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7)加世田市、枕崎市の海洋環境貢献活動について
菊野憲一郎 鹿児島県加世田市 アトリエ熊、タノカンの家代表
 
 菊野でございます。鹿児島県の加世田市という所から参りました。一昨年から、3回目ですか、今年の1月になりまして、菅原さん、鯉江さん、松本さんのご協力いただきまして、活動をいたしましたので、御報告を致したいと思います。
 場所のご説明を致します。日本列島の一番南の端、薩摩半島と言いますと左側の半島になります。上のほうが加世田市、下が枕崎市です。日本列島のどんずまりでして、吹き溜まりと云いますか、ゴミもいろいろ集まるんですが、人もユニークな人がおりまして大阪や東京からかなり流れ着いている人たちがいます。そういう人達と一緒に活動をしています。
 加世田市の人口は2万4千弱。一番北に万之瀬川という川がありまして、その河口で活動を行いました。加世田市というのは、島津の系列の日新公という人の城下町だったんです。ここでは城下町や砂の祭典というのが有名です。クジラが漂着したことでニュースになったこともあります。
 万之瀬川ですが、自然が豊かなところでして、左端の花ははまぼうという大群落がございます。西日本一の株数を誇っている。右側の蟹は、ハクセンシオマネキと言う名前でして、全国最大の群生地と言われています。下の鳥はクロツラヘラサギという鳥が冬場飛んでくるわけなんですが、世界に5、600羽しかいない。そのうち20羽くらい飛んで来ます。右側はハマグリ、アサリ、大和蜆が採れます。それを生業として採っている方もいます。この河口一帯で、今年で20回目でしょうか、砂の祭典が行われています。鹿児島でも大きな祭りになっております。3日間から5日間ほどで、砂像を作るんですが、昔は海岸でやっていたんですが、だんだん海岸が侵食されなくなって、今は内陸部の方でやっています。海の方からはなれたようなお祭りになっています。
 その期間を利用して一昨年、海岸にテントを張りまして、海上から歩いて5分ぐらいのところで、やりました。右側は前の海岸であさり採り。ゴミを拾って、右下のものはゴミが集まったところです。ここのゴミの特徴は、中国、韓国、台湾からのゴミ、それぞれの言葉が書かれたゴミが相当漂着します。イベントの風景です。左が受付け、風が強いのでテントをはりました。松本さんに用意していただいた工作材料。現地で拾ったもののサンプル。実験的に環境チケットをやってみようと「エコサンドキップ」と名前をつけました。
 これをゴミを拾ってくれた方に一人2枚づつ配った。3日間で230名の参加があり、460枚の券を配りました。1枚は工作教室でだいたい使われ、残りはメイン会場でいろんなサービスを受けてください、と。いろんな食品や商品の割引に使えますよと言ってお配りしたのですが、後で、メイン会場で回収しましたところ、実際に会場で使われたのが20枚ほどしかなかった。実際の地域通貨として回ったのが1枚しかなかった。それは4回回ったという非常に貴重なものでした。ちゃんと裏側に使った人のサインや、店の名前を書いてくださいと言ってあったところ、その1枚には4ヶ所分書いてあった。1枚だけですが、そのイベント会場で、ちゃんと地域通過として回ったものがあったということです。
 イベントでこういう形でまわすのは無理だなと今は思っています。もう少し簡単な、例えば、ペットボトルを熱処理して、コイン状にするなど、もっと簡便にしないと、とてもサインしたりは無理だなと言う風に思っています。実際、思ったような地域通貨の効果は出なかったし、使い方も出来なかったのは残念な結果です。
 次に枕崎市を紹介します。加世田の南側にあり、人口は殆ど同じ位で2万5千ちょっとです。カツオの漁港で有名なところです。鰹節が日本全国1位です。芋焼酎、さつま白波の発祥地です。さつま酒造というのがありまして、今は全国区になってまわっています。かなりの商業都市です。加世田は城下町でして、加世田とは昔から仲が悪いと聞いています。
 漁港の全体像。向うに富士山のように見えますのが開聞岳という山です。更に向うが佐田岬、大隈半島が見えています。このように大変美しい海岸がございます。私共がイベントを行ったのは、漁港の付け根。港のちょっと上のあたり。ここにはウミガメも産卵に訪れます。海岸は砂浜ではなく、玉石の海岸なんです。この南薩摩自体が岩や石の海岸です。鰹節の天日干しをしているところで、これは鰹節の中でも最高級品です。高級料亭にしかいかない、地元で1本3千円位だそうです。右側は、夕日を見ながら入れる露天風呂。自然景観、資源に恵まれたところです。
 漁港の直ぐ上の恵比寿海岸というところでイベントを行いました。テトラポットにびっしり囲まれています。ここは台風銀座でして、毎年2、3個の台風が押し寄せます。煙が見えると思いますが、これは鰹節を燻している煙です。その煙が今の時期だと1日中漂っています。工場は海っぱたにあり、波が押し寄せると大変だということで、テトラポットで囲んであります。
 掃除も、テトラポットに中に子供が入ってやっていたんですが、非常に危険です。危険ですが、ゴミが物凄く溜まっている。溜まって、粉砕され、非常に細かなゴミになって、また出て行く。ゴミの巣のようになっているので、清掃の仕方はこれから、大変な問題になる、と考えています。下は同じですが、玉石の海岸です。玉石と珊瑚のかけらがかなりあります。右はゴミを集め、環境チケットと交換している風景です。45分間ぐらいの作業で、軽トラック2台分のゴミになりました。どこでも同じでしょうが、殆どがプラスティックゴミ。いわゆる燃えるゴミは殆どなかったです。その後、環境チケットを使い、近くの児童館で工作教室をしました。スタッフを含め70人ほどの方に集まっていただいた。会場が狭いせいで、混雑しました。松本さんの方で用意された資材を取るのがケンカ腰でとらないと行けない状況になってしまった。子供に人気があって、殺到するんですね。右下が完成後の記念撮影です。
 私は、このイベントをするにあたり、模造紙で6枚程の説明パネルを用意して、なぜここに集まったのか子供たちに聞いてみたり、重要だと思われるゴミの話などをした。ほっておくと、遊び気分、まあ遊び気分でいいのですが、やはり、ゴミの問題をきっちりと何処かで、伝えて行かなければいけない、と。どういう努力をしないと行けないんだよ、とつたない絵と喋りでやったわけですが、この辺がこれから工夫して、山から川が繋がっているんだという、ビジュアルにどこでも使えるような絵やパネルを工夫して作って行きたい。こういう話は全国に共通な話だと思いますので、そういったものも、みんなと協力して作っていったらいいのではないかと、思いました。これは、会場に用意した地元の材料です。基本的には松本さんの用意された華麗で繊細な物を使いましたが、地元を探すと様々なものが見つかりました。貝、うにの一種の殻、ガラス(シーグラスと溶岩の混ざった物)、右側が小石。山の物としては、松ぼっくり、どんぐり、松葉。九州は竹が海岸に流れ着くので竹、へちまも里の物として工作に利用しました。地元を探すといろいろあるので、こういうことも、これから努力して行き、こういったイベントを面白くしていったら良いのではないかと思っています。
 鹿児島大学水産学部の藤枝繁先生が、鹿児島でずっとクリーンアップキャンペーンというのをされている。2003年の報告書で、鹿児島のゴミはどういう状況になっているかをお話したいと思います。
 国際基準に合った表になっていますが、流出起原別にわけますと、陸上起源が半数を占めている。陸上起源と言いますと、日常生活、レジャー、嗜好品といったものが半分。次に多いのが破片、かけら類、これが45%ぐらいある。これは何かと言うと、起源が分からないゴミ。ほっておかれて日常生活から出たゴミがテトラポットに入りこんだり、砂に潜りこんで分からなくなって、紫外線や波の力で砕かれたゴミが再度散らばる。テトラポットのように二次的にゴミの発生源が出てきてしまっている、という状況だと思います。
 意外と、海上起源類という産業、海のレジャーから出るゴミが6%と少ない。ただ、これは拾えるゴミ。海に潜ってしまったり、海底などに堆積したゴミは分からないんです。これは、藤枝先生にお聞きしたところ、海底のゴミを取るなんて至難の技だよと。海底は平ではなく、いろんな岩礁がある。が、漁業に物凄く影響を与えるので、これが非常に問題であるということです。
 アイテム別のワースト10で言いますと、8位くらいまではプラスティック製品。鹿児島の場合、漁業が盛んなので発泡スチロール。EPSと書いてありますが、発泡スチロールの破片の小さいものと大きいものを併せますと17%になり、一番多くなるという問題が出ています。
 年度別にワーストアイテムを見ますと、2003年には新たに食品の包装や容器が出てきます。こういう今まで無かったものとか、急上昇している物として、シートやコンビニの袋の破片というのがあります。自分達が日常関っている物が流れてきてしまっているというのが伺えると思います。
 藤枝先生としては、今後、この深刻な問題をどうしていくか。いろいろな課題を挙げますと、日常生活ゴミが半分を占めている。これはライフスタイルの改善や啓蒙活動を粘り強くしなければいけない、ということです。現実的な活動を永続的にしなければならないという事です。二次発生の破片、これが45%ぐらいになっているので、これをいかに片付けて行くか。これは未来永劫消えないんです。ほっておけば、細かく砕けて世界中に流れてしまう。更に生物の体内に入りこんでしまう、という問題が起きているわけです。海上起源ゴミというのは、殆どが産業起源の物なんですが、浮いて拾える物以外の問題は全然解決出来ていない。
 例えば、養殖のえさ。ああいうものが猛烈なヘドロとして海底に沈んでいるが、そう言ったものは調べようが無い。海と言うのは閉鎖系で、世界中繋がっているわけですから、海洋ゴミというのは、世界共通の問題となっている。世界中に、クリーンアップキャンペーンなどを通じながら、訴えて行く。努力して行くことが必要と思います。
 鹿児島湾は発泡スチロールゴミが圧倒的に多いのですが、いけすの浮力帯として発泡スチロールの塊を使っているのですが、3千円の物に処理費用が2千円もかかってしまうので、殆ど放置されています。放置され、どう使われているかと言うと小型船舶の防弦材、ショックアブソーバとして使われています。それでもダメになると捨てられる。これは相当細かい粒子になり飛散している。処分には、海水を含んでいるので焼却もできない。ダイオキシンの問題がある。運搬するにもカサがあるので運搬費用もばかにならない。という様々な問題があるので、藤枝先生の方でも、新しい発泡スチロールを圧縮して溶かす方法を考えたりしているそうです。
 考えると、深刻な絶望的な面もありますが、一方で海の大切さ、美しさなどを訴えながら、子供たちにどう、具体的に現実的な活動、有効な活動を伝えて行くか、広めて行くかを考えなくてはならない。
 今日はいろんな方々の御意見も聞け、大変勉強させていただきました。どうもありがとうございました。
 
 
 
 
 
 


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