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第2章 船舶安全法及び関係規則(抜粋)
2・1 船舶安全法の概要
2・1・1 目的
 船舶は、海上において航行の用に供される交通具であることから、一度港を離れると長期間にわたり陸上から孤立して行動することとなり、気象、海象の変化に伴う特別の危険に遭遇することも多く、陸上のそれに比し一段と安全の確保のための措置を図る必要がある。
 海上における人命の安全を確保するためには、船舶の構造が堪航性(海上において通常予想される危険に耐え、安全に航行することができる凌波性、復原性、操縦性等の性能を有している状態をいう。)を保持するに十分なものであること、万一非常の危険に遭遇した場合でも、人命の安全を保持することができるだけの諸設備が船舶に施設されていること及び船舶に搭載する危険物等の積付方法等航行上の危険防止について特別の考慮を払う必要がある。
 このため船舶安全法第1条では「日本船舶は本法に依り其の堪航性を保持し且人命の安全を保持するに必要なる施設を為すに非ざれば之を航行の用に供することを得ず」と規定している。
 つまり日本船舶は航行中における十分な堪航性と人命の安全の保持に必要な施設をしなければ航行の用に供してはならないとしているのである。更に法第28条では、船舶による危険物等の運送及び航行上の危険防止に関する事項について規定している。
 この法第1条及び第28条が船舶安全法の精神であり法の目的である。
(注)法と略してあるのは船舶安全法をいう。
 
2・1・2 概要
 船舶安全法は以上の目的を達成するため船舶所有者等が遵守すべき次に掲げる事項について規定している。
(1)船舶は次に掲げる事項について命令で定める技術基準に従って施設しなければならないこと。
(法2条、第1項)
一. 船体 二. 機関 三. 帆装 四. 排水設備
五. 操舵,繋船及び揚錨の設備 六. 救命及び消防の設備
七. 居住設備 八. 衛生設備 九. 航海用具
十. 危険物其の他の特殊貨物の積附設備
十一. 荷役其の他の作業の設備
十二. 電気設備
十三. 前各号の外国土交通大臣において特に定むる事項
(説明)
 航海用レーダー、電気設備等について命令で定める技術基準は次のとおりである。
(1)航海用レーダー及び自動衝突予防援助装置等
(航海用具に該当する。)
 船舶設備規程
(2)電気設備
 船舶設備規程(小型船舶については小型船舶安全規則、小型漁船については、小型漁船安全規則)
(2)船舶所有者は前(1)の事項、満載吃水線、及び無線電信等について国(小型船舶については日本小型船舶検査機構)の検査を受けなければならないこと(法第5条、第6号)
(3)船体、機関、帆装、排水設備、操舵、繋船及び揚錨の設備、危険物その他の特殊貨物の積附設備、荷役その他の作業の設備、電気設備、消防設備、脱出設備、焼却設備、コンテナ設備、損傷制御図、火災制御図、タンカーの損傷時復原性及び満載吃水線に関する事項については、日本海事協会の検査を受け、その船級を有している間は旅客船を除き管海官庁の検査を受け、これに合格したものと見做されること。(法第8条)
(4)管海官庁(小型船舶については日本小型船舶検査機構)は定期検査に合格した船舶に対しては航行区域(漁船については従業制限)、最大搭載人員、制限汽圧及び満載吃水線の位置を定め船舶検査証書及び船舶検査済票(小型船舶に限る。)を交付すること。(法第9条)
 
2・2 船舶設備規程
 船舶設備規程及び告示については、航海用レーダー、電子プロッティング装置(EPA)、自動物標追跡装置(ATA)、自動衝突予防援助装置(ARPA)等レーダー関連機器及び新たに設備規程に規定されることとなった船舶自動識別装置(AIS)、航海情報記録装置(VDR)、衛星航法装置(GPS)等の装置並びにAIS・VDRへの入力信号機器等を掲載する。
 
○国土交通省令第75号
 船舶安全法第2条第1項 〜略〜 の規定に基づき、船舶設備規程等の一部を改正する省令を次のように定める。
平成14年6月25日
[船舶設備規程等の一部を改正する省令]
附則 この省令は、平成14年7月1日から施行する。
 
○国土交通省告示511号
 船舶設備規程(昭和9年逓信省令第6号)第3編第2章 〜略〜 の規定に基づき、船舶の操舵(だ)の設備の基準を定める告示を次のように定める。
平成14年6月25日
[操舵(だ)の設備の基準を定める告示]
附則 この告示は、平成14年7月1日から施行する。
 
第二章 操舵(だ)の設備
 
(自動操舵(だ)装置)
第144条 総トン数10,000トン以上の船舶には、機能等について告示*で定める要件に適合する自動操舵(だ)装置を備えなければならない。
*:告示
(自動操舵(だ)装置)
第12条 規程第144条の告示で定める要件は次のいずれかのとおりとする。
(1)航跡制御方式を採用する自動操舵(だ)装置は、次に掲げる要件に適合するものであること。
イ あらかじめ設定された位置を自動的に通過することができるものであること。
ロ あらかじめ設定した旋回半径又は回頭角速度のいずれかに基づき、回頭できるものであること。
ハ 船舶の動揺等により不要な操舵(だ)を行わないものであること。
ニ 針路を変更することを事前に表示することができ、かつ、針路を変更するときに警報を発することができるものであること。
ホ 一時的に手動操舵(だ)に切り替えることができるものであること。
ヘ 作動中であることを表示できるものであること。
ト その機能に障害を生じるおそれのある給電の停止又は減少があった場合に、可視可聴の警報を発するもの(可聴警報を一時的に停止することができるものに限る。)であること。
チ 船舶の位置及び針路があらかじめ設定された値を超えて変化した場合に、可視可聴の警報を発するものであること。
リ 船首方位に係る情報その他の必要な情報をジャイロコンパス、船速距離計その他の必要な航海用具等から伝達することができるものであること。
ヌ 必要な情報及びその伝達に係る状態について表示することができ、かつ、警報を発することができるものであること。
ル 航海用具の基準を定める告示(平成14年国土交通省告示第512号)*1第6条第(6)号及び第(8)号から第(14)号まで並びに*2第8条第1項第(2)号に掲げる要件
*1:第5節(ナブテックス受信機)
第6条 規程146条の10の2の告示で定める要件は、次のとおりとする。
(6)取扱い及び保守に関する説明書を備え付けたものであること。
(8)磁気コンパスに対する最小安全距離を表示したものであること。
(9)電磁的干渉により他の設備の機能に障害を与え、又は他の設備からの電磁的干渉によりその機能に障害が生じることを防止するための措置が講じられているものであること。
(10)機械的雑音は、船舶の安全性に係る可聴音の聴取を妨げない程度に小さいものであること。
(11)通常予想される電源の電圧又は周波数の変動によりその機能に障害を生じないものであること。
(12)渦電流、渦電圧及び電源極性の逆転から装置を保護するための措置が講じられているものであること。
(13)船舶の航行中における振動又は湿度若しくは温度の変化によりその性能に支障を生じないものであること。
(14)2以上の電源から給電されるものにあっては、電源の切り替えを速やかに行うための措置が講じられているものであること。
*2:第7節(航海用レーダー)
第8条 規程146条の12の告示で定める要件は、次のとおりとする。
(2)表示器は、他の設備によりその使用が妨げられるおそれのない船橋の適当な場所に設置されていること。
 
(2)針路制御方式を採用する自動操舵(だ)装置は、次に掲げる要件に適合するものであること。
イ 最小限の操作であらかじめ設定した針路を自動的に保持できるものであること。
ロ 舵(だ)角をあらかじめ制限できるものであること。
ハ 舵(だ)角をあらかじめ制限された角度にしようとするとき及び舵(だ)角が制限された角度に達したときにその旨を表示することができるものであること。
ニ 誤操作による自動操舵(だ)への切り替え及び制御方式の切り替えを防止するための措置を講じたものであること。
ホ 船舶の針路があらかじめ設定された角度を超えて変化した場合に、可視可聴の警報を発するもの(可聴警報を一時的に停止することができるものに限る。)であること。
ヘ 適切に調整することができるものであること。
ト 船首方位に係る情報その他の必要な情報をジャイロコンパスその他の必要な航海用具等から伝達することができるものであること。
チ 前号ロ、ハ、ヘ、ト及びヌ並びに航海用具の基準を定める告示*1第6条第(6)号及び第(8)号から第(14)号まで、*2第8条第1項第(2)号から第(4)号までに掲げる要件
*1:第6条 前ページに掲載。(6)及び(8)〜(14)まで参照。
*2:第8条第1項
(2)表示器は、他の設備によりその使用が妨げられるおそれのない船橋の適当な場所に設置されていること。
(3)電源の開閉器は、表示面に近接した位置に設けられていること。
(4)操作用のつまみ類は、使用しやすいものであること。







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