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可変容量ダイオード(バリキャップ);
 ダイオードを電圧で可変できる静電容量(コンデンサ)として使用するのが可変容量ダイオードである。英語名からバリキャップ又はバラクタダイオードとも呼ばれる。PN接合ダイオードに逆方向電圧を加えると接合部分の電子と正孔が離れて並び図1・32に示すように接合部分(空乏層という)がコンデンサと同じ作用をする。印加電圧Vの大きさで空乏層の幅が変化して容量が変化できるので電圧制御の同調回路としてチューナー等に使用されている。
 容量の大きさCは
 
 
となる。Sは空乏層の面積、dは間隔で印加電圧Vの関数となる。εは誘導電率である。
 
図1・32 可変容量ダイオードと等価コンデンサ
 
フォトダイオード(トランジスタ)と光伝導セル;
 図1・33に光に感応する素子を示す。光により半導体にエネルギーが注入されると電子や正孔が移動速度を増して抵抗が低くなる。(a)は光による抵抗変化を生ずる棒光電池である。(b)と(c)はPN接合部分に光を当てて起電力とする光電池である。PN接合部にはエネルギー差があり電子や正孔(キャリヤーという)が移動できないが光を当てるとエネルギー差が低くなりPからN方向へ電流が流れるので外部へ電池として取り出せる。(c)はNPNのトランジスタ構造により電流が増幅され起電力が大きくなる。(d)と(e)は合金接合型で広い面に光を当てられるので効率が大きくなる。半導体材料によりある波長の光に最大感度を示す。
 
図1・33 フォトダイオード(光伝導セル)
 
レーザーダイオード;
 PN接合ダイオードに順方向に電圧を加えエネルギー注入(励起)してレーザ発光させるのでインジェクションレーザとも呼ばれる。電子と正孔は軌道や自転を変えたりして互いに近付くとエネルギー状態が変化してその差分ΔEに対応した周波数νの光を発生する。これが自然放出発光現象でダイオードが発光する。この関係は
 
ΔE=hν (1・39)
 
 ここで、hはプランク定数、h=6.62×10-20(ジュール・秒)である。さらに電子と正孔の密度を高くしておくとこの光の刺激により再結合を起こし誘導放出によりレーザ発光を生じてレーザダイオードとなる。半導体にガリウム・砒素、GaAsを用いると波長ν=0.84μmの赤外線が発光する。接合面に垂直な両端両面間でレーザ共振器の作用をする。レーザダイオードは加える電圧を信号で変化させることから容易に光を変調することができる。小型で簡単にレーザ光が得られるが光の純度(コヒーレンス)が悪く、大電力が得られない欠点がある。
トンネルダイオード(エサキダイオード);
 通常のダイオードは1000万個の半導体原子に1個不純物を加えてP型又はN型半導体を造るが1000倍も多い不純物を加えるとトンネルダイオードが造れる。1958年に日本の江崎玲於奈氏が発明したのでエサキダイオードとも呼ばれる。通常のダイオードに順方向の電圧を加えると図1・34(a)に示すように順方向電圧の増加に電流が単調に増加する。トンネルダイオードは(b)のように電圧の増加に対して電流が減少する部分が生ずる。
 
図1・34 ダイオードの電圧−電流特性
(a)一般のダイオード
 
(b)トンネルダイオード
 
 不純物が大きくなるとPN接合部の電子と正孔がない空乏層の厚みが小さくなり、通常のダイオードでは接合部を超えて電子と正孔が移動できない低い電圧でもトンネルダイオードの接合部を電子と正孔が移動して電流が流れる現象がある。これをトンネル効果と呼ぶ。トンネルダイオードの電圧−電流特性の電流が減少する部分は等価的に負の抵抗値を持つので回路内に挿入すると損失(正の抵抗)を打ち消して増幅作用をつくることができる。図1・35にトンネルダイオードRDによる直列増幅器を示す。
 
図1・35 トンネルダイオード直列増幅器
(a)直列増幅器
 
(b)等価回路
 
 RDは、-100Ωの負性抵抗のトンネルダイオード、eSは信号源、RLは負荷抵抗、RZは回路が発振しないための整合抵抗とする。RDがないとき負荷RLに現れる出力電圧をV1とするとRD=0とおいて
 
 
 トンネルダイオードRDを挿入したときの出力電圧V2
 
 
 トンネルダイオードRDによる電圧増幅度Aは
 
 
となり、101倍の増幅器が簡単に実現できる。トンネルダイオードは直流からマイクロ波までの増幅、発振、検波、デジタル回路等に使用されている。







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