2・3 直流機
2・3・1 試験項目
(1)形式試験
形式試験は2・1・1にのべたとおりで受渡試験及び参考試験のほか次の項目を含む。
(a)詳細整流試験
(b)風量試験
(c)電圧脈動率の測定
(d)界磁インダクタンスの測定
(e)はずみ車効果の測定
(f)軸電流の測定
(2)受渡試験
受渡試験には次の項目がある。
(a)機械的点検
(b)巻線抵抗試験
(c)絶縁抵抗試験
(d)整流試験
(e)無負荷飽和特性試験
(f)無負荷界磁速度特性試験
(g)温度試験
(h)外部負荷特性試験
(i)速度特性試験
(j)耐電圧試験
(3)参考試験
参考試験には次の項目がある。
(a)振動試験
(b)騒音試験
(c)過速度試験
(d)組合せ試験
(e)超過トルク耐力試験
(f)過電流耐力試験
(g)損失試験
(h)効率試験
以上の各試験項目のうちから重要なものについて説明する。
2・3・2 機械的点検
(1)一般的点検
(2)主極・補極の極性検査
主極・補極の回転方向に対する配列は図2・15のとおりで、間違って接続されると電圧の不発生、整流不良などの現象が現れる。
(3)整流子振れの測定
十分注意されて工作されているので、一応問題がないと考えるが、絶縁物の枯れなどで発生することがある。
整流子振れは整流作用に大きな影響を与えるものであり、その振れの大きさは、指定値以下が望ましい。
(4)ブラシまわり確認
ブラシは指定された寸法・材質・ブラシ圧力・数量であることを確かめる。
図2・15 極性
2・3・3 巻線抵抗試験
一般的な測定方法は2・2・3に記述されているので、ここでは電機子巻線の抵抗試験方法について述べる。
直流機の抵抗試験で最も困難なのは電機子巻線の抵抗である。抵抗値が小さい上に、さらに整流子を通しての測定であるため、大きな誤差が含まれていることがある。
(1)圧着ピンを使う方法(IEEE法)
ブラシの摺り合わせを十分に行ったのち、ブラシで短絡されているセグメント上で図2・16のように正しく1極間隔で測定し、その平均値を電機子巻線抵抗とする。
この場合、測定には、先端のとがった銅の圧着ピンを使い、整流子面の酸化被膜を突き破って測定する。
図2・16 IEEE法による電機子抵抗測定
(2)電圧降下法
ブラシを通し、定格電流の15%以下の電流を流し、ブラシにより短絡されている中央部のセグメント上で正しく1極間隔当たりの電圧を測定し、抵抗を求める。
(3)圧着バーを使う方法(バー圧着法という)
ダブルブリッジのリード線をはんだ付けした圧着用バーを使い、セグメント間の面取り部分で図2・17のように測定する。
図2・17 バー圧着法による電機子抵抗測定
波巻、均圧線をもつ重ね巻の場合は測定値をそのまま採用してよいが、均圧線をもたない重ね巻の場合はブラシを全数整流子面から上げ、1極対間の測定で得た値を次の式により補正する必要がある。ブラシを降ろしたままで測定すると大きな誤差の原因となるので注意すべきである。
ここに、
R; 補正された電機子抵抗 (Ω)
P; 極数
R0;ブラシを上げたときの測定値(Ω)
この方法によれば、整流子表面の酸化被膜の影響がなく、また、圧着方法による誤差が非常に少なく他の方法に比べて最も精度が高く、信頼性に富む。
2・3・4 無負荷特性の測定
(1)発電機の無負荷飽和特性
発電機の巻線が設計どおりになっているかどうかを検討するため、界磁電流に対する誘起電圧の関係を調べる。
(a)発電機法
発電機を無負荷とし、駆動機で一定速度で運転し、界磁電流に対する誘起電圧を測定する。これを図2・18図に示し無負荷飽和特性曲線という。なお鉄心はヒステリシス特性を持っているので、界磁電流の可変は上昇方向のときは上昇方向のみ、降下方向のときは降下方向のみで行うこと。誘起電圧は回転速度に比例するので、多少異なるときは補正することができる。
図2・18 発電機法による無負荷飽和曲線
(b)電動機法
発電機を駆動機で運転できない場合は発電機を電動機として単独運転し、回転速度を定格値に保ち、各端子電圧に対する界磁電流の値を測定すると図2・19のような無負荷飽和曲線が得られる。
なお無負荷入力電流による抵抗電圧降下、電機子反作用による減磁分を厳密には差し引かねばならないが、一般には非常に小さく省略することができる。
(2)電動機の無負荷特性
電動機を無負荷で単独運転し、定格電圧に保ちながら界磁電流に対する回転速度を測定すると図2・20が得られる。回転速度は、無負荷ではほぼ端子電圧に比例し、界磁磁束に反比例する。
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