「沖ノ鳥島における経済活動を促進させる調査団」に参加して
(財)日本水路協会 海洋情報研究センター 今西 孚士
はじめに
何故、私が沖ノ鳥島調査団のアドバイザーとして参加したか? 私は平成16年4月まで海上保安庁海洋情報部に勤務していた。海洋情報部ではご承知のとおり海図作製のため測量・維持管理を行なっており、当然ながらわが国の領土である沖ノ鳥島についても海図等が刊行されている。これらの一環として、沖ノ鳥島において昭和60年代頃から潮位観測が行なわれており、現在も継続されている。毎年1回データの取得並びに機器メンテナンスのため測量船で調査を実施している。このため、これまで5〜6回沖ノ鳥島に上陸した経験から日本財団の要請を受け参加することとなった。
昨年11月に実施された「沖ノ鳥島の有効利用を目的とした視察団」及び今回の調査団にアドバイザーとして参加して、これまでは水路業務の立場からしか見ていなかった沖ノ鳥の見方が少し変わってきたので、その点について報告します。
1.短艇水路の状況
沖ノ鳥島は東京から約1,700Km、台湾より南に位置する南海の孤島である。広さは、東西約4.5Km、南北1.7Km、周囲11Km。形状は、すり鉢状に根を張った、優に富士山を凌ぐ形状であり、付近の水深は4,000m〜7,000mに達する環礁である。
短艇水路は「昭和8年の測量によれば環礁の西部南側に礁内に通ずる短艇水路があり、その幅は約15m、水深6m位で、環礁の外側15〜20mは浅水の岩棚である」との記述があり、いつ作られたか定かでないがこの時以前であろう。潮の干満による海水の出入りがあり潮流は2ノットから4ノットくらいの流れがある。
下の写真のように海面状況が穏やかな
ときは水路が鮮明に把握できるが、何し
ろ大洋の孤島であり、わずか数回の経験
であるがこのような状況が1度あったか、
無かったかである。すなわち、礁嶺付近
は砕波帯となって常に白波が立っている
状況である。水路は母船から比較的視認
することができるが上陸用舟艇では視線
が低く、且つ波間に入るため確認するのに苦労している。
沖ノ鳥島全景
昨年11月の上陸の際は、北東の風(8〜10m)とうねりで北側にぶつかった波浪が南側に回り込む形となり白波が絶え間なく立ち、水路の入り口を確認することが困難な状況であったが水路両端の波立ちから、ほぼ水路入り口を確認することができ進入することができた。
今回は、比較的穏やかな状況であり水路の確認は容易であったのは幸いであったが、満潮時と干潮時では水路入口の状況は干潮時が確認しやすい。また、標識を敷設するのが賢明の策である。
2.礁内の状況
現在、礁内の構造物は東小島、北小島と観測基盤がコンクリート護岸と鉄製消波ブロックで保護されているほか観測施設がある。礁内での航行は船外機付のゴムボート並びに小型作業艇(プラスチックボート・写真参照)くらいでないと浅所が多く、危険である。一応の目安であるが潮高が1m以上あれば東小島、北小島と観測基盤へは容易にたどり着けるが、少なくとも潮高が0.5m以上は必要であろう。その他の場所は珊瑚礁を避けて航行するのが賢明である。航洋丸には5〜6t位の作業船を搭載してあり、この艇も使用した礁内での航行可能な区域は水路入り口から観測施設までである。主に資機材並びに人員等の輸送に従事し効率的であったが、運航において礁内を熟知していないとかなりのリスクが伴う。 礁内の流れについては、これまで測流されたことがないのでわからないが今回、日本海難防止協会の大貫主任研究員が漂流ブイを放流(2〜3時間位)して観測されていた。 その時の状況では潮時が高潮から低潮及びほぼ低潮時に観測された。流向は、ほぼ北東方向へ流れていたが解析結果が待たれるところである。
東小島護岸完成時 (平成元年)
北小島護岸完成時 (平成元年)
観測施設
3.礁外の状況
環礁の外側は急峻な地形で一気に1000〜1500mまで落ち込んでいるが、西部側に礁嶺から500m位の距離に比較的なだらかな岩棚がある。水深は20〜30mで、今回、日本サルベージの航洋丸(2096t)はアンカーを投入して錨泊した。この時の状況から航洋丸は船首をほぼ南東方向に向けて2日間静止状態で向きを変えることはなかた。この地点は潮流より海流が卓越しており、付近海域は北赤道海流の北縁に位置していると推測される。また、余暇に船上から釣りをしている者や、浮流物の動きから見て約1ノットから1.5ノット位の流れが生じていると推定されたが、航洋丸には超音波流速計が搭載されてなかったのが残念であった。
搭載作業艇
4.提案
今回の調査団の目的は、沖ノ鳥島における経済活動での利用をより強く推進するため、島の再生に関するサンゴ等といった水生生物の生育調査や島の形成状況、海上交通の安全確保のための灯台設置、海水の温度差を利用した海洋温度差発電の実用化に関する調査を行なうことをであった。今後、これらの調査含めあらゆる経済活動の調査や、実用化が実施されるとするならば礁内の状況を詳細にしていく必要がある。すなわち、海図等の整備が必要となってくる。現行海図の礁内の情報(水深等)は戦前の情報がほとんどであり、情報量も極めて少ない、前述したように経済活動を調査、実施していく上では充分とは言えない。
そこで、沖ノ鳥島の情報図(水深、地形、礁内外海潮流、サンゴや水性生物の生息状況等々)を作製することを提案したい。
今回の調査団に参加するにあったて、沖ノ鳥島に関する情報がどれだけあるかなと少し調べてみたが文献では8件、海図や海底地形図、礁外の測量原図等があったが、これらは恐らくほんの一部であると推定される。今後の調査等に資することを目的として、これら個々の情報を収集・整理し、各分野のユーザー等に広く利用、活用を図れるよう提案したい。
おわりに
昨年11月と今回と、二回も沖ノ鳥島参加できましたことは思いもよらぬことで、私とっては、これまで従事してきた違う分野からの沖ノ鳥島を考えることができたことは大変勉強になったと感じております。今回の参加者の一員に機会を与えて下さった日本財団関係者にお礼申し上げます。
なお、当協会では沖ノ鳥島に関係する資料として「沿岸の海の基本図(沖ノ鳥島海底地形図)」や「電子潮見表(沖ノ鳥島を含む潮汐予報)」いずれもデジタルデータを保有しておりますので、今後の事業にお役立ていただきたく提供させていただきます。
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