートル離すよう155度に定め,機関を全速力前進にかけ,9.8ノットの対地速力で,自動操舵によって進行した。
 ところで,A受審人は,これまで夜間,相浦港には数え切れないほど入航経験があり,同港港界から西方1海里付近に餅米瀬灯浮標及び丸曽根灯浮標が南北に並んで存在することや,餅米瀬灯浮標の西方約0.5海里のところにオトナ瀬と称する浅礁が存在することも承知しており,平素,平戸瀬戸を経由して相浦港に入航する際,牛ケ首灯台に並航後,長崎県高島南岸に沿って東行したのち,針路目標とする丸曽根灯浮標を船首少し左に見ながらオトナ瀬を右舷側に離して航過していた。
 03時51分少し前A受審人は,牛ケ首灯台から250度500メートルの地点に達したとき,針路を丸曽根と餅米瀬間に向けて転針することとしたが,慣れた海域なので間違うことはないと思い,作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行わなかったので,左舷船首63度方に視認した餅米瀬灯浮標を丸曽根灯浮標と誤認したまま左転し,餅米瀬灯浮標を船首少し左に見る針路としたところ,オトナ瀬に向首進行する状況となったが,このことに気付かないまま095度の針路で続航した。
 03時58分A受審人は,牛ケ首灯台から101度1,760メートルの地点に達し,そのとき,オトナ瀬が前路600メートルまで迫る状況となっていたものの,依然船位の確認を行わなかったので,このことに気付かず,03時59分半ようやくいつもと様子が違うことに気付き,船位を確かめようとしたとき,魚群探知機でオトナ瀬の映像を認め,機関を停止回転としたが,04時00分住若丸は,牛ケ首灯台から100度1.3海里の地点に当たるオトナ瀬に,原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の北東風が吹き,潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果,住若丸は,船体中央部から船尾船底にかけて凹損と擦過傷を生じ,引船の来援を得て離礁した。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,長崎県相浦港南西方沖合において,同県高島南端から相浦港に向けて東行する際,船位の確認が不十分で,オトナ瀬と称する浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,長崎県相浦港南西方沖合において,同県高島南端から相浦港に向けて東行する場合,予定針路の東側にオトナ瀬の浅礁があることを知っていたのであるから,同浅礁に向首進行することのないよう,作動中のレーダーを活用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,慣れた海域なので間違うことはないと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,餅米瀬灯浮標を丸曽根灯浮標と誤認したまま,オトナ瀬に向首進行して乗揚を招き,船体中央部から船尾船底にかけて凹損と擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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