2 船舶設備規程(電気関係)
ここでは船舶設備規程(以下設備規程という。)第6編(電気設備)及びそれに付随する事項について記述する。設備規程第6編は諸船舶(小型船舶及び小型漁船を除く)の電気設備について規定されている。
設備規程の適用については同規程第170条の規定による。
(適用範囲)
第170条 この編の規定により難い特別の事情がある場合には、管海官庁が用途を限定して許可したものに限り、この規定によらないことができる。
2. この編に規定していないものにあっては、管海官庁が当該船舶の電気設備の効用に支障があるかどうかを審査してその使用を承認するものとする。
|
|
設備規程に用いられている用語については同規程第171条の第1号から11の規定による。
絶縁の種類については設備規程第171条の第1号から第4号の規定による。
(定義)
第171条 この編における用語の定義は、次の各号の定めるところによる。
(1)「A種絶縁」とは、次に掲げる絶縁をいう。
(a)木綿、絹、紙又はこれらに類似の有機質材料で構成され、かつ、ワニス類を含浸し、又は常時油の中に浸したもの(以下「A種絶縁材料」という。)による絶縁
(b)ベークライトその他の有機合成樹脂、ポリビニールホルマール又はエナメルによる絶縁
(2)「B種絶縁」とは、次に掲げる絶縁をいう。
(a)マイカ、ガラス繊維又はこれらに類似の無機質材料を接着材料により接着したもの(以下「B種絶縁材料」という。)による絶縁
(b)マイカナイト、その他のB種絶縁材料と少量のA種絶縁材料とで構成され、かつ、そのA種絶縁材料が損傷することがあっても全体として電気的及び機械的性質を害しないものによる絶縁
(3)「C種絶縁」とは、生マイカ、石英、ガラス、磁器又はこれらに類似の高温度に耐える材料による絶縁をいう。
(4)「H種絶縁」とは、次に掲げる絶縁をいう。
(a)マイカ、ガラス繊維又はこれらに類似の無機質材料を珪素樹脂又はこれと同等以上の性質を有する材料により接着したもの(以下「H種絶縁材料」という。)による絶縁
(b)H種絶縁材料と少量のA種絶縁材料とで構成され、かつ、そのA種絶縁材料が損傷することがあっても全体として電気的及び機械的性質を害しないものによる絶縁
|
|
(説明)設備規程第171条第1号〜4号関係
電気機器の絶縁の種類には前掲A、B、C、H種絶縁のほかY、E、F種絶縁がある。これら7種の絶縁には許容最高温度が定められている。詳細についてはJIS C 4003:98(電気絶縁の耐熱クラス及び耐熱性評価)参照のこと、旧JISで180℃を超す温度に使用されていたC種は200、220、250の耐熱クラスに細分された。
最近の交流電動機にはB種及びF種が多く用いられている。
電気機器の外被保護形式は、設備規程第171条の第5号から第7号までの規定による。
第171条
(5)「防水型」とは、管海官庁の指定する方法で、いずれの方向から注水しても浸水しない構造の電気機械及び電気器具の型式をいう。
(6)「水中型」とは、管海官庁の指定する圧力で、その指定する時間中、水中で連続使用することができる構造の電気機械及び電気器具の型式をいう。
(7)「防爆型」とは、管海官庁の指定する爆発性ガス及び爆発性蒸気の中で使用するのに適するように考慮された構造の電気機械及び電気器具の型式をいう。
|
|
(関連規則)
設備規程第171条関係(船舶検査心得)
(定義)
171.0(a)防水型において管海官庁の指定する圧力、方法及び時間については、当分の間JEC((社)電気学会規則)、JIS又はNK((財)日本海事協会規則)のいずれによってもよい。
(JEC)軸方向において機体より3mの距離より内径25mm以上の管をもって、水頭10mの水圧にて1分間から3分間までこれを行うものとする。
(NK)回転機及び制御機の場合は、JECに同じ。
配電器具、灯具の場合は、水深1mの水中に15分間浸してもその内部に浸水しないこと。
(b)水中型の試験圧力は、その機器に加わると考えられる最大の圧力(例えば、水中型ビルジポンプにあっては、隔壁甲板までの水圧)とすること。
(c)防爆型の試験ガスの種類は、その機器を設置する場所により定めること。
|
|
電気機器の保護形式はJIS C 4034-5:99(回転電気機械−第5部:外被構造による保護方式の分類)、JIS C 0920:03(電気機械器具の外郭による保護等級)、JIS C 0930:93(電気機器の防爆構造総則)、JIS F 8007:98(船用電気器具の外被の保護形式及び検査通則)、JIS F 8008:02(船用電気照明器具通則)、JIS F 8009:98(船用防爆電気機器一般通則)、JEC 2100:93(回転電気機械一般)に規定がある。
(説明)
(1)防爆型について(設備規程第174条第7号関係)
防爆構造には次の種類があるが船舶では(a)(e)が一般的に用いられる。
(a)耐圧防爆構造
全閉構造で、容器内部で爆発性混合気の爆発が起っても、その圧力に耐え、かつ外部の爆発性混合気に引火するおそれのない構造をいう。
(b)油入防爆構造
火花又はアークを発生する部分を油中に納め、油面上に存在する爆発性ガスに引火するおそれのないようにした構造をいう。
(c)内圧防爆構造
容器内部に保護気体(清浄な空気又は不活性ガス)を圧入して、内圧を保持することによって、爆発性混合気が侵入するのを防止した構造をいう。
(d)安全増防爆構造
常時運転中に電気火花又は高温を生じてはならない部分に、これが発生するのを防止するように、構造上及び温度上昇について、特に安全度を増加した構造をいう。
(e)本質安全防爆構造
正常運転中及び故障時(短絡、地絡、断線等)に発生する火花又は熱により爆発性混合気に点火しないことが点火試験等で確認された構造をいう(電路を含む)。なお、この構造の機器を一般にIS機器と称す。
(f)特殊防爆構造
(a)〜(e)以外の構造で、爆発性ガスの引火を防止できることが試験その他によって確認された構造をいう。
なお、JIS F 8422:98(船用防爆天井灯)、JIS F 8425:98(船用耐圧防爆形携帯電灯−電池式)はいずれも耐圧防爆構造である。
(関連規則)
(1)設備規程第171条第5号〜7号関係(JISC)
JIS C 0920:93(電気機械器具の防水試験及び固形物の侵入に対する保護等級)の一部抜粋を次に示す。
(1)防噴流形とはいかなる方向からの水の直接噴流を受けても、有害な影響がないものをいう。
(2)耐水形とはいかなる方向からの水の直接噴流を受けても、内部に水が入らないものをいう。
|
|
(2)同上(NK規則)
NK規則では電気機器の保護外被はIPコードによる分類、防爆構造は、耐圧防爆構造、内圧防爆構造、安全増防爆構造、本質安全防爆構造が規定されている。詳細については同規則検査要領表H2.1.3.-1〜-7参照のこと。
|
|
|