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ペアレント・メンター
参考資料
資料提供:ひょうご自閉症・発達障害支援センター編纂
「自閉症ライフノート」
 
授産施設の一日(知的障害者通所授産施設 はぐるまの家)
1. 知的障害者通所授産施設「加古川はぐるまの家」
 加古川はぐるまの家は昭和55年4月、地元の加古川ロータリークラブ25周年記念の社会奉仕活動として誕生したユニークな経緯の施設です。以来、充実した大人の暮らしを目指して「働く環境」を整え、その活動の延長線上にある「就労による社会参加」を推進してきました。
 現在、利用定員は50名で、17才から39才までの人たちが利用しており、利用者の平均年齢は27才、平均在所年数は5.11年となっています。
 知的障害者の施設ですから皆さん療育手帳を持っていますが、重複障害の方もいます。また自閉症若しくは自閉的傾向であると思われる方もたくさん利用されています。
2. 働く力の育成と環境づくり
 利用者の多くは、これまでの「出来ないこと」の訓練では自分に自信が持てず施設にたどり着いています。また体験学習が必要にもかかわらず、「自分でする」という機会がなかなか得られません。私たちはそんな利用者の自発的な意欲を引き出す環境をつくるため、以下のことに心掛けています。
(1)利用者の特性を活かす作業種を開拓する(人に仕事を合わす)
(2)作業の効率化や円滑化について創意工夫をする(補助具の開発)→ジグを削除
(3)仕事量を120パーセント確保する(伸びる力を保証する)
(4)「労働・賃金」そして「暮らす」ことの関係を具体的な体験を通して伝える
(5)他者と比較した評価ではなく、本人の精一杯の生き方を「認め励ます」プラスの声掛けを心掛ける
 このような働く環境(個別支援計画を基に1日6時間しっかり働く)の中から利用者は「自分にも力があること」を知り、自信を持ち始めます。自信が持てれば不得手な部分に挑戦する意欲も起こり、結果的に生活全般の意欲へと拡大していくのです。そして適職を見つけ、諸制度を活用しながら自分の居場所のある会社へ支援を受けながら巣立っていきます。
 しかし、施設という限られた環境の中だけではうまく適応出来ない、より重い障害を持つ利用者がたくさんいます。そこで私たちはその人たちの特性を活かす活躍の場を事業所の中に借りて、直接、会社で働く体験を積み重ねる訓練(企業内授産)にも取り組んできました。
 事業所は魔法使い。個々の特性を活かす様々な仕事がいっぱいあり、利用者の能力開発のチャンスがあります。安全に細心の注意をしながら職員が付き添い共に働くことで、事業所も利用者もスムーズに適応することができ、着実に成果を上げています。
―Aさんの場合―
 作業室ではどの仕事にも適応出来なかったAさん。思い切って企業内授産の洗瓶の会社で働くことにチャレンジ。仕事は、ラインに流れてくるケースから2種類の瓶を抜きとり整理用ケースに並べ、そのケースが一杯になるとパレットに置くという作業です。工程をパターン化することで自分の役割がわかりやすくなり、見事な手つきで瓶整理をこなして達成感を満喫しています。
3. 加古川はぐるまの家が日々大切にしていること
 授産施設は働く場所ですが、一般社会では仕事をする場所という認識が乏しく、施設にいる障害者は働けないという偏見もあります。そんな中にあって利用者のことを正しく理解してもらうためには、まず職員の努力が必要です。そして、私たちは事業所から受託した仕事を(カメラ課、紙器加工課、タオル課、組み立て課、企業内授産3カ所)以下の2つのことを特に意識して取り組んでいます。
(1)施設という名前に甘えず「100点満点のよい仕事をすること」
(2)品質、納期、工賃まで「施設」でも「事業所」でも何ら区別はないというプライド
 このような積み重ねが「信用」を生み、経済不況の中にあってもその「信用」が仕事を生み出し、働く力として、また労動力として地域社会から認知されるようになりました。
 一方、授産施設では授産活動で得た収入から必要経費を控除したすべてを「作業賃金」として利用者に還元しています。全国平均の作業賃金は月額1万円程度ですが、加古川はぐるまの家では3万5干円程度支給しています。
4. 加古川はぐるまの家の一日
8:45 ・各自公共交通機関等を利用して出勤します
(作業服に着替えて準備)
9:00 ・朝礼、ラジオ体操
9:10 ・作業開始、作業班毎にミーティング(個々の作業の確認)
(1)視覚で情報を得ることが得意な利用者には文字や絵や写真等を使って1日の予定が見通せるようにスケジュール表で確認する
(2)仕事を教える前に課題分析をして「いつも決まった手順でパターン化」して伝える
(3)周りの刺激が気にならないような空間をつくる
12:00 ・昼食・休憩(休憩時間の過ごし方や居場所を伝える)
(1)トイレ掃除当番等は場所の確認、掃除の手順を指示書で伝える
13:00 ・作業開始、作業班毎にミーティング(個々の作業の確認)
14:15 ・休憩時間(トイレ休憩、ティータイム)
14:30 ・作業再開
16:00 ・作業終了(掃除、帰宅準備)
(1)各自公共交通機関等を利用して帰宅
(2)交通ダイヤの変更や工事等による様々な変更は出来るだけ早く情報を収集して個々に応じた伝達方法で伝える
5. 授産施設の今後・・・
 今、厚生労働省では「今後の障害者保健福祉施策について(グランドデザイン(案))」、が出され、障害者福祉の機能再編が検討されています。今後、授産施設がどう位置づけられるかはまだわかりません。しかし、どんな大改革があり、どんな時代がこようとも「加古川はぐるまの家」は、今後も働くことを大切に目の前にいる利用者が望む「地域の中で普通に働き、暮らす」ことを支援し続けていきたいと思います。
 
入所施設の一日(自閉症の人たちを中心とした知的障害者入所更生施設)
1. 知的障害者入所更生施設「あかりの家」
 あかりの家は、兵庫県自閉症児者親の会を母体として結成された協力者会が中心となり、自閉症の人たちの入所施設設立に向けて5年以上に渡って資金調達、行政や地域社会に働きかけを行って、昭和61年4月に高砂市北浜町に開設されました。
 以来、自閉症という障害をもつ人たちを中心とした知的障害者の居住施設として、自閉症施設としての専門性を発揮しながら、利用している人たち一人ひとりの特性に応じた援助を行いそれぞれの自立を目指しています。また、その専門性を地域に提供しながら、地域福祉の拠点の役割を果たしたいと考えています。
 地域の中でいい生活習慣と主体的な生活を身につけながら、それぞれの自立を目指して生活しています。
 
2. 生活
 いい生活習慣を身につけて、自分自身の生活ができていくように援助しています。
 
【あかりの家の一日】
 
3. 作業
 障害の軽重に係わらず、地域の協力を得て利用者全員が生産的作業に従事しています。自閉症の人たちは障害が重くても、作業種目や作業環境・関係の工夫により作業が可能となり、行動障害の軽減・社会的ルールの獲得・地域との接点等、作業によって安定的な日中活動が得られます。
 作業の工夫として、作業空間をわかりやすく働きやすい環境設定にして主体的な動きをつくる。作業工程や役割を固定し技術の向上を狙うと同時に手順行程の理解を促す。生活する場と作業する場を空間的に分けている。個々に合った作業内容の試行。労働・報酬・消費のシステムを本人が理解しやすい形にする等、行っています。
 現在、園外作業は、割り箸製造会社・ケーブル解体・パチンコ台解体を、園内作業は、パチンコ台解体・割り箸袋詰め・さをり織り・さき織りを行っています。
 
4. クラブ活動
 プロの先生に指導していただきながら利用者の個性や感性が活かされる場をつくっています。アートクラブ・華道クラブ・音楽クラブ・料理クラブ・園芸クラブ・陸上クラブがあります。
 
5. 旅行・外出
 2〜3人のグループによる小旅行や、みんなで参加する親子一泊旅行・日用品の買い物や外食、喫茶店に行くなど余暇を楽しみながら社会生活の体験の場としています。
 
6. 地域とのふれあい
 地域行事に積極的に参加するとともに、「あかりまつり」の行事に来ていただく等、地域との交流を大切にしています。
 
7. 年間行事・社会参加活動
1月 お餅つき・2月 播淡ゆうあい文化祭・5月 播淡ゆうあいスポーツ大会
6月 播淡親善運動会・8月 あかり祭り・10月 親子一泊旅行・高砂マラソン
11月 ナイスハートバザール・12月 クリスマス会があります。
 
8. 地域福祉の拠点として
 より多くの人に、自閉症や知的に障害をもつ人たちへの理解を深めてもらうために、ボランティアや実習生の受け入れを積極的に行っています。また地域福祉の拠点として、専門性の提供や研修会の開催、障害児(者)地域療育等支援事業・短期入所の事業を通して、障害をもつ人たちの地域生活をバックアップしています。
 
グループホーム(社会福祉法人あかりの家・グループホーム 希望山荘日笠)
 希望山荘日笠は、平成14年10月高砂市曽根町に開設された、あかりの家法人下のグループホームです。二階建て家屋で、自閉症の人1名と知的障害の人4名が家賃や食費や光熱費などを自ら負担しながら、地域社会の中で世話人と一緒に共同生活しています。
 「地域の中で生活したい」「普通の暮らしがしたい」「自立をしたい」希望山荘日笠は、そういう願いを実現するために誕生しました。
 グループホームは、5人の利用者の家であり生活の場です。昼間仕事をして、家に帰れば、のんびりとくつろげるアットホームな雰囲気を大切にしています。
 
毎日の活動
(1)生活
 利用者は一人の社会人として、自分の責任において自由な生活を送ることを基本にしています。その中で、利用者が援助を必要とする部分について、世話人やバックアップ施設(あかりの家)が支援していきます。世話人は男女1名ずついますのでそれぞれの視点できめ細かな支援を行っています。
 共同生活なので、生活のルールや食事の後片付けなどの役割はありますが、利用者が主体となって、それぞれの得意な分野で役割を果たしています。
 リビングにひと月の予定表を掲示して一人ひとりの予定がわかりやすく、また各自が生活に見通しを持てる工夫をしています。
 
(2)日中活動
 会社や授産施設に通って仕事をしています。朝出掛けて夕方、希望山荘日笠に帰って来ます。
 
(3)休日や自由時間
 自分の趣味や気に入った楽しみに、また散髪や買い物、外食など、それぞれが有意義に過ごしています。また週末に帰省して自宅で家族と過ごしている人もいます。
 
バックアップ施設(あかりの家)として
 グループホーム担当の支援員がいます。世話人と連携をとりながら、利用者の生活が円滑に行われるよう支援にあたっています。また世話人の育成や運営面・会計の管理なども行います。


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