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(5)保護装置の協調
 保護装置相互間の協調については、上記のほか、次の諸点に考慮を払わなければならない。
(イ)電動機の始動電流又は回路の過度投入電流によって開極しないこと。
(ロ)保護装置の電流対時間特性と保護されるケーブル又は絶縁電線の耐熱特性は協調がとれていること。
 
図2.13 電流対時間特性曲線
 
 選択遮断方式では図2.13に示すA、B、Cのように電源側に近い方の遮断器の電流対時間特性は、必ず給電回路の負荷側にある遮断器より短限時領域(又は短絡電流領域)側、即ち図において右側にあり、その特性曲線は交わってはならない。図においてEとA、B、Cは時間的に協調がとれているが、E'とA、Bとは協調がとれていない。
(6)発電機の保護
 発電機及びその回路は、一般に気中遮断器によって保護しなければならない。ただし、JG規程では、発電機容量が50kW(又はkVA)未満(NK規則は50kW)であって、並行運転を行わない場合は、気中遮断器(ACB)の代りにMCCB又はヒューズ付スイッチを使ってもよい。
 ACBは少なくとも長限時過電流保護と瞬時過電流保護を備え、また、必要に応じて短限時過電流保護をも備える。
 長限時過電流保護は発電機の過負荷状態での過度の温度上昇を防止し、引はずし装置のピックアップ値は、普通、発電機定格電流の115〔%〕とし、動作時限は引外し設定値の120〔%〕で20秒を標準とする。
 短限時過電流保護は発電機盤母線の短絡で急速に引はずし動作をし、引はずし装置のピックアップ値を発電機の持続短絡電流の約80〔%〕とする。遅延時間はピックアップ値をこえるすべての事故電流に対して負荷側遮断器などの遅延時間と遮断時間の和よりも長くする。
 瞬時過電流保護は通常2台以上の発電機が並行運転されているとき、発電機用遮断器の発電機側の事故を除去し、ピックアップ値は発電機の短絡電流の約120〔%〕とする。
 上記のほか並行運転中の発電機の原動機が出力を失ったとき、原動機の損傷と発電機の電動機化を防止するため、次の保護装置を必要とする。
(イ)逆電力保護(交流発電機の場合)
 タービン発電機では発電機定格出力の2〜6%に等しい逆電力で約10秒、またディーゼル発電機では発電機定格出力の6〜15%に等しい逆電力で約10秒でACBを動作させる。
(ロ)逆電流保護(直流発電機の場合)
 瞬時又は限時の逆電流保護装置を必要とし、2〜15〔%〕に等しい逆電流でACBを動作させる。(NK規則では瞬時動作が要求されている。)
(7)電動機の保護
 定格出力が0.5kWをこえる電動機と重要な設備用の電動機を始動できる限時特性をもつ電磁接触器及び電動機用過電流継電器などで保護すべきである。
 単一電動機回路に使用する保護装置の定格電流又は引はずし電流値は、できる限り表10に示す値以下であることが望ましい。ただし、操舵用電動機回路及び定格電流が6A以下の小形電動機回路についてはこの限りではない。
 
表2.16 単一電動機回路の保護装置(NK規則)
電動機の種類(始動方法) ヒューズ又は配線用遮断器の定格電流
〔電動機の全負荷電流に対する百分率(%)〕
直流電動機 150
巻線形誘導電動機 150
単相、普通かご形及び同期電動機(全電圧、リアクター及び抵抗始動) 300
普通かご形及び同期電動機(単巻変圧器始動)
特殊かご形電動機
30A以下 250
30Aを超えるもの 200
 
(8)動力及び照明用変圧器の保護
 変圧器の一次側は多極遮断器又はヒューズによって短絡と過負荷に対して保護し、遮断器及びスイッチはサージ電流(突入電流)に耐えるものを選定する。
(9)計器、表示灯及び制御回路の保護
 計器や表示灯は、ヒューズで保護する。ただし、電圧のそう失が他の回路に重大な影響をおよぼすような電圧調整機器回路などはヒューズを省略すべきであり、この場合、系統の保護されていない部分における火災の危険を防止する手段を施すべきである。
(10)半導体機器の保護
 半導体機器自体又は素子自体の保護に限流ヒューズを組み込むべきである。
 半導体機器の電源回路は、各素子を保護できる保護装置を備えるべきである。
(11)蓄電池の保護
 機関始動用の蓄電池を除き、蓄電池は多極遮断器又はヒューズによって保護する。
 ただし、重要設備に給電する非常用蓄電池に対しては短絡保護のみを行えばよい。







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