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2・10 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する関係規則(要約)
 2002年12月12日、SOLAS条約の締約会議決議1で採択された第X1-2章「海上の保安を高める特別措置」に基づき、日本国政府は、国際航海旅客船等及び国際港湾施設に対して行われるおそれのある危害行為の防止を図るとともに、保安の確保のために、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」を制定し、平成16年4月14日(法律第31号)公布した。また、国土交通省は、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律施行規則」を制定し、平成16年4月23日(国土交通省令第59号)公布した。この法律及び省令で規定する内容を要約して記述する。
 
1. 船舶に関する規定
(1)対象となる国際航海日本船舶(法律第2条、省令第2条)
(a)国際航海旅客船
(b)国際航海に従事する総トン数500トン以上の旅客船以外の船舶
 ただし、以下の船舶を除く。
(1)専ら漁ろうに従事するもの
(2)推進機関を有しない船舶
(3)国が所有し又は運航する非商業的目的のみに使用されるもの
(4)スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット、モーターボートその他これに準ずる船舶
(5)国土交通大臣がその航海の目的、態様、運航体制等を勘案して船舶の保安の確保上差し支えないと認めた船舶
(2)(1)に関する措置
(a)船舶警報通報装置(法律第5条、省令第6条)の要件
 (1)の船舶には船舶警報通報装置を備えなければならない。船舶警報通報装置に関する技術上の基準は以下に掲げる基準とする。
(1)次に掲げる情報を速やかに海上保安庁に送信できるものであること。
イ 船名、IMOの船舶識別番号、その他当該国際航海日本船舶を特定することができる情報
ロ 国際航海日本船舶に対する危害行為が発生したことを示す情報
ハ 国際航海日本船舶の位置を示す情報
(2)船舶警報通報装置の作動を停止させるまで(1)の情報を継続的に送信するものであること。
(3)航海船橋及びそれ以外の適当な場所において(1)の情報の送信を操作できるものであること。
(4)誤操作による(1)に掲げる情報の送信を防止するための措置が講じられているものであること。
(5)他の船舶に(1)に掲げる情報を送信しないものであること。
(6)可視可聴の警報を発しないものであること。
(7)(1)から(6)に定めるほか、船舶警報通報装置の設置に関する技術上の基準の細目は、国土交通大臣が告示で定める。
 その告示(国土交通省告示第492号)の内容は以下による。
イ 危害行為が発生したことを示す情報を送信した日時の情報を送信できるものであること。
ロ 専用の警報信号発信ボタンによって作動するものであること。
ハ 適正に作動することが警報を送信することなく確認できるものであること。
ニ 磁気コンパスに対する最小安全距離を表示したものであること。
ホ 電磁的干渉により他の設備の機能に障害を与え、又は他の設備からの電磁的干渉によりその機能に障害が生じることを防止するための措置が講じられているものであること。
ヘ 機械的雑音は、船舶の安全性に係る可聴音の聴取を妨げない程度に小さいものであること。
ト 通常予想される電源の電圧又は周波数の変動によりその機能に障害を生じないものであること。
チ 過電流、過電圧及び電流極性の逆転から装置を保護するための措置が講じられているものであること。
リ 船舶の航行中における振動又は湿度若しくは温度の変化によりその機能に支障を生じないものであること。
ヌ 人体及び構成機器に対する保護が十分行われていること。
ル 常用の電源以外の電源から給電することができるものであること。
オ 電源の切替えを速やかに行うための措置が講じられているものであること。
(b)船舶指標対応措置(法第6条、省令第7条)の実施
 国土交通大臣は、国際航海船舶に対し行われるおそれのある危害行為の内容、地域、危害行為の実行の程度を国際海上運送保安指標として保安レベル(レベル1から3)を設定(条約締約国の港にあり又は条約締約国の港に入ろうとするときは、当該条約締約国の政府が設定)し公示する(法第3条、省令第4条、省令第5条、省令第7条)。当該船舶は、それに適合する措置を船舶保安規程に定めるところにより行う。
 そのためには「船舶保安規程」の作成及び「船舶保安記録簿」の作成が必要となる。
 
(c)船舶保安管理者(法第8条、省令第9条)の選任
 当該船舶の乗組員で国土交通大臣が規定する講習を修了した者の中から船舶保安管理者1人を選任し、所轄の管海官庁(原子力船にあっては、国土交通大臣)に届けなければならない。船舶保安管理者を解任したときも、解任理由を添えて届けなければならない。
 船舶保安管理者の業務の範囲は次のように規定されている。
(1)船舶警報通報装置の保守点検又は較正の実施に関すること。
(2)船舶指標対応措置の実施に関すること。
(3)乗組員に対する操練その他教育訓練の実施に関すること。
(4)行われた危害行為に関する情報の船舶保安統括者(船舶を所有する会社で選任された者:法第7条、省令第8条)への報告に関すること。
(5)船舶指標対応措置の実施に関し、船舶保安統括者その他の関係者との連絡及び調整に関すること。
注:(3)の操練は少なくとも3月に1回実施(乗組員の数の3/4未満の参加の場合は、その日から1週間以内に実施)しなければならない。また、船舶保安管理者は、操練に関する連絡、調整を少なくとも年1回、かつ、18ヶ月を超えない間隔で船舶保安統括者と行わなければならない。(法第9条、省令第14条)
(d)船舶保安記録簿(法第10条、省令第15条)の備置き
(1)記録すべき事由
イ 国際海上運送保安指標の設定及び変更
ロ 保安の確保に関する設備の保守点検及び較正の実施
ハ 操練その他教育訓練の実施
ニ 船舶保安規程の見直し
ホ 船舶保安評価書の見直し
ヘ 保安の確保に関する業務に関する監査
ト 危害行為の発生
(2)記録すべき事項
 (1)に関する年月日、内容、措置、参加者名等を記録する。
(3)記録言語及び記録媒体
 記録言語は英語(英語でないときは英訳文付)。記録媒体は電子ファイル又は磁気デスクでもよく、いずれの場合も紙面に表示できるもの。
(4)保存期間
 最後の記録をした日から3年間、当該船舶内に保存する。
(e)船舶保安規程(法第11条、省令第16条、17条及び18条)の備置き
 当該船舶の所有者は、船舶保安規程を作成し、管海官庁(原子力船にあっては国土交通大臣)の承認を得なければならない。また、変更の際も同様に変更承認(軽微な変更に関しては届出(省令第20条、省令第21条))を得なければならない。
(1)船舶保安規程に記載する内容
イ 船舶警報通報装置の設置に関する事項
ロ 船舶指標対応措置の実施に関する事項
ハ 船舶保安統括者の選任に関する事項
ニ 船舶保安管理者の選任に関する事項
ホ 操練及び教育訓練の実施に関する事項
ヘ 船舶保安記録簿の備付けに関する事項
ト 船舶保安従事者の職務及び組織に関する事項
チ 国際航海日本船舶の保安の確保に関する設備に関する事項
リ 国際航海日本船舶の保安の確保に関する業務に関する監査に関する事項
ヌ 国際航海日本船舶の保安に関する情報の管理方法に関する事項
ル 危害行為が発生した場合の対処方法に関する事項
オ 当該国際航海日本船舶の乗組員その他その船舶内で業務を行う者の任命について責任を有する者の氏名又は名称及び住所(国土交通省告示第494号抜粋)
(2)記録言語及び記録媒体
 船舶保安規程の記録言語は英語(英語でないときは英訳文付)。記録媒体は電子ファイル又は磁気デスクでもよく、いずれの場合も紙面に表示できるもの。
(3)船舶保安規程承認申請書に添付するもの(省令第17条)
 船舶保安規程承認申請書の提出に当たっては以下のものを添付する。
イ 船舶保安規程
ロ 船舶保安評価書(法第11条、省令第22条)
ハ 一般配置図
ニ 船体中央横断面図
ホ 船舶警報通報装置の構造及び配置を示す図面
ヘ 制限区画を示す図面
注:ロの船舶保安評価書とは、当該船舶の構造、設備等について実地にその状況を調査し、当該船舶に対して危害行為が行われた場合に当該船舶の保安の確保に及ぼし、又は及ぼすおそれのある支障の内容とその程度について評価を行った結果を記載したもので、船舶所有者は主たる事務所に備え置かなければならない。
 
(f)船舶検査及び船舶保安証書の備置き(法第12条から法第19条、省令第23条から第38条)
 当該船舶の定期検査、中間検査又は臨時検査を受けようとする者は、船舶保安検査申請書を管海官庁(原子力船にあっては国土交通大臣)に提出((e)(3)イからヘを添付)し、第1回定期検査を受る。第1回定期検査に合格の場合は船舶保安証書の交付を受け、当該船舶内に備え置く。船舶保安証書の有効期間は合格した日から起算して5年を経過する日までとなっている。
 その他の定期検査、中間検査及び臨時検査の手続きに関しても規定している。
(g)船級協会の審査及び検査と船舶保安証書の交付
(法第20条、省令第39条及び第40条)
(1)(1)(b)に該当する船舶に関する(1)(e)の検査は、船級協会が行うこととなる。したがって、船舶所有者は、船舶保安規程承認申請書を船級協会に提出する。変更の際も同様に変更申講が必要となる。なお、国土交通大臣は、船級協会として、財団法人日本海事協会を登録(告示第778号、平成16年7月1日公付)している。
(2)船級協会は、船舶保安規程の審査及び船舶の検査を行い、適合していれば船級登録を行い、合格の証明書を交付する。
(3)船舶所有者は、船舶保安証書交付申請書を管海官庁(原子力船については国土交通大臣)へ申請し、船舶保安証書の交付を受けることとなる。
 船舶保安証書交付申請書を提出する場合は、以下のものを添付する。
イ 船舶保安規程の写し
ロ 船舶保安証書
ハ 臨時船舶保安証書の交付を受けている場合は、臨時船舶保安証書
ニ 船級協会の船級の登録を受けている旨の証明書
注:第1回定期検査にあっては、ロ及びハを除く。
(h)船舶警報通報装置の搭載時期
(法附則第1条及び第2条、省令附則第1条及び第2条)
 (1)の船舶には、次の期日までに船舶警報通報装置を備え付けなければならない。
(1)平成16年7月1日以後に建造された船舶
(2)平成16年7月1日より前に建造された船舶
イ 旅客船にあっては、平成16年7月1日以降に行われる最初の定期検査、中間検査又は臨時検査の時期までに
ロ 総トン数500トン以上の油タンカー、液体化学薬品ばら積船、液化ガスばら積船、ばら積み貨物船及び高速貨物船にあっては、平成16年7月1日以降に行われる最初の定期検査、中間検査又は臨時検査の時期までに
ハ 総トン数500トン以上のロ以外の貨物船及び移動式資源掘削ユニットにあっては、平成18年7月1日以降に行われる最初の定期検査、中間検査又は臨時検査の時期までに
2. 国際埠頭に関する規定
 国際埠頭の保安に関しては、法律第28条から35条及び国土交通省令第53条から第64条で規定している。ここでは内容を省略する。
3. 国際水域施設及び国際航海船舶の入港に関する規定
 国際水域施設に関しては、法律第36条から第46条及び国土交通省令第65条から第78条で規定している。ここでは内容を省略する。
 ただし、本邦以外の地域から本邦の港に入港しようとする1(1)の船舶の船長が海上保安庁へ通報しなければならない船舶保安情報を以下に示す。(法第44条、省令第75条)
(1)名称
(2)国際海事機関船舶識別番号
(3)船種
(4)国籍
(5)船籍港
(6)総トン数
(7)所有者の氏名又は名称及び住所
(8)運航者の氏名又は名称及び住所
(9)船長又は所有者の代理人の氏名又は名称及び住所
(10)入港をしようとする本邦の港及び当該港の係留しようとする係留施設の名称並びに入港の予定時刻
(11)入港しようとする特定海域の入域の位置及び入港の予定時刻
(12)本邦の港から出港をした後に入港をしようとする他の本邦の港及び当該本邦の港の係留しようとする係留施設の名称並びに入港の予定時刻
(13)本邦の港から出港をした後に入域をしようとする特定海域の入域の位置及び入域の予定時刻
(14)船舶警報通報装置又は船舶警報通報装置に相当する装置の有無
(15)当該国際航海船舶について設定されている国際海上運送保安指標又は国際海上運送保安指標に相当する指標
(16)当該国際航海船舶が実施する船舶指標対応措置に対応した国際海上運送保安指標又は船舶指標対応措置に相当する措置に対応した国際海上運送保安指標に相当する指標
(17)船舶保安統括者又は船舶保安統括者に相当する者の氏名及び連絡先
(18)船舶保安管理者又は船舶保安管理者に相当する者の氏名及び職名
(19)船舶保安記録簿又は船舶保安記録簿に相当する記録簿の有無
(20)船舶保安証書若しくは臨時船舶保安証書又は船舶保安証書若しくは臨時船舶保安証書に相当する証書の番号及び発給機関
(21)当該国際航海船舶について寄港地に関する事項であって次に掲げるもの(本邦の港に入港をする直前の寄港までの過去10回の寄港に関するものに限る。)
イ 該当寄港地が所在する国の名称及び港名並びに入港及び出港の年月日
ロ 当該国際航海船舶について設定された国際海上運送保安指標又は国際海上運送保安指標に相当する指標
ハ 当該寄港地について設定された国際海上運送保安指標又は国際海上運送保安指標に相当する指標
ニ 当該寄港地において実施した船舶指標対応措置に対応した国際海上運送保安指標又は船舶指標対応措置に相当する措置に対応した国際海上運送保安指標に相当する措置
ホ 当該寄港地において実施した船舶指標対応措置に加えて実施した措置があった場合は、当該措置
ヘ 当該寄港地において積載した貨物のうち本邦内において荷揚げする予定のもの及び乗船した旅客のうち本邦内において下船する予定の者の有無
(22)本邦への入港の実績
(23)航行中の異変その他当該国際航海船舶の保安の確保に関し参考となる事項
(24)呼出符号
(25)海上保安庁との連絡方法







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