第4章 レーダーの構成と動作
航海用レーダー装置の構成は各製造会社によってかなりの相違があり、それぞれ特徴をもっているが、基本的には、図4・1に示すように空中線、送信部、送受切替え部、受信部、表示部及び電源部とで構成され、これらはケーブルや導波管などで接続されている。
図4・1 従来方式のレーダーの構成
同期信号発生器で、図4・2(a)に示すように、パルス幅τを有するパルス電圧を周期Tで繰り返し発生し、それで変調器のサイラトロン等を放電させて短時間τ(μs)持続する高電圧を発生し、これをマグネトロン発振器に加える。マグネトロンは、パルス変調器から高電圧が加えられたときだけ高周波振動を生ずるようにしておくと、τ(μs)の幅をもった繰り返し周期Tのパルス波を発生する。このパルス波を、導波管と送受切替え回路等を経て、ある程度で回転している空中線に導き、ここで鋭いビーム状にして全方位へ発射する。
発射された電波の通路の中に、レーダーからの距離がR(m)の場所に反射物標があると、電波はここで反射され、再びレーダーに戻ってくる。この反射されて戻ってくる電波をレーダーのエコーと称し、エコーは往復で2Rの距離を伝搬したことになるから電波の伝搬速度をc(m/s)とすると、発射電波より2R/cだけ時間が遅れ、図4・2(b)のような時間関係となる。
図4・2 送信パルスと受信信号の時間関係
このエコーは導波管から送受切替え回路を経て、受信部のフロント・エンドに入力される。昔は、鉱石検波器(クリスタルダイオード)でクライストロン等の局部発振器の出力と混合検波され、20〜60MHzの中間周波数のパルス信号に変換されていた。現在では、マイクロ波の増幅器を備えた局部発振器にはFETを使用したモジュールが使用されており、中間周波数は60MHzとなっている。エコー(受信信号)は中間周波増幅器(IF)で増幅された後、検波、増幅されて表示部へ送られ、ブラウン管表示器で映像として表示される。ブラウン管表示器はエコーの距離と方位が直ちに分かるようなPPI表示方式(Plan Position In dication:平面位置表示方式)を用いている。これは図4・3に示すように、パルス電波の発射と同時にブラウン管の電子ビームをその中心から外側に向かって一定速度で偏向させ、かつ、電子ビームを空中線が電波を発射する方向、すなわち、空中線部の回転と常に一致するよう同期させて回転させる。このとき、電子ビームの強弱は受信信号の強弱と比例させることにより、図4・4に示すように、反射物標の位置がブラウン管の画面上に輝点となって表示される。
図4・3 ブラウン管の偏向波形と送受信信号
図4・4 平面位置表示(PPI)
レーダーでは、図4・5に示すように極めて短い時間(一般にショートレンジで0.08〜0.1μs、ロングレンジで0.6〜1.3μs)だけ、一定振幅のマイクロ波を繰り返し送信する。このような電波をパルネ波といい、パルスが送出されている時間をパルス幅、一つのパルスが発射され、引き続いて次のパルスが発射されるまでの時間をパルス繰り返し周期という。
送信部の動作はトリガ信号によって始まる。このトリガが加えられるとサイリスタ(SCRという以下同じ。)又はサイラトロンが所定の時間幅だけONになってスイッチの作用をし、その時間幅をもった高電圧のパルスがマグネトロン加えられると、マグネトロンは非常に高い尖頭出力で発振することになる。
図4・5 送信電波
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