5・4・4 交流計器の波形誤差
可動コイル型電流計と整流器を組み合わせると交流の電流及び電圧が測定できるがコイルを駆動する力は交流の平均値である。通常、交流は実効値で取り扱われる。家庭用のの100V電圧は実効値100Vの交流である。このためメータの目盛りを実効値に変換してある。最大値Vpの交流の実効値と平均値との比を波形率と呼ぶ。
より可動コイル電流計で交流を測定したとき指針の駆動力は平均値なので実効値に換算した
目盛り=指針の駆動力(平均値)×1.11(波形率)=実効値指示(5・21)
となるように交流の波形率1.11倍の目盛りで読み取ることにしてある。しかし、パルス波のように正弦波でない波形では波形率が1.11倍とならないので読取りに波形誤差が生ずる。
一般に正弦波でない波形を整流計器で測定すると波形誤差を生ずるので実効値を指示する熱電対型電流(電圧)計のように波形に影響されない計器を使用する必要がある。
アナログ型テスターの電圧計は、電流計に直列に外部抵抗を接続すると電圧計となる。外部抵抗の値を切り替えることから電圧計のレンジ切り替えができる。このときの外部抵抗を倍率器と呼ぶ。
図5・7(a)に電流計Mに倍率器Rを直列接続した電圧計を示す。(b)は電圧計のレンジ切り替え回路を示す。
図5・7 倍率器付電圧計
(a)電流計と倍率器
(b)電圧計とレンジ切り替え
(a)において電流計Mは内部抵抗rをもつので電流計の端子電圧EVは定格電流をIとすると
EV=I×r (5・22)
となるが、この値は小さくて数mV〜数十mV程度なので大きな電圧を測定するには倍率器Rが必要になる。電流計の端子電圧EVのm倍の測定端子電圧Eとするための倍率器Rの値を計算する。電流計定格電流Iから
E=IR+Ir=I(R+r) (5・23)
E=mEV=mIr (5・24)
の2つの式からEとIを消去すると
R=(m-1)r (5・25)
となるので、電流計の内部抵抗rの(m-1)倍の倍率器を直列に接続すればレンジがm倍となる。倍率mは(5・24)式から
となるので(b)図のように倍率器Rを切り替えて電圧計のレンジが拡大できる。
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