2・2・4 無負荷飽和特性試験及び相順試験
(1)無負荷飽和特性の測定
無負荷飽和特性とは無負荷における界磁電流に対する電機子誘起電圧の関係であって通常、無負荷飽和特性曲線で表される。普通、発電機として他の駆動機で運転して求めるが、電動機として運転して測定することもできる。
(a)発電機として測定する場合(発電機法)
図2・3 無負荷飽和特性試験回路
図2・3の回路で発電機を他の駆動機で定格速度とし、界磁巻線に直流電流を流し、電機子誘起電圧を測定する。
このとき界磁電流はできるだけ低い値から誘起電圧の上昇方向のみに増加し、定格界磁電流(i3)を多少超える程度まで上げる。次いで最高点から同様に誘起電圧を測定しながら、降下方向にのみ界磁電流を減少し、零に至るまで測定する。界磁電流零のときの誘起電圧を残留電圧と呼ぶ。
(375kVA-10-450V-481A-60Hz)
図2・4は測定例である。誘起電圧は回転速度に比例するので、同期速度で測定できない場合は次の式で補正する
ここに、
E; 定格回転速度における誘起電圧
E'; 回転速度N'における誘起電圧
N; 定格回転速度
N'; 測定時の回転速度
(b)電動機として測定する場合(電動機法)
発電機を同期電動機として無負荷運転する。
端子電圧を変化し、各端子電圧に対して電機子電流が最小となるように界磁電流を調製して、その点の界磁電流に対する端子電圧をプロットすれば図2・5のような特性曲線が得られる。
図2・5 電動機法による無負荷飽和・短絡特性の一例
(375kVA-10極-450V-481A-60Hz)
(c)確認事項
(i)低電圧及び定格電圧付近で端子間電圧のバランス状態を確認する。
(ii)発電機に電圧が発生すると、電磁的な音や振動を発生する場合があるので注意する。
(iii)残留電圧は機械によって異なるが、定格電圧に対して2〜5%が普通で、自励交流発電機の場合はこれがあまり小さいと、電圧を確立しない場合がある。
(2)相順試験
相順試験は端子記号に示す相順が仕様や標準規格に合っているかどうかを調べる試験で、低電圧において、回転式相回転計・ランプ式相回転計などを使用して調べる。また、回転方向の判明した小形電動機を使って調べてもよい。
2・2・5 規約効率の算定
一般に発電機の効率は、定格負荷状態における各部の損失を求め次式の規約効率の算定式によって求められる。
ここに、 |
η=規約効率(%) |
P=定格出力(kW) |
|
Wm=機械損(W) |
WCO=鉄損(W) |
|
WCOP=電機子巻線の抵抗損(W) |
WS=漂遊負荷損(W) |
|
WF=界磁抵抗損(W) |
WBF=ブラシ電気損(W) |
規約効率の算出例を表2・3に示す。なお、この表は自励式発電機の場合について行ったので回転励磁機付の場合は、負荷電流=電機子電流として計算すればよい。
以下、各部の損失及び算出の方法について述べる。
表2・3 |
規約効率の算出例
(375kVA-10極-450-481A-60Hz)
(力率1.0の場合) |
負荷率 |
出力 |
出力 |
線電圧 |
負荷電流 |
電機子電流 |
界磁電流 |
界磁電圧 |
機械損 |
鉄損 |
抵抗損 |
漂遊抵抗損 |
界磁抵抗損 |
全損失 |
入力 |
効率 |
|
kVA |
kW |
V |
A |
A |
A |
V |
kW |
kW |
kW |
kW |
kW |
kW |
kW |
% |
25% |
93.75 |
93.75 |
450 |
120 |
136 |
19.9 |
84.2 |
3.60 |
4.20 |
0.36 |
0.07 |
1.66 |
9.86 |
103.61 |
90.5 |
50% |
187.5 |
187.5 |
〃 |
241 |
257 |
21.1 |
89.1 |
〃 |
〃 |
1.27 |
0.18 |
1.88 |
11.13 |
198.63 |
94.4 |
75% |
281.25 |
281.25 |
〃 |
361 |
377 |
22.4 |
94.5 |
〃 |
〃 |
2.73 |
0.36 |
2.12 |
13.01 |
294.26 |
95.6 |
100% |
375.0 |
375.0 |
〃 |
481 |
497 |
23.6 |
99.5 |
〃 |
〃 |
4.74 |
0.72 |
2.35 |
15.61 |
390.61 |
96.0 |
125% |
468.75 |
468.75 |
〃 |
601 |
617 |
24.9 |
104.8 |
〃 |
〃 |
7.31 |
1.22 |
2.61 |
18.94 |
487.69 |
96.1 |
|
(力率0.8の場合)
負荷率 |
出力 |
出力 |
線電圧 |
負荷電流 |
電機子電流 |
界磁電流 |
界磁電圧 |
機械損 |
鉄損 |
抵抗損 |
漂遊抵抗損 |
界磁抵抗損 |
全損失 |
入力 |
効率 |
|
kVA |
kW |
V |
A |
A |
A |
V |
kW |
kW |
kW |
kW |
kW |
kW |
kW |
% |
25% |
93.75 |
75.0 |
450 |
120 |
136 |
21.9 |
92.4 |
3.6 |
4.20 |
0.36 |
0.07 |
2.02 |
10.25 |
85.25 |
88.0 |
50% |
187.5 |
150.0 |
〃 |
241 |
257 |
25.1 |
105.7 |
〃 |
〃 |
1.27 |
0.18 |
2.65 |
11.90 |
161.90 |
92.6 |
75% |
281.25 |
225.0 |
〃 |
361 |
377 |
28.4 |
119.3 |
〃 |
〃 |
2.73 |
0.36 |
3.39 |
14.28 |
239.28 |
94.0 |
100% |
375.0 |
300.0 |
〃 |
481 |
497 |
31.6 |
132.5 |
〃 |
〃 |
4.74 |
0.72 |
4.19 |
17.45 |
317.45 |
94.5 |
125% |
468.75 |
375.0 |
〃 |
601 |
617 |
34.9 |
146.1 |
〃 |
〃 |
7.31 |
1.22 |
5.1 |
21.43 |
396.43 |
94.6 |
電機子巻線抵抗 |
1φ0.0064Ω(75℃) |
界磁巻線抵抗 |
4.13Ω(75℃) |
|
(1)Wm(機械損)及びWCO(鉄損)の測定
発電機を無負荷で電圧を発生して運転すると、機械損及び鉄損を発生する。この両者を合わせて無負荷損という。
(a)発電機法による無負荷損の測定
図2・6 無負荷損測定回路
DM; |
駆動用直結電動機 |
AG; |
被試験機 |
VS; |
電圧計用切換スイッチ |
図2・6のように、発電機を他の機械で定格速度で運転し、駆動機の入力が安定するまで続ける。ついで入力が安定したら、発電機電圧をいったん定格の1.25倍付近まで上昇し、回転速度を正しく定格値に保ち、端子電圧に対する駆動機の入力を測定する。以下同様にして端子電圧を約25%間隔で降下し、零になるまで測定する。測定値は次の式により算定すれば、各電圧に対する無負荷損が得られる。この値を端子電圧に対して描けば図2・7のような無負荷損曲線が得られる。この図で、端子電圧零の点の損失が機械損、全損失を引いた値が鉄損となる。
図2・7 無負荷損曲線の一例
(375kVA-10極-450V-481A-60Hz)
いま、駆動機が直流電動機の場合について発電機の無負荷損を求めると、
Wm=EDID−{WO+2(ID-IO)+(ID2-IO2)Ra}(W)・・・(2・3)
ここに、
Wm;発電機無負荷損(W)
ED;電動機端子電圧(V)
ID;電動機入力電流(A)
WO;電動機単独無負荷入力(W)
IO;電動機単独無負荷電流(A)
Ra;電動機電機子回路抵抗
(測定時の温度におけるもの)(Ω)
(補極、補償巻線・直列巻線抵抗を含む。)
(b)電動機法による無負荷損の測定
発電機を同期電動機として駆動し、各端子電圧に対する入力の測定を行う方法で図2・8に結線図を示す。図中Rは放電抵抗で発電機の界磁抵抗の5〜10倍が適当である。Rを確実に入れCBに投入する。同期速度になるとSWをRから切り換え、直流電源に接続する。各端子電圧において電機子電流が最小となるように、界磁電流を調整し、その場合の入力を測定すれば、次の式により発電機の無負荷損が求められる。
Wm=WO-3IO2R・・・(2・4)
ここに、Wm;発電機無負荷損(W)
WO;入力(W) IO;入力電流(A)
R; 発電機電機子抵抗(1相)(測定時の温度におけるもの)(Ω)
電圧はいったん定格値の1.25倍まで上昇し、約25%ごとに電圧を降下しながら入力を測定する。低電圧になると同期速度を保ち得なくなるが、測定不能な点は曲線を延長して機械損・鉄損の分離を行う。
図2・8 無負荷損測定回路(電動機法)
DS; |
断路器 |
CB; |
遮断器 |
VT; |
計器用変圧器 |
WM; |
電力計 |
V; |
電圧計 |
F; |
周波数計 |
Fi; |
界磁巻線 |
AG; |
被試験機 |
CT; |
変流器 |
AS; |
電流計用切換スイッチ |
A; |
電流計 |
(2)WCOP(電機子巻線の抵抗損)及びWS(漂遊負荷損)の測定
発電機の電機子巻線に電流が流れると直流抵抗による抵抗損及び漂遊負荷損が発生する。
(a)電機子巻線の抵抗損;WCOP(W)
次の式によって求められる。
WCOP=3×Ra×Ia2(W)・・・(2・5)
ここに、Ra;基準温度に換算した1相の電機子巻線抵抗(Ω)
Ia;定格電機子電流
(b)漂遊負荷損;WS(W)
漂遊負荷損の測定には、発電機法と同期電動機法とがあるが、ここでは発電機法について述べる。なお、同期電動機法は発電機を同期電動機として運転し、発電機の三相短絡特性と回転子の減速曲線とによって漂遊負荷損を求める方法であるが詳細は省略する。
発電機法は発電機を他の駆動機で定格回転速度にて運転し、2・2・6の発電機の三相短絡特性試験により各電機子電流に対する駆動機の入力を測定すれば、次の式により漂遊負荷損が求められる。測定は定格電流の約25%間隔で125%電流まで測定する。
WS=(WT-WLT)-(WO-WLO)-3Ia2Ra(W)・・・(2・6)
ここに、
WS;漂遊負荷損(W)
Ia;発電機の短絡電流(A)
WT;短絡電流を流したときの駆動機の入力(W)
WLT; 短絡電流を流したときの駆動機の負荷損(W)
WO;短絡電流を流さないときの駆動機の入力(W)
WLO;短絡電流を流さないときの駆動機の負荷損(W)
Ra;発電機の電機子抵抗(1相、測定時の温度におけるもの)
3Ia2Ra;電機子巻線の抵抗損
駆動機の負荷損は次のように求める。
駆動機が直流機の場合
WLT;ILT2・Ra'+2ILT
WLO;ILO2・Ra'+2ILO・・・(2・7)
図2・9 抵抗損及び漂遊負荷損曲線の一例
(375kVA-10極-450V-481A-60Hz)
ここに、
ILT;短絡電流を流したときの駆動機の入力電流(A)
ILO;短絡電流零のときの駆動機の入力電流(A)
Ra'; 駆動機の電機子回路抵抗(測定時の温度におけるもの)(Ω)
(補極、補償巻線、直列巻線抵抗を含む)(Ω)
規約効率の算定には、絶縁の耐熱クラスに応じて75℃又は115℃における損失を使うので、損失曲線は75℃又は115℃における抵抗損と測定時の温度における漂遊負荷損をグラフに描く。図2・9はその損失曲線を示す。規約効率に採用する巻線の基準温度は、
絶縁の耐熱クラスA、E、B; 75℃
絶縁の耐熱クラスF、H; 115℃
である。
(3)励磁損(WF及びWBF)
(a)WF(界磁抵抗損)
定格負荷状態における界磁抵抗損は次の式により算出する。
WF=If2RF(W)
ここに、RF;基準温度に換算した界磁抵抗 (Ω)
If;定格界磁電流(A)
(b)WBF(ブラシ電気損)
回転界磁形でブラシを使用したものは、定格界磁電流(If)と、下記のブラシ電圧降下の積からブラシ電気損を算出する。
(i)炭素ブラシ又は黒鉛ブラシ;1リングにつき1.0V
WBF=If×2(W)
(ii)金属黒鉛ブラシ;1リングにつき0.25V
WBF=If×0.5(W)
|