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平成16年第二審第11号
件名

貨物船竜良丸貨物船第十一共同丸衝突事件[原審・広島]

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年3月9日

審判庁区分
高等海難審判庁(上野延之,雲林院信行,上中拓治,井上 卓,坂爪 靖)

理事官
長浜義昭

受審人
A 職名:竜良丸船長 海技免許:四級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:竜良丸一等航海士 海技免許:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
C 職名:第十一共同丸船長 海技免許:五級海技士(航海)

第二審請求者
理事官 横須賀勇一

損害
竜良丸・・・左舷船首外板及びバルバスバウに亀裂を伴う凹損
第十一共同丸・・・左舷側外板に破口を伴う凹損等

原因
竜良丸・・・狭視界時の航法(信号,速力など)不遵守
第十一共同丸・・・狭視界時の航法(信号,速力など)不遵守

主文

 本件衝突は,竜良丸が,視界制限状態における運航が適切でなかったことと,第十一共同丸が,視界制限状態における運航が適切でなかったこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Cを戒告する。
 
理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月17日02時35分
 瀬戸内海西部祝島沖合
 (北緯33度45.4分 東経131度57.0分)

2 船舶の要目
(1)要目
船種船名 貨物船竜良丸 貨物船第十一共同丸
総トン数 699トン 198トン
全長 70.00メートル 54.12メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット 478キロワット
(2)設備及び性能等
ア 竜良丸
 竜良丸は,平成5年1月に進水した限定沿海区域を航行区域とする船首楼及び船尾楼を備えた一層甲板型鋼製スラグ微粉運搬船で,山口県宇部港等から瀬戸内海各港や長崎港等にセメントなどの原料輸送に従事していた。
 船橋は船尾楼前端付近に配置され,船首端から船橋までの距離は54.0メートルで,船橋前方に貨物倉4個が設けられていた。
 操舵室には,前面から75センチメートル後方中央にコンソールが設けられ,右舷側から順に主機遠隔操縦装置,同表示盤,ジャイロ組込型操舵装置及びレーダー2台が配列され,左舷側後部にGPSプロッターが備えられていた。
 海上試運転成績書によれば,12.651ノットの全速力前進中に舵角35度をとって左旋回したとき,最大縦距,最大横距及び360度旋回に要する時間は,206メートル,240メートル及び2分57.5秒で,同右旋回したときは,205メートル,220メートル及び2分56.7秒であった。また,12.651ノットの全速力前進中,全速力後進発令から船体停止までに要する時間及び航走距離は,1分14.4秒及び285メートルであった。
イ 第十一共同丸
 第十一共同丸(以下「共同丸」という。)は,平成元年10月に進水した限定沿海区域を航行区域とする船尾船橋型の鋼製貨物船で,主に関門港と名古屋港,愛知県衣浦港,三河港等との間で鋼材などの輸送に従事していた。
 操舵室には,前部中央にジャイロ組込型操舵スタンド,その右舷側にレーダー,主機遠隔操縦装置が設けられ,同左舷側にGPSプロッターが備えられていた。
 共同丸は,シリングラダーを備え,海上試運転成績書によれば,11.04ノットの全速力前進中に舵角35度をとって左旋回したとき,旋回径及び360度旋回に要する時間は,80メートル及び2分20秒,同右旋回したとき,80メートル及び2分21秒で,舵角70度をとって左旋回したとき,同径及び同時間は,60メートル及び2分29秒,同右旋回したときは,60メートル及び2分22秒であった。また,11.04ノットの全速力前進中,全速力後進発令から船体停止までに要する時間は50秒であった。

3 事実の経過
 竜良丸は,A及びB両受審人ほか3人が乗り組み,特殊高炉セメント1,086トンを積載し,船首3.18メートル船尾4.41メートルの喫水をもって,平成14年5月16日10時30分兵庫県東播磨港を発し,福岡県苅田港に向かった。
 A受審人は,船橋当直(以下「当直」という。)を自らとB受審人による単独4時間交替制で行い,19時00分当直に就き,瀬戸内海を西行し,22時35分クダコ水道北口に差し掛かったころ,B受審人が昇橋してきたので,早めに当直を交替することとした。
 A受審人は,B受審人と当直を交替する際,同人の当直中に通航する予定の,祝島南岸沖合の祝島南西方灯浮標東側に推薦航路線が設けられ,船舶交通の輻輳する海域で,東行する船舶と行き会うことが予想されたうえ,季節的に霧の発生しやすいところであることを知っていたが,B受審人とは30年ほど一緒に乗船して指導を受け,船長の経験もあり信頼していたので,同人に任せておいても大丈夫と思い,視界制限状態となったときには報告するよう指示することなく,船位や速力などを引き継いで降橋した。
 B受審人は,単独の当直に就き,クダコ水道及び平郡水道を西行し,翌17日02時06分ホウジロ灯台から046度(真方位,以下同じ。)2.3海里の地点で,針路を263度に定め,機関を全速力前進にかけて10.6ノットの対地速力(以下「速力」という。)で,法定灯火を表示して自動操舵によって進行した。
 02時23分少し前B受審人は,祝島東端南方沖合の,ホウジロ灯台から315度1.7海里の地点に達したとき,針路を祝島南西方灯浮標を船首方少し左方に見る275度に転じ,次の針路目標である周防灘航路第5号灯浮標の映像を確認しようと,12海里レンジとして前方が約15海里まで映るオフセンターにしたレーダー画面を見たところ,同灯浮標は確認できなかったものの,右舷船首8度4.0海里に共同丸の映像を初めて認め,同映像を監視して同船が祝島南岸沖合を東行する反航船であることを知った。
 02時25分B受審人は,船首方約4.0海里の同航船の船尾灯が見え隠れするようになり,共同丸の映像が右舷船首9度3.2海里に接近したものの,同船の灯火を視認することができず,その後ほどなく同航船の船尾灯も見えなくなったことから,前方に霧堤が存在することを知り,視界制限状態にある水域の付近を航行することとなったが,このあたりの気象や航路の事情については,海上経験の長い自分の方がA受審人より詳しいので,同人に知らせるまでもないものと思い,A受審人に報告せず,かつ,霧中信号を行うことも,安全な速力とすることもなく,肉眼とレーダーによる見張りを行いながら続航した。
 02時28分ごろB受審人は,霧堤に入って視界が急激に悪化し,視程が約500メートルに狭められたが,依然A受審人に報告しないで,霧中信号を行わず,安全な速力としないまま進行した。
 02時28分半B受審人は,ホウジロ灯台から300度2.6海里の地点に達したとき,共同丸の映像が右舷船首11度2.0海里となり,その後同船と著しく接近することを避けることができない状況となったことを認めたが,同映像がレーダーの船首輝線よりも右側にあるので互に右舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めることもなく続航した。
 02時30分B受審人は,ホウジロ灯台から297度2.8海里の地点に達したとき,霧が濃くなって,更に視界が狭められたので,機関を9.6ノットの半速力に減じ,間もなく共同丸の灯火が見えてくるものと考え,レーダーを離れて前方を注視して進行した。
 02時35分少し前B受審人は,右舷前方に共同丸の居住区等の明かりを視認したものの,すぐ見えなくなり,02時35分わずか前GPSで船位を確認して視線を前方に向けたとき,右舷船首至近に同船の紅灯を認め,慌てて手動操舵に切り換えて右舵一杯とし,機関を停止したが,効なく,02時35分ホウジロ灯台から293度3.6海里の地点において,竜良丸は,原針路,原速力のまま,その船首が共同丸の左舷前部に前方から40度の角度で衝突した。
 当時,天候は霧で風はほとんどなく,視程は約100メートルであった。
 A受審人は,自室で休息中衝撃を感じ,昇橋して衝突したことを知り,事後の措置にあたった。
 また,共同丸は,C受審人ほか1人が乗り組み,ステンレス屑364トンを積載し,船首2.4メートル船尾3.4メートルの喫水をもって,同月16日20時10分関門港を発し,衣浦港に向かった。
 発航後,C受審人は,単独の当直に就いて瀬戸内海を東行し,翌17日00時00分姫島灯台の西北西方約15.5海里の地点で,6時間交替制として当直を機関長と交替し,発航前携帯電話で知り合いの船長から祝島付近の霧情報を得ていたことから,視界が悪くなったら起こすよう指示し,操舵室後部の寝台で休息した。
 01時30分C受審人は,祝島西方約11海里の,姫島灯台から023度4.4海里の地点で,機関長から視界が悪化した旨の報告を受け,霧のため視界が著しく制限され視程が約100メートルの状況であったので,機関長を肉眼による見張りにあたらせ,自ら操船し,針路を100度に定め,機関を10.5ノットの全速力前進にかけ,霧中信号を行うことも,安全な速力とすることもなく,レーダーによる見張りを行いながら,法定灯火を表示して自動操舵によって進行した。
 02時17分C受審人は,ホウジロ灯台から291度6.6海里の地点に達したとき,6海里レンジとしたレーダーにより,ほぼ正船首6.0海里に竜良丸の映像を初めて認め,同映像を監視して同船が祝島南岸沖合を西行する反航船であることを知り,同船と左舷を対して航過するつもりで,同映像がレーダーの船首輝線の左側になるよう5度右転して針路を105度に転じ,次いで02時27分同映像がほぼ正船首2.6海里に接近したとき,更に5度右転して110度の針路として続航した。
 02時28分半C受審人は,ホウジロ灯台から294度4.6海里の地点に達したとき,竜良丸の映像が左舷船首4度2.0海里となり,その後同船と著しく接近することを避けることができない状況となったことを認めたが,そのうち同船も右転して互いに左舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めることもなく進行した。
 02時29分C受審人は,竜良丸の映像が左舷船首4度1.8海里に接近したとき,針路を115度に転じ,02時30分同映像が1.5海里に接近したところで,機関を9.0ノットの半速力に減じ,02時31分同映像が左舷船首8度1.2海里となったとき,針路を120度に,02時33分同映像が1,050メートルに接近したとき,125度にそれぞれ転じ,同映像をレーダーの船首輝線の左側に見るよう,小刻みな右転を繰り返しながら続航した。
 02時34分C受審人は,竜良丸の映像が左舷前方500メートルに接近したとき,衝突の危険を感じ,手動操舵に切り換えて機関を中立とし,同船の灯火が見えてくるものと,機関長と左舷前方を注視していたところ,02時35分わずか前左舷船首至近に同船の白灯2個を認め,右舵10度をとり,機関を半速力後進としたが,効なく,共同丸は,船首が135度を向いて約5.0ノットの速力で,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,竜良丸は,左舷船首外板及びバルバスバウに亀裂を伴う凹損を生じ,共同丸は,左舷側外板に破口を伴う凹損を生じたほか,左舷ビルジキールが脱落したが,のちいずれも修理された。

(航法の適用)
 本件は,霧のため視界制限状態となった瀬戸内海西部の祝島沖合において,西行中の竜良丸と東行中の共同丸とが衝突したものであり,両船は,互いに他の船舶の視野の内になかったのであるから,海上衝突予防法第19条視界制限状態における船舶の航法が適用される。

(本件発生に至る事由)
1 竜良丸
(1)A受審人が,B受審人に対し,視界制限状態となったとき,報告するよう指示しなかったこと
(2)B受審人が,視界制限状態となったことを船長に報告しなかったこと
(3)竜良丸が,霧中信号を行わなかったこと
(4)竜良丸が,安全な速力としなかったこと
(5)B受審人が,レーダーで前路に認めた共同丸と著しく接近することを避けることができない状況となったとき,同船映像がレーダーの船首輝線よりも右側にあるので互いに右舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかったこと

2 共同丸
(1)共同丸が,霧中信号を行わなかったこと
(2)共同丸が,安全な速力としなかったこと
(3)C受審人が,レーダーで前路に認めた竜良丸と著しく接近することを避けることができない状況となったとき,そのうち同船も右転して互いに左舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかったこと
(4)C受審人が,小刻みな右転を繰り返したこと

3 気象等
(1)衝突地点付近が霧のため視界制限状態となっていたこと
(2)衝突地点付近が推薦航路線の設けられた船舶交通の輻輳する海域であったこと

(原因の考察)
 竜良丸が,霧のため視界制限状態となった祝島沖合を西行中,霧中信号を行い,安全な速力とし,レーダーで前路に認めた共同丸と著しく接近することを避けることができない状況となったとき,針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,また,必要に応じて行きあしを止めていたなら,本件は発生していなかったものと認められる。
 したがって,竜良丸が,霧中信号を行わなかったこと,安全な速力としなかったこと及びB受審人が,レーダーで前路に認めた共同丸と著しく接近することを避けることができない状況となったとき,同船映像がレーダーの船首輝線よりも右側にあるので互いに右舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかったことは,本件発生の原因となる。
 また,A受審人が,当直交替時,B受審人に対し,視界制限状態となったときの報告について指示していれば,同人から同報告を受けることができ,自ら操船を指揮して視界制限時の措置が適切にとれたので,本件の発生は防止できたものと認められる。
 したがって,A受審人が,B受審人に対し,視界制限状態となったとき,報告するよう指示しなかったこと及びB受審人が,視界制限状態となったことを船長に報告しなかったことは,本件発生の原因となる。
 一方,共同丸が,霧のため視界制限状態となった祝島沖合を東行中,霧中信号を行い,安全な速力とし,レーダーで前路に認めた竜良丸と著しく接近することを避けることができない状況となったとき,針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,また,必要に応じて行きあしを止めていたなら,本件は発生していなかったものと認められる。
 したがって,共同丸が,霧中信号を行わなかったこと,安全な速力としなかったこと及びC受審人が,レーダーで前路に認めた竜良丸と著しく接近することを避けることができない状況となったとき,そのうち同船も右転して互いに左舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかったことは,本件発生の原因となる。
 C受審人が,小刻みな右転を繰り返したことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは海難防止の観点から是正されるべき事項である。
 衝突地点付近が霧のため視界制限状態となっていたこと及び同地点付近が推薦航路線の設けられた船舶交通の輻輳する海域であったことは,航行に支障を与える特別な状況とはいえず,本件発生の原因とするまでもない。

(海難の原因)
 本件衝突は,夜間,霧のため視界が制限された瀬戸内海西部の祝島沖合において,西行する竜良丸が,霧中信号を行うことも,安全な速力とすることもせず,レーダーで前路に認めた共同丸と著しく接近することを避けることができない状況となった際,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかったことと,東行する共同丸が,霧中信号を行うことも,安全な速力とすることもせず,レーダーで前路に認めた竜良丸と著しく接近することを避けることができない状況となった際,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかったこととによって発生したものである。
 竜良丸の運航が適切でなかったのは,船長が,船橋当直者に対して視界制限状態となったときの報告について指示をしなかったことと,船橋当直者が,視界制限状態となったことを船長に報告しなかったこと及び視界制限時の措置が適切でなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,瀬戸内海西部を祝島沖合に向けて西行中,当直を一等航海士と交替する場合,祝島南岸沖合が推薦航路線の設けられた船舶交通の輻輳する海域で,東行する船舶と行き会うことが予想されたうえ,季節的に霧の発生しやすいところであったから,視界制限時には自ら操船の指揮が執れるよう,同航海士に対して視界制限状態となったときには報告するよう指示すべき注意義務があった。しかるに,同人は,一等航海士とは30年ほど一緒に乗船して指導を受け,船長の経験もあり信頼していたので,同人に任せておいても大丈夫と思い,視界制限状態となったときには報告するよう指示しなかった職務上の過失により,同航海士から視界制限状態となったときの報告を受けられず,自ら操船の指揮を執ることができないまま進行して共同丸との衝突を招き,竜良丸の左舷船首外板及びバルバスバウに亀裂を伴う凹損を生じさせ,共同丸の左舷側外板に破口を伴う凹損を生じさせたほか,同船の左舷ビルジキールを脱落させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は,夜間,霧のため視界が制限された瀬戸内海西部の祝島沖合を西行中,レーダーで前路に認めた共同丸と著しく接近することを避けることができない状況となったことを認めた場合,針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,また,必要に応じて行きあしを止めるべき注意義務があった。しかるに,同人は,同船映像がレーダーの船首輝線よりも右側にあるので互いに右舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかった職務上の過失により,共同丸との衝突を招き,両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 C受審人は,夜間,霧のため視界が制限された瀬戸内海西部の祝島沖合を東行中,レーダーで前路に認めた竜良丸と著しく接近することを避けることができない状況となったことを認めた場合,針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,また,必要に応じて行きあしを止めるべき注意義務があった。しかるに,同人は,そのうち同船も右転して互いに左舷を対して航過できるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを止めなかった職務上の過失により,竜良丸との衝突を招き,両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のC受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。

(参考)原審裁決主文 平成16年3月26日広審言渡
 本件衝突は,第一共同丸が,視界制限状態における運航が適切でなかったことによって発生したが,竜良丸が,視界制限状態における運航が適切でなかったことも一因をなすものである。
 受審人Cの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。 


参考図
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