8)「来れば来るほど美しくなる宮古島の海辺」海浜清掃ECOバカンスの可能性について
猪澤也寸志 沖縄県平良市(宮古島)エコガイド教育コンソーシアム代表
宮古島から参りました猪澤也寸志と申します。宮古島の場所は皆さんもう御存知だとは思いますが、沖縄本島と台湾の丁度真中当りです。沖縄本島からまだ300キロぐらい南に行ったところに宮古島があります。宮古島は一番高いところで、標高100メートルぐらいの平べったい島で、川がありませんので、沖縄県では一番海がきれいな島、と言われています。あと、砂浜が天然珊瑚がパウダーサンドになった、雪のような砂のあるビーチが沢山ありまして、本当に海を楽しむのでしたら、宮古島はすごくいいところですので、是非お越し下さい。羽田からですと、安い時期ですと3万円台で、2泊3日のリゾート宿泊のツアーとか大阪からだと、2万円台ぐらいで2泊3日で遊びに行けますので、是非何かの機会に起こし下さい。
実は、私今日は自費で参っておりまして、やはり、宮古島から那覇からむこうに行くのは結構安いのですが、宮古島からこっちへくるのは、結構高くて、こちらに3日ほどいると、10数万使うんですけど、じゃあなぜ自費でここまで来て、こういうことをしゃべるか、と言いますと、SOFの海洋政策研究所はお金を1円も出さないんですね。これが、我々すごく、有りがたいんですね。なぜかと言いますと、お金は一時的なものなんですね。あれば使ったら終わるんで、無くなったときに持続性がない、継続性がない、ここでいう、継続的活動になりにくいんですね。ところが、SOFは何を出していただけるか、というと、人を出してくださるんですね。最初に御講演いただいた森野先生、それからもちろん菅原さん、それから後ろでカメラをとっておられる松本さん。本当に熱心に、宮古島のことを思って、いろんなことを御指導いただいたり、現地で汗かいていただいたり、こういう人をだしていただけることで、こういう活動が継続して行く、ということで、僕はこのSOFのやり方が凄くすきなんですね。お金が出ないから、口も出ないんですよね、自由にやらせてもらえる。逆にそれは、凄くオリジナリティを保てて、先程まで報告があったと思うんですが、ひとつ、オリジナルだと思うんですよ、地域地域のですね。
これはやっぱり、このまま継続して行っていただきたいと思っております。ひとはどんどん出していただければ非常に助かります。最後に提案で、今日パネリストとしても喋らせていただけるみたいですので、SOFにして頂きたいことの提案というのは、人と、もうひとつはシンクタンクとしての、これからどういう風にこれを継続させていけるかと言う中で、今後こういうことをやって行って欲しい、ということは、あとのパネリストとして喋らせていただきます。
宮古島の観光の実情は、来れば来るほど観光が侵食されています。見事に海は汚れて行きますし、大きなホテルが建てば、それだけ排水もでますし、ゴミもでますし、観光客は海の中がきれい、ということで、ま、きれいなんですが、ずーっと泳いでいって、素潜りで見るんですね。でも、潮は大潮のときだと、2メートルぐらい水深が変わるのです。行きの場合はすいすい泳げて行って、2−3時間遊んでいると、帰りが潮が引いてかえってこれなくなるんですね。でも、観光客と言うのは、珊瑚の上をギシギシ、この上を歩きながら帰ってきちゃうんですね。やはり、知識が無いんで。そう言う意味でも、観光客が来れば来るほど、観光侵食しているのが沖縄の実情です。われわれどうするか、と言うと、沖縄がこれから自立していく上でも、やはり観光産業と言うのはとても大切なんですが、ただの観光産業というのは、やはり植民地型ですね。旅行代金のほとんどは、飛行機運賃とリゾートホテルの宿泊代金で、地元に落ちるのはわずか、という、こういうタイプの観光をいつまでも続けても、なかなか地元の自立策につながっていかない、ということで、複合観光産業という提案をしています。この複合観光というのは農業とか、水産業、地元のサービス業とか、それから教育ですね、エコ・ツーリズムとか。地元の方が実際に、主生計が立っていくような複合観光です。それを今、目指しています。
その中で、われわれの目標は「観光客が来れば来るほど美しくなる」、これをどういう風に実現して環境省の方もいらっしゃると思いますので、よく御存知だと思いますが・・・。ただ、行政は戸惑いがありまして、エコ・ツーリズムというのは環境への負荷を出来るだけ軽減させるために、ガイドを伴って先程言ったような侵食が無いようにするのですが、そうすると、ガイドの数とか、まだまだ育成されていませんので、扱える観光客数が限られてくるわけですね。反面、沖縄県は観光客を倍増しようと言っています。今、550万観光ですが、できれば、1000万に近づけて行きたいというぐらいの勢いがあります。行政現場では、エコ・ツーリズムを推進して自然を守りなさい、というかたちと、いやいや、観光客を倍増させていきなさい、ということがある。観光現場では、では、どうしたらいいのだ、という戸惑いがあるのですが、それを我々は、エコ・ツーリズムでいいますと、西表島や沖縄北部のヤンバルというところがとても有名なのですが、宮古島は先程言いましたように、平べったく、奥深さがない。川が無いし・・・。では、どうすればいいか。我々は、エコ・バカンスという提案をした。何かと言うと、先程の「来れば来るほど・・・」という経済の車輪と「来れば来るほど美しくなる」という環境の車輪の両方を回す方法はないか、という事ですね。それをエコ・バカンスと定義して、我々は活動しております。その活動のひとつとして、菅原さんに御相談したところ、海浜のゴミを観光客に拾ってもらおうじゃないか、という発想をしたわけです。これって、すごいことで、お金を払って、わざわざ観光に来て、ゴミを拾わせるのか、ということになるのですが、これはもともと砂浜でゴミを拾うということは、遊びの一環ですごく楽しいことだ、という逆転の発想と言いますか、どういう風にやったかというと、簡単に説明します。2回やりました。昨年の2月と6月に80人と60人。観光客だけでなく、地元の子供達も一緒にやりました。共催をSOFの方にしていただきました。宮古島からさらに永良部島という島に渡るのですがそこにトグチ(?)の浜という素晴らしい浜があります。東洋一といわれるビーチですが、そこで、まず、船で観光客と宮古島がわの子供達もこの船にのって永良部島に行きます。そして、裸足で海浜清掃したんです。裸足で歩いているだけで、凄く気持ちがいいんです。ここはすごくきれいなビーチなので・・・。では、きれいなビーチに何の為にゴミを拾いにいくのか、海浜清掃をきれいなビーチでやるのか、というのは、すごくミスマッチのような気がしますが、これが、実は違うのです。なぜかと言いますと、目標はゴミひとつない美ら浜を子供達と観光客で実現しよう、と。どんなにきれいなビーチでも、ごみひとつは落ちていると思うんですね。でも、「みんなで、このきれいなビーチからひとつもゴミがないというところまで、みんなでやろう」というのが、目標なんですね。
なぜ、このような目標を立てるかというと、担い手が子供達と観光客ですね。地元のひとが落としたゴミを観光客が拾うという発想なので、これは、子供達とか観光客が、美しい宮古島をもっともっと美しく保っておきたい、という気持ちに対しては、モチベーションが高いのですね。こんなきれいは浜に、ゴミが落ちていることは許せない、と言いながら、みなさん拾ってくれるんです。そこで、子供達も、こんなきれいな浜にゴミは無い方がいい、ということが解るわけです。宮古島にもとんでもないゴミが落ちているビーチがあるのです。台湾から流れたゴミとか、とてもじゃないが、人間の手ではどうしようもない、というような崖下のビーチとかあるんですが、じゃ、それはだれがやるのか、ということになると、それは、宮古島の人達がやるべきことだと思っています。なぜか、というと、やはり、自分達が出したごみなんで、実は10月1日に宮古島が合併します。宮古島本島には4つの市町村と、伊良部島の方には伊良部町というのがあるのですが、この5つが合併して、新しい新市が10月1日に出来るのですが、今、提案しようと思っているのは、新市になる前に、すべての市町村がまず、徹底的にゴミひとつない市町村を実現しよう、と。きれいにしてから、合併しましょう。ですから、最後の皆さんの役割はゴミをきれいにして、ゴミひとつない市町村で合併して、新しい市にはゴミひとつない、というような運動を、今から約半年ありますので、なんとかそれを達成できるように盛り上げて行こうと今、やっています。その成果としては、岩手県に宮古市というところがありますが、宮古島も宮古市という名前をつけてしまいまして、合併行政の集まりの29人で決めたんですが、彼らが宮古市からクレームがついても、かたくなに宮古市にこだわったので、29名で島の名前を決めるのはおかしい、島の名前は全島民で決めましょう、ということで、われわれが、そういうシンポジウムを開催しまして、市民をあつめ、またその他アンケートなどとりまして、最終的に3日ほど前の合併協議会で3回否決されていたのですが、その場で要請しまして、その場で公式アンケートをとるということに決まって、公式アンケートで多いほうの名前にする、という、それは宮古市と宮古島市なのですが・・・。多分、趨勢としては宮古島市になるような感じです。
要するに、これから合併したあとは、行政がなぜ強かったか、というと中央からの予算があったからできた形です。合併したあとは、行政にお金がないので、やはり、市民が自ら運動として動かない限り、何も前に進まなくなってしまう合併後の状況がありますので、これから、名前は市民で決めた、その新しい合併に向けてきれいな島にするのも、市民が提案をして、やるのは行政職員が一丸となって、そこをやればいいと思っています。行政職員も合併する前なので、市町村の残務処理と新しい行政の処理に奔走しているのですが、行政と市民が一体となって、市町村をきれいにしてから、合併するという方向に今後の提案を持っていきたいと思っています。
海辺を楽しむ、という、これは、地元の方が散歩しながら拾っていただいたり、あと、協賛商品の抽選会をやったのですが、協賛品というのはすごく集まるのですね。チケットで・・・と言うのもあるのですが、われわれ直接的に協賛品を集めたのですが、だいたい、地元の商店やホテルに行き、こういうことをしたいのですが、というと、自分達は忙しいから行けないのですよ、という話がでます。だったら、皆さんがやるので、何か協賛商品が出ませんか、と聞くと、協賛商品ならいくらでも出しますよ、という形で、リゾートホテルの宿泊券とか、おすし屋のにぎり1人前券が10枚とか、いろいろ出るのですが、そういう形で自分達は汗はながせないけれど、協賛はしますよ、というのが出るんです。あとは参加した方に、これは環境チケットということで、教室の方、これは今後ろでカメラ撮っておられる松本さんの力が多大でして、彼の思いが皆さんに伝わって、笑顔になっていく、というのが本当に現れているのですが、その工作教室では、子供達も楽しんでいますし、本当に子供達は夢中になっていきます。観光客も大喜びで一緒にやっています。
来れば来るほど美しくなる、ということで、私達が他にやっていることは、JTBとか大きな旅行代理店がほとんど商品化してもらっていますが、さんご礁の定点観測をシュノーケリングの中で、シュノーケリングを楽しんだあとに、こういう水中ガイドブックで、魚とか珊瑚の名前を学習します。水中でもはっきりと見れるのですね。こういう学習をしながら、大事な珊瑚を定点観測をして守っていこう、ということで、こういう珊瑚の定点観測とか、カヌーで遊んだりします。2005年はマングローブを手がけます。マングローブの植林というと、タイとかフィリピンに行かないと植林する場所がないように思われているようですが、実は宮古島には沖縄最大の干潟がありまして、ヨナハ湾といいまして、700ヘクタールあります。今まで、沖縄本島の抱瀬干潟が4百何十ヘクタールでどういうことか、沖縄最大といわれていたのですが、実は宮古島に大きな干潟がありまして、マングローブの植生域が結構あります。観光客に来てもらって、一本一本植えてもらって、宮古島には山がないので、まさに海辺の森をつくっていこうということで、そこに魚がつき、水がきれいになり、マングローブも植えるのはこんなに細いものを植えるのですが、育てば5年、10年で、南洋備長炭ができます。南洋とつく備長炭はもとはマングローブです。30年ほどすると、桧のようにしっかりとした堅い樹になります。これは建築材として使えますので、こういうのを観光客と共にどんどん植えていこうということで、みんな泥につかって、汗まみれになってやります。第一回目は1月9日に皆さんに来ていただいたのですが、品川のロータリークラブの方々が30名で来ていただいて、約200本のマングローブを植えていただきました。こういう事例もあり、そのロータリークラブの中ではこういう例ばかりではなく、ロータリークラブはどうもお金を出して汗を流さないという習慣があったようなのですが、本当かどうかは知らないですが、これを機会に、やはり汗を流す方がいいという流れがあるようで、今、ロータリークラブの中でも、横の流れでいろいろと出てきているようです。
我々のこれからの計画としては、自然再生推進法(環境省、国交省、農林水産省)というのがあり、例えば、宮古島のヨナハ湾の700ヘクタールの自然再生全体構想というのを作りまして、それが認定されるとその中で実施計画に落し込んでいける、という流れがあります。それは、予算がなければ、出来ないというので、何も進まないので、最初は一部の地域に限定して、観光客と一緒に、パイロット事業でやって行く。その成果を見せながらいずれは、環境省、国土交通省、農林水産省とのからみから、自然再生の公共事業を宮古島に誘致できるようにしよう、ということで、結構中央からの予算が沢山でたので、宮古島も建設業だらけなんです。小さい建設業が多くて、ここにもきっとゼネコンの方もいらっしゃると思うので、失礼なことなんですが、沖縄の事業と言うのはだいたいは元受は中央ゼネコンです。9割方中央ゼネコンで、宮古島に残る事業と言うのはずーと下のほうの風下の事業しかないので、予算はついてもなかなか自立の事業にならないのですが、この自然再生事業というのは、わりと小さいこまめな事業なので、宮古島の建設業者でも十分対応できるので、これからの新市の計画の中ではこういうこともしっかり取り組んで行きたいということで、今やっております。自然再生のパイロットプロジェクトです。
あと、2005年にはこういうことを考えています。企業がボランティア休暇ということを採用していますので、ボランティア休暇でマングローブの再生とか海浜清掃とか、さんご礁の定点観測とか、そういうことを宮古島に来てやっていただけるような御提案とか、自然再生の修学旅行とか、あと、環境だけでなく、自分の健康も再生していこうとするロハスというのが、今人気なんですが、ロハス・ツアーとかです。あと企業のCSR研修につかってもらおうということで、このCSRのCをコーポレーティドという企業の社会的責任ということだけで考えると、これには答えが無いんですね。このCはあと2つ意味がありまして、これは全く僕の私見なんですが、もうひとつはコンシューマの社会的責任。だから、消費者は何を買って、何を使うかということにおいては、社会的責任をもっているんですね。企業が売るからそれを作った企業が悪い、ではなく、それを買ったあなたが悪いんだということが、われわれ宮古島のような閉鎖した島では、特にそういうことははっきり、目立ちます。あと、最後のCはコミュニティーの社会的責任です。企業は消費者に本当に支持される、地域に役立つものを作って行かなければならないと言う時代になっているわけですから、そういうCSR研修を東京の都会のビルのなかで幾らやっても実感できないと思いますので、そういうことも含めて、宮古島でこういう企業のCSR研修というものを今後取り組んで行きたいと思っております。
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