(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年8月10日06時30分
北海道礼文島北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第23魁漁丸 |
総トン数 |
19トン |
登録長 |
18.19メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
558キロワット |
3 事実の経過
第23魁漁丸(以下「魁漁丸」という。)は,いか一本つり漁業に従事する船尾船橋型のFRP製漁船で,A受審人(昭和50年2月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか2人が乗り組み,操業の目的で,船首0.6メートル船尾2.2メートルの喫水をもって,平成16年8月8日14時00分北海道稚内港を発し,礼文島北方沖合から同島西方沖合にかけての漁場で操業を行い,10日04時00分少し前いか1.2トンを漁獲したところで同港に向け帰途に就いた。
ところで,礼文島北端のスコトン岬から北方3海里に至る海域には,礁脈が拡延し,南から順に海驢(とど)島,平島,中ノ礁,水上岩である種島,沖ノ礁などの島や浅礁が存在しており,海図にはこれらの険礁状況が記載されていた。また中ノ礁南にある平島水道は,航路を示す標識がなく海潮流が強いため,主に地元の小型漁船が利用していた。
04時00分A受審人は,海驢島灯台から273度(真方位,以下同じ。)30.2海里の地点で,針路をGPSプロッタに入力した野寒布岬北方2海里ばかりの地点に向く091度に定め,機関を全速力前進にかけて12.0ノットの対地速力とし,自動操舵により進行した。
定針したときA受審人は,通航経験のない種島南方を航行することとなったが,数日前に礼文島北方沖合で操業中,種島南方を航行する地元漁船を見かけたことから,航行できる水深があるものと思い,所持していた海図により,種島周辺海域の水路調査を十分に行わなかったので,中ノ礁の存在に気付かず,同礁に向首したまま続航した。
06時00分A受審人は,当直交代のため昇橋した甲板員1人を見張りにつけ,引き続き自ら操船に当たって進行中,魁漁丸は,06時30分海驢島灯台から349度1.0海里の中ノ礁に,原針路原速力のまま乗り揚げた。
当時,天候は晴で風力1の北風が吹き,潮候は高潮時であった。
その後,魁漁丸は,機関室に浸水し,右舷方に横転して水船となり,乗組員は地元の漁船に救助され,船体は来援した引船によって北海道船泊港に引き付けられた。
乗揚の結果,魁漁丸の船尾船底部,舵及び推進器翼に曲損を,機関に濡損などを生じた。
(原因)
本件乗揚は,北海道礼文島西方沖合において,操業を終えて帰航する際,水路調査が不十分で,浅礁に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,北海道礼文島西方沖合において,操業を終えて帰航する際,通航経験のない水上岩周辺海域を航行することとなった場合,所持していた海図により,水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかし,同人は,同海域を航行する地元漁船を見かけたことから,航行できる水深があるものと思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,水上岩周辺海域にある浅礁の存在に気付かないまま進行して同礁への乗揚を招き,魁漁丸の船尾船底部,舵及び推進器翼に曲損を,機関に濡損などを生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。