日本財団 図書館


4・8・2 EMCの測定法
 EMCの測定は被測定機器から放射される不要電波の強度を調べる電磁干渉、Electro Magnetic Interference(EMI)測定と、被測定機器が妨害電波に耐えられる能力を調べるイミュニティ測定に大別される。被測定機器の種類や測定項目によって測定方法や評価の基準が異なる。ここでは代表的な測定法を紹介する。
 妨害機器から放射される妨害電波は図4・21に示すような種々な経路で被妨害機器に到達する。大別すると空間を伝搬する放射妨害、電源線や信号ケーブルを伝わる伝導妨害とこれらの組み合わせた経路による場合がある。
 周波数は50/60Hzの電源周波数からマイクロ波まで広い範囲の帯域に妨害波が含まれている。妨害波の波形は正弦波やパルス波以外に火花放電による振動波形のようにランダム(不規則)な場合が多い。人体に帯電した状態で電子機器に触れると放電電流が流れてLSI回路が破壊される場合がある。
 自動車の点火プラグから発生する妨害波で車内のパソコンが誤動作することがあった。人工衛星の内部には多数の電子機器が集約されているのでお互いに干渉する内部EMCの問題等が起きるようになった。複雑な経路から種々な波形や電力を持つ妨害波が侵入してくるので個々に対応したEMC対策が必要となる。
(A)電磁干渉(EMI)の測定
 図4・22にEMIの測定法を示す。電波暗室のような外部からの妨害波が加わらない場所で測定する。回転台上に被測定機器を載せて回転しながら測定用アンテナで機器から放射される不要電波の強度を測定する。機器とアンテナとの距離は3、10又は30mから選ぶ。アンテナは1〜4mを上下しながらスペクトルアナライザーで受信強度を判定する。
(B)イミュニティの測定
 イミュニティには電源線や信号ケーブル線等を伝わる妨害波に対する伝導イミュニティと、空間から電波として加わる妨害波に対する放射イミュニティがある。測定項目として
 
図4・22 EMIの測定法
 
 1. 静電気放電試験、2. 放射性イミュニティ試験、3. ファースト・トランジェント・イミュニティ試験、4. サージイミュニティ試験、5. 高周波連続伝導イミュニティ試験が行われてきたが、1997年にCISPR、Pub. 24が制定されて新しく6. 電源周波数磁界試験、7. 電圧ディップ・瞬時停電試験が加わった。ここではそれらの中から代表的なイミュニティ測定法を紹介する。
静電気放電イミュニティ試験:
 図4・23に静電気放電イミュニティ試験を示す。人体等に帯電した高電圧の放電で機器が破壊することがある。数kV〜20kVのパルス波を供試機器に印加する。
 
図4・23 静電気放電イミュニティ試験
(拡大画面:35KB)
 
放射性イミュニティ試験:
 図4・24に電波妨害による放射性イミュニティ試験法を示す。アンテナから妨害電波を放射して規定距離(3、10又は30m)離れた回転台上に載せた被測定機器の動作を測定する。被測定機器の周囲に均一電界が加わることや外部からの干渉電波がないことなどが要求される。10kHz〜1GHzの周波数範囲の電波を加えて誤動作の発生を測定する。
 
図4・24 放射イミュニティ試験
 
図4・25 TEMセル
 
 電波暗室がないときや、強力な電波を加えるときにTEMセルと呼ぶ金属導体箱の中に被測定機器を入れてイミュニティ測定をする。図4・25にTEMセルを示す。
伝導性イミュニティ試験:
 図4・26に電話機の伝導性イミュニティ試験を示す。
 
図4・26 電話機の伝導性イミュニティ試験







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION