3・3・4 アンテナ利得
(3・10)式に示すようにアンテナを大きくするほど指向性が鋭くなり、目的方向へ大きな電力を放射することができる。アンテナからある距離離れた地点で放射電力を受信する場合を考える。指向性を持つあるアンテナで受信した電力をPθとする。同じ電力を指向性がない等方性アンテナで放射したときの受信電力をP0としたときそのアンテナの利得Gθは
で定義する。等方性アンテナを基準にした利得を絶対利得と呼ぶ。
ダイポールアンテナを基準にしたアンテナ利得を相対利得GDで表示する。
相対利得から絶対利得を求めるには
絶対利得G0(dB)=相対利得GD(dB)+ダイポール利得2.15(dB)
(3・12)
で換算できる。ダイポールアンテナの絶対利得は2.15(dB)である。
パラボラアンテナの絶対利得は
ここで、ηはアンテナの開口能率定数で0.6〜0.8の値、Aはパラボラの面積で、アンテナの直径Dより(3・14)式で計算できる。
図3・14に携帯型無線機に使用されるむち(ホイップ)アンテナとその指向性を示す。水平面内で等方性(無指向性)となる1/4波長接地型アンテナである。中波や短波帯ではアンテナの長さを1/4波長にするとアンテナが長くなるので短くしたい場合がある。アンテナはインダクタンスL eと、電気容量C e及び抵抗R eの直列共振回路と等価となることを 図3・10により説明した。
図3・14 むち(ホイップ)アンテナと指向性
アンテナ回路にコイルやコンデンサーを挿入することにより共振周波数を変化させることができる。
図3・15 アンテナの電気的延長と短縮
(a)延長コイル
(b)短縮コンデンサ
図3・15(a)のように延長コイルL を挿入すると合成インダクタンス(L e+L )が大きくなるので共振周波数が低くなり、アンテナを電気的に延長したことになる。(b)のように短縮コンデンサC sを挿入すると合成容量C e・C s/(C e+C s)が小さくなるので共振周波数が高くなり、電気的にアンテナ長を短縮したことになる。
アンテナが短くて共振がとれない場合は延長コイル、逆にアンテナが長過ぎる場合は短縮コンデンサをアンテナの一部に挿入することにより電気的にアンテナ長を変化できるので能率よく電波を発射することができるようになる。
中波放送用垂直アンテナの頂上に容量環と呼ぶ環状のアンテナを乗せるとアンテナ上部の電流が増加して水平方向の放射電力が増加することからサービス区域を増加できる。アンテナの電流分布を変化させると共振周波数や指向性を電気的に変化できるのでアンテナの能率が向上する。
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