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海を護るためのASEANイニシアチブ
Wilfrido V. Villacorta
ASEAN事務局次長
 
概要
 ASEAN加盟国の繁栄および加盟国の総人口5億人以上の生活は、東南アジア海域に大きく依存しており、密接な関係を持っている。太平洋からインド洋にまたがるASEAN海域は、世界で最も豊かな海洋資源と沿岸資源に恵まれている。陸地に囲まれたラオス人民民主共和国を除くすべてのASEAN加盟国は、17万キロメートル以上にわたる長い海岸線を持つASEAN海域では、世界の海洋水産物の15%が水揚げされ、世界のマングローブ森林の35%および世界のサンゴ礁の35%が存在する。さらにASEAN海域は、石油やガスの採掘産業などの主要な経済活動もさかんで、海上輸送の重要な航路ともなっている。そのためASEANは、海洋の平和維持、安全保障および環境保護による海洋生物資源と生態系を維持することの重要性を以前から認識している。
 
 ASEAN海域の平和維持、安全保障、環境保護に関わる主なイニシアチブとしては、ASEAN加盟国が域内の海で放射性廃棄物を投棄したり大気中に排出したりしないことを約束する「東南アジア非核兵器地帯に関する条約」や、中国との間で締結された「南シナ海における各国行動宣言」などがある。また、「ASEANビジョン2020」の今後の主な構想は、ASEANが「地域環境保護を視野に入れた持続可能な開発、自然資源の持続性、および地域住民の生活の高い質を実現するための機構を完全に整備した、環境にやさしい組織」に成長することである。さらに「ASEAN海域の海洋水質基準」、「ASEANによる国立海洋保護区の基準」、「ASEANによる海洋遺産海域の基準」などが採択された。
 
海を護るためのASEANイニシアチブ
Wilfrido V. Villacorta
ASEAN事務局次長
 
I. はじめに
 ASEAN加盟国の繁栄および加盟国の総人口5億人以上の生活は、ASEAN海域に大きく依存しており、密接な関係を持っている。太平洋からインド洋にまたがるASEAN海域は、世界で最も豊かな海洋資源と沿岸資源に恵まれている。陸地に囲まれたラオス人民民主共和国を除くすべてのASEAN加盟国は、17万キロメートル以上にわたる長い海岸線を持つ。ASEAN海域では、世界の海洋水産物の15%が水揚げされ、世界のマングローブ森林の35%および世界のサンゴ礁の35%が存在する。さらにASEAN海域は、石油やガスの採掘産業などの主要な経済活動もさかんで、海上輸送の重要な航路ともなっている。そのためASEANは、海洋の平和維持、安全保障および環境保護による海洋生物資源と生態系を維持することの重要性を以前から認識している。
 
 本論文では、ASEANが海洋平和維持および環境保護の推進のために取り組んでいる主なイニシアチブの一部を紹介する。
 
II. ASEAN海域の平和と安全保障の推進
 ASEANは、テロ行為や国境を越える犯罪によってASEAN海域の平和、安全保障が以前にも増して深刻な脅威にさらされていると認識している。ASEANはテロ行為や国境を越える犯罪の防衛対策として、自国の政治機構と制度機構だけでなく、他国の機構、地域機構および国際機構との連携を通して積極的に協力体制を推進している。このうち注目に値するイニシアチブを、次にいくつか紹介する。
 
1. ASEAN地域フォーラム(ARF)
 
 2004年3月30−31日にマニラで開催された第2回ASEAN地域フォーラム(ARF)の会議「テロ対策に関するISM(Inter-Sessional Meeting)」では、現状において、海上輸送のインフラおよびサービスが、テロ攻撃を受ける可能性が最も高い標的として位置づけられた。船舶や海港が攻撃を受ければ、大規模な人命損失、資産被害が生じる可能性がある。テロ攻撃の標的が陸地から海洋に移る可能性に対する懸念を、国際社会が一致団結して訴えるべきである。会議では、海上安全保障分野におけるARFの取り組みを全面支援することが明言された。
 
 国家レベルでは、この会議の参加者らは自国で導入された様々な対策を発表した。これらの対策に含まれるものとして、海上安全保障を監視する調整機関の設置、海上通信システムと海港施設の充実、そして極めて特殊な訓練プログラムの実施が挙げられる。
 
 海上安全保障における2国間、地域間そして国際的な協力強化の重要性を認識する一部の国家は、税関協力や国境警備による巡回などの重要分野において協定を結んでいる。また、海上安全保障の国際協力体制を、航空輸送サービス部門で実施されている安全保障の国際協力体制に近づけることを呼びかける参加者もいた。
 
 参加者らは、海洋での海賊行為と武装略奪の撲滅に本腰を入れ、地域協力を促進する多国間の枠組みを構築する必要性を指摘した。
 
 また、ASEAN地域フォーラムはジャカルタにおいて2004年7月2日、「対テロ対策としての輸送安全強化の声明(Statement on Strengthening Transport Security Against International Terrorism)」を発表し、次の事項を呼びかけた。
 
(i)国際海事機関(IMO)の「船舶と港湾施設の国際保安コード(ISPSコード)」で定められた責務を、合意期日である2004年7月1日までに完全かつ効率的に実施する。
 
(ii)特に海賊行為、海上テロや航空テロに対する沿岸国の組織的な能力構築を強化するために、適切なシミュレーションおよび合同演習を実施する。これにより、海上・航空の安全保障・安全確保の対策について効率的な法的調整ができる。
 
(iii)輸送ネットワークに対するテロ攻撃の検討、協同研究の実施、専門知識の交換、およびテロ対策のための手段・技術・最善策についての提言を、会議、セミナー、カンファレンスなどにおいて、または立法規制とその他の法的規制および科学的研究結果の交換によって実施できるよう、研究機関の間での協力関係を促進する。
 
(iv)個別の輸送安全保障サービスが、適切な訓練を受け、適切な設備を所有できるよう支援する。
 
(v)コンテナ輸送の安全体制強化のための対策を継続して構築そして調和させる一方で、国内の法制システムと、貿易の不必要なコスト増や貿易業務の混乱を最小限に抑える必要性を念頭に置く。
 
(vi)IMOおよび国家や地域の各枠組み(特に輸出規制政策を促進する枠組み)の庇護のもとで、海賊行為や違法コンテナ密輸などのその他の国境犯罪を撲滅するための協調連携を継続して促進する。
 
 2003年6月18日にプノンペンで発表された「海賊行為及び海上保安への脅威に対する協力に関するARF声明」によって、船舶に対する海賊行為および武装略奪行為の抑制に関連する国際法、国際勧告およびガイドラインを効率的に実施するようARF参加国に呼びかけた。これらに含まれるのは、「海洋法に関する国際連合条約」、1988年「海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」、「大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書」、船舶に対する海賊行為および武装略奪行為の防止および撲滅を目指したIMOの勧告およびガイドライン、1974年「海上における人命の安全のための国際条約」の特にXI-2章(新章)と「船舶と港湾施設の国際保安コード(ISPSコード)」。そして各参加国は、この声明の目的を果たすための連携および協力を強化することも盛り込まれている。1988年「海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」および「大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書」に未参加のARF参加国は、できる限り早い時期に参加する意思を表明している。
 
2. ASEAN海域の輸送協力
 
国境を越える犯罪についてのASEAN行動計画
 
 ラオスを除くASEAN加盟国は海賊行為について、海上での海賊行為および武装略奪行為に関するすべての国内法と規制を統合し、情報交換のためのフォーカル・ポイントの一覧を保持することになる。さらにこの行動計画には、ASEANが国際刑事警察機構(INTERPOL)およびその他のシンクタンクと連携して、東南アジア海域における海賊行為の発生傾向およびその手口の調査の着手、海賊行為撲滅のための多国間または2国間の法的処置構築の検討、海賊行為取締りの組織的巡回のための作業計画の確認および調整が盛り込まれている。これらの責務の実施状況については、「ASEAN国境を越える犯罪に関する閣僚会議」が再検討および監視している。
 
ASEAN海上輸送についてのワーキンググループ
 
 ASEAN輸送閣僚会議(ASEAN Senior Transport Officials Meeting)(ASEAN-STOM)の機構であるASEAN海上輸送についてのワーキンググループ(MTWG)の第8回会議において、1999−2004年海上輸送についてのASEAN行動計画(ASEAN Plan of Action on Maritime Transport)が再検討され、2005−2010年ASEAN輸送行動計画(ASEAN Transport Action Plan)の草案が話し合われた。この新しい行動計画の海洋分野には、IMO会議への支持および実施を促すようASEAN加盟国間の協力を強化することによって、海上の安全性と安全保障、および海洋保護の向上を目指すという目的が盛り込まれている。MTWGは、会議のオブザーバーとしてIMOを定期的に受け入れることに合意した。
 
 MTWGの主導によってIMOは、ASEAN加盟国がIMO規約への適合や受け入れのために海事法を起草/改正する事業に対し、技術支援を提供した。その結果としてIMO会議に関するASEANフォーラムが設立され、2004年4月26〜27日にシンガポールで開催されたフォーラムの会合では、ラオス(内陸国)を除くすべてのASEAN加盟国が、ISPSコードへの適合状況と2004年6月1日の発効までの進捗見通しについて概要を報告した。近いうちにASEANはIMOと共に4つのフォローアッププロジェクトを実行することになる。それらのプロジェクトとは、(a)海洋管理の優良認証を求める海運局のためのガイドラインの作成、(b)ISPSコード実施のためのワークショップ、(c)海運局の管理担当者および法務職員のための訓練コース、(d)「油による汚染に関わる準備、対応及び協力に関する国際条約」および「危険物質及び有害物質による汚染事件による準備、対応及び協力に関する議定書(仮称)」についての地域ワークショップ、(e)船舶検査実施の強化のための監査ベースのシステムと実施手順の導入を検討する海運局向けガイドラインの作成、である。
 
海上輸送産業
 
 2003年9月25−27日にインドネシアのバリで開催されたASEAN港湾協会の第24回運営委員会会議では、ISPSの発効日2004年7月1日までに進める段階的な準備が話し合われた。APAは、港湾の関係者や職員らが港湾施設保安検査および港湾保安計画の作成について理解できるよう、海上安全保障に関する一連のワークショップ、セミナーおよび会議を開催した。
 
 ASEAN船主協会(FASA)は、2003年12月3日にマニラで開かれた第29回総会において、海賊行為、武装略奪、海上安全保障、避難場所、IMO会議の批准および実施、ASEAN Shipping Directoryおよびアジア船主フォーラムについて話し合った。FASAは、ASEAN加盟国間(特に、マラッカ海峡とシンガポール海峡に隣接する沿岸国)に対し、水上警察と海軍巡回を連携させることで監視強化することを要請した。またFASAはASEANに対し、海賊との闘いにおける深刻な懸念と行動強化の要望を表明している。
 
3. ASEAN対話国との協調
 
中国−交通輸送に関する覚書に基づき、ASEANと中国は政策と情報交換の強化を行い、関連するIMO会議の動向における海事安全保障の取り組みについて、共同プロジェクトや共同行動を実施する予定である。
 
欧州連合(EU)−2002年2月25−26日にマニラで開催されたEU-ASEAN海上安全保障に関する専門家会議で、法的側面およびリソースの制約について話し合われた。海上安全保障の複雑な問題を受け、同セミナーの参加国は法的な定義づけの継続的適用および報告手順の改善の必要性を強調した。法的な定義づけに関し、国内法への統合後に定義どおりに実施されないという問題がある。組織整備、運営の円滑化および人材育成のための財政的制約が、国境をこえる犯罪の撲滅への取り組みを妨げている。APAは、海上輸送および協同輸送分野でのASEAN−EU協力を基盤とした資金調達を期待する2つのプロジェクト、「ISPSコードに基づいた港湾の義務と責務についてのセミナーおよび訓練」および「リアルタイムの港湾情報システム統一計画」を提案している。
 
日本−ASEANは、日本と複数の連携活動を実施している。海上輸送の安全保障プログラムに関して、2003年12月16−17日に東京で開催されたASEAN−日本セミナー「海上安全保障および海賊行為撲滅(Maritime Security and Combating Piracy)」では、ASEAN加盟国と日本による改正SOLAS/ISPSコード遵守のために、港湾保安職員訓練に関する協力を促進することで合意した。また、指導者教育、および改正SOLAS/ISPSコード実施の経験と海事安全保障政策の情報交換のためのセミナー開催について、専門家グループが可能性の検討を続ける予定である。
 
米国(US)−2004年4月1日にマニラで開催されたASEAN−USのワークショップ「ASEAN海域内の海賊行為対策およびテロ行為対策の連携強化」では、「海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約および大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書」の実施を目指した協力が必要であることが強調された。これらの分野での協力は、2003年6月に採択された「ASEAN−US反テロ作業計画」に基づいて行うことで合意した。米国は、米太平洋軍司令部が実施した任務をはじめとする海上安全保障協力を促進する活動を提示した。
 
4. 南シナ海における各国行動宣言(Declaration on the Conduct of Parties)
 
 ASEAN加盟国および中華人民共和国は、南シナ海域における平和、安定性、経済成長および繁栄の促進には、同地域で平和的、友好的そして協和的な環境を推進する必要があることを認識し、2002年11月2日に、カンボジアのプノンペンにおいて「南シナ海における各国行動宣言(Declaration on the Conduct of Parties in the South China Sea)」を採択した。中でも、参加国が合意した事項は次のとおり。
(i)南シナ海における航海および上空通過の自由の尊重およびその遵守義務の再確認。
(ii)領土および管轄権に関する論争の解決に軍事的手段でなく平和的手段を用いる。
(iii)論争を複雑化または悪化させ、平和と安定性が損なわれるような行動は自制する。
(iv)次の分野における協力関係構築を検討または実施する。
a. 海洋環境保護
b. 海洋科学研究
c. 海上での航行および通信の安全確保
d. 捜索救助活動
e. 薬物密輸、海上の海賊行為と武装略奪、および武器密輸を含む国境をこえる犯罪の撲滅。
 
III. 海洋環境保護
 「ASEANビジョン2020」の今後の主な構想は、2020年までにASEANが「地域環境保護を視野に入れた持続可能な開発、自然資源の持続性、および地域住民の生活の高い質を実現するための機構を完全に整備した、環境にやさしい組織」に成長することである。この点において、海洋環境および沿岸環境の保護は、このASEAN構想の実現に重要な要素である。
 ASEANの沿岸環境および海洋環境には、広範囲にわたってマングローブ森林、サンゴ礁および海草が存在するため、多くの種類の海洋生物が産卵および孵化する生育場所となっている。これらの生育環境は、特に人間にとっての食糧供給源として、また雇用創出および経済福祉に貢献するだけでなく、沿岸防壁や汚染フィルタの役割も果たしている。マングローブ、海草およびサンゴ礁は現在、この地域に見られる公害、搾取および過剰開発によって脅威にさらされている。陸地および水上で行われる活動に起因する沿岸部と海洋の公害も、ASEANの重要課題である。ASEANが直面している難題は、現在そして将来の世代のために、ASEAN地域の開発と自然資源保護のバランスを最適に保つことである。
 政府間組織として、ASEANの地域協力が果たす役割は、政策的枠組みを策定することと、海洋環境と沿岸環境の保護に参加する様々な利害関係者を政治的・組織的に支援することである。この点において、ASEANは次の2つの主要点を強調した。
 
(i)海洋域および沿岸域の総合的な保護および管理が実施できるよう、地域的枠組みを構築し、地域調整を改善する。
(ii)陸地および水上での活動に起因する汚染から海洋環境を保護するために、地域行動計画を作成する。
 ASEANは、地域に根ざした政府間組織としての任務の1つとして、沿岸域と海洋域の総合的な保護および管理を目指した地域調整を促進する組織的枠組みと政策的枠組みをすでに確立している。「沿岸環境および海洋環境に関するASEANワーキンググループ(AWGCME)」が技術や保護法実施に関する問題を監視する一方、ASEAN環境閣僚およびASEAN環境政府高官(ASEAN Senior Officials on the Environment)は、AWGCMEの活動推進に必要な政策的および戦略的な指導を行う。AWGCMEは、国内の沿岸問題と海洋問題の調整を担当する各国のフォーカル・ポイントで構成される。現在、保護活動が優先的に実施されている分野は、サンゴ礁、海草およびマングローブ、タンカーのヘドロとバラスト水、固形および液体の廃棄物と有害廃棄物の管理、海岸侵食、エコツーリズム、海洋保護区域を含む沿岸湿地、そしてクリーン・テクノロジーである。国家レベルの保護活動実施と情報交換が促進されるよう、これらの各分野にフォーカル・ポイントが設置されている。
 
 環境担当のASEAN閣僚が次の基準を採択した。
・ASEAN海域の海洋水質基準
・ASEANによる国立海洋保護区の基準
・ASEANによる海洋遺産海域の基準
 海洋水質基準は、水生生物と人間を保護する目的で、17種類のパラメーターの値によって水質レベルを示すが、国立海洋保護区およびASEAN海洋遺産海域の基準には、既存および新規の保護区域の指定基準と管理基準が含まれる。
 
 地域の海洋環境基準の導入は、地域の海洋生態系(サンゴ礁およびマングローブ)、種の多様性および水産業(水産物消費による人間の健康も含む)の保護に役立つだけでなく、海洋牧場(海草、魚類、甲殻類)の維持、エコツーリズム(海水浴、ダイビング、美しい景観)の促進、および産業活動(鉱業、冷却水の抽出、廃水排出)の規制を支援する。
 
 採択された基準は、特に海洋汚染規制などの海洋環境管理の目的で、ASEAN加盟国の関連当局によって国内基準に統合されるか、国内の海洋環境基準作成の基盤となる。これらの基準の導入によって国家レベルの一致団結した保護活動が促されるため、ASEAN共有海域が保護できると考えられている。
 
 ASEAN環境相は、ASEAN遺産公園などの国立保護区のリスト作成および適切な管理を促進する「遺産公園に関するASEAN宣言(ASEAN Declaration on Heritage Parks)」も採択した。この宣言の目的は、ASEAN地域の豊かな種の多様性を保護するために、陸・海の両方における極めてまれで典型的な生態系を持つ保護区のネットワークを構築することである。もう1つの目的は、ASEAN遺産公園の保護および管理のための地域協力を促進することで、地域の保護・管理行動計画の作成および実施だけでなく、国家による保護法実施の努力を補いそして支援する地域機構の設置も可能になる。この宣言はまた、種の多様性の減少率を2010年までに大幅に抑制するという「持続可能な開発に関する世界首脳会議」の要請事項だけでなく、典型的な生態系を持つ海洋保護区を包括的かつ効率的に管理する国家システムおよび地域システムを2012年までに構築するという「生物多様性条約」の作業計画も支援する。
 
 ASEANは、地域の様々な組織が取り組んだ無数の活動を認識しており、保護法の実施と能力構築に向けた協調的アプローチが可能になるようこれらの組織との協力を促している。ASEANは任務の1つとして、地域活動の計画および実施のためのフォーラムを促進そして開催するだけでなく、これらの活動が地域、国家および政府の各レベルの組織を介して確実に受け継がれることを監視する重要な立場にいる。
 
IV. 結論
 海洋の平和、環境保護、および持続可能な資源管理に関する問題に、総合的そして分野をまたがった方法で取り組むという会議の方針は、これらの環境に依存する国家が繁栄を維持するためには適切であり不可欠でもある。すでに概説したASEANの取り組みにおいて、この方針が実践されていることがわかるが、その中でも特に、海洋管理に関する政治的支援の先導および信頼関係と自信の構築においてこの方針の効果が顕著である。海洋環境保護および持続可能な資源管理もまた、沿岸国間の協力を得て総合的に取り組まれており、共有海域から受ける恩恵と海洋保護の最適なバランスを維持できるよう地域調整および地域行動計画の作成が実施されている。これらのイニシアチブおよび提案が、具体的な事業・活動の企画および実行によって実現されるよう、今後も会議参加国からさらなる支援を受けることが期待されている。


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