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第2章 GMDSS関連機器の概要及び性能
2・1 ナブテックス受信機
2・1・1 ナブテックスシステム
(1)ナブテックスシステムの機能
 ナブテックス(NAVTEX)の語源は明らかでないが、Navigation Telexの略であるという説が有力である。このナブテックスシステムは全世界的な沿岸向けのシステムで、次のような機能を有している。
(1)狭帯域直接印刷電信によって海上安全情報を放送し、これを船舶で自動受信するシステムである。
(2)国際業務は、518kHzの周波数を使用して英語の海上安全情報を各局が割当時間を守って放送する。
(3)国別の業務は、518kHz以外の周波数(490kHzなど)を使用して、主管庁の決定による言語により海上安全情報を放送する。日本語ナブテックス業務は490kHzに代り、424kHzの周波数を使用している。
(2)ナブテックスシステムの主な特長
(1)図2・1に示すNAVAREA(航行水域)の中で登録された送信局群から、相互干渉を防ぐために図2・2に示す送信割当時間に518kHzという共通の周波数を使用して英語で送信される。
(2)各送信局の送信電力は、送信局間の干渉を防ぐように計画されている。
(3)専用のナブテックス受信機は、各メッセージに前置きされるコードによって、その船舶のいる地域、情報の種類を選択して、印字するメッセージを指定することができる機能をもっている。ただし航行警報、気象警報及び捜索救難情報のような安全上重要な情報は常に受信し、受信を拒否できない。また、メッセージがすでに印字されているかどうか判定して、重複印字しないようになっている。
(4)各メッセージの内容の情報と所要のカバレージとを考慮して、送信メッセージを選択できるので、利用者はその船位の周囲の一つ又は複数の送信局からのメッセージを選択すればよい。
(3)送信メッセージの構成
 各送信メッセージの構成は、図2・3の通りで、最初に放送開始を示すZCZCが送られ、その後に一字分のスペースを開けて、国際ナブテックスでは前置文字B1 B2 B3 B4 4文字が、日本語ナブテックスではM1 M2 M3 M4 M5 5文字が続き、1字分のスペースをあけてキャリッジリターンとラインフィード(改行をして左端からの印字の用意をする信号)によって印字の準備ができる。本文の最初は「151416 UTC MAR 85」など、メッセージ作成の時間が日時分UTC(協定世界時)月年(年は任意)と入り、改行などの信号が続く。メッセージの最初には、例えば「NAVAREA III 274」というようにその識別とB3 B4とは異なる連番を付す。本文が終わると終了信号NNNNを付して、2行の改行などをしておく。
 前置文字のB1(日本語ナブテックスではM1)は送信局の識別符号で、図2・1にあるようにNAVAREAごとにAからZと順番に付される。同じ識別の局は隣のNAVAREAからは離れており、かつ、隣接NAVAREAの国の間の相互協調がとられるので、相互干渉の可能性はないことになっている。
 B2(日本語ナブテックスではM2)は、放送内容の識別符号である。その船舶が必要とするメッセージの種類を受信機に設定することで、受信機はその情報を印字するかどうか判断する。このB2(M2)には、次の英字が割当てられているが、そのうちのA、B、D、Lの4文字は受信を拒否できない重要メッセージである。
A=航行警報(受信を拒否できない)
B=気象警報(受信を拒否できない)
D=捜索救助情報(受信を拒否できない)
C=氷の報告
E=気象予報
F=パイロット業務のメッセージ
G=デッカ航法システムのメッセージ
H=ロラン航法システムのメッセージ
I=オメガ航法システムのメッセージ(現在は使用されていない。)
J=衛星航法システムのメッセージ
K=その他の電子航行援助(電波航法業務)のメッセージ
L=航行警報:Aの追加(受信機で受信の拒否ができないもの)
V、W、X、Y=特別のメッセージ(ナブテックスの会議で割当て)
Z=扱うメッセージなし
 上のV、W、X、Yは、IMOの同意のもとに次の条件を満した時にのみ使用できる。
(1)完全な国際的業務に影響をしない。
(2)時間の余裕のあるときで、十分な時間が残されている。
(3)特定の業務放送が意図した目的に独自に用意されている。
 B3 B4の2字(日本語ナブテックスではM3 M4 M5の3字)は通常各局ごとの2桁(日本語ナブテックスでは3桁)の数字を使用する一貫番号である。この番号が00(日本語では000)のものは、常に印字されるので重要なメッセージに使用される。この一貫番号は同じ情報を二度印字しないために使用される。
(4)ナブテックスシステムの運用
(1)ナブテックスの送信は約300海里の設定カバレージをもっている。受信機は航行水域によって受信する送信局を指定できる。また、送信局間の干渉を最小にするために、カバレージ内のすべての局の地理的な相対位置を考慮にいれて送信スケジュールが作られる。IMOで勧告されている基本的な組織的マトリックスを図2・2に示す。各グループは6局の送信局からなり、その各々は4時間ごとに10分間の送信時間が割当てられる。ただし、この割当はIMOで承認することになっている。
(2)我が国では、GMDSSの導入とともに5局のナブテックス海岸局が放送開始しており、カバレージ(ナブテックス水域)、放送時間などが海上保安庁から告示されている。これらの海岸局の識別番号、放送時刻等は表2・1及び図2・4に、カバレージ(ナブテックス水域)の概略は図2・5に示されている。
(5)性能基準の改正
 IMO第77回海上安全委員会(MSC77)においてナブテックス受信機の性能基準を改正する決議案が採択され、平成17年7月1日より施行される。主な改正点は次の通り。
(1)性能基準
 国際ナブテックス受信機は、国際ナブテックス周波数(518kHz)の電波に加え総務大臣が別に告示する周波数(490kHz, 4209.5kHz)の電波を同時に自動的に受信し、その受信した情報を英文により内蔵プリンタによる印字または外部プリンタによる印字もしくはディスプレイによる表示ができることとなる。
(2)経過措置
 改正規定の施行の際、現に船舶に備え付けているナブテックス受信機については、改正後の規定にかかわらず、これを引続き当該船舶に備え付ける場合に限り、なお従前の例によることができる。
 
図2・1 NAVAREAとナブテックス送信局の識別符号
(拡大画面:77KB)
 
図2・2 ナブテックス送信局の送信時間のマトリックス
 
図2・3 ナブテックス送信メッセージ
(拡大画面:56KB)







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