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3.航路標識の現状等
3.1 我が国の航路標識
 航路標識には、光や形象を利用した光波標識(岬の灯台、港の灯浮標等)、電波を利用した電波標識(ロランC局、ディファレンシャルGPS局、無線方位信号所等)、霧がかかった時に音で位置を知らせる音波標識(霧信号所)、電光表示板などを利用した標識(船舶通航信号所、潮流信号所等)の種類があり、これらは第4表のとおり分類され、平成16年度末現在、海上保安庁所管の航路標識は、総計5,589基となっている。
 また、これら以外にも、海上保安庁以外の者が、海上保安庁長官の許可を受けて設置した航路標識(許可標識)が約1,160基となっている。
 
3.2 航路標識設置の一般的な考え方
 灯台等の航路標識は、航路標識法に定められているように「船舶交通の安全を確保する」及び「船舶の運航能率の増進を図る」ためのものであり、次の要件を総合的に考慮したうえで整備されている。
(1)当該海域の船舶通航の実態(通航量、船舶種別、通航状況等)
(2)当該海域付近における海難発生状況及び近傍の航路標識設置状況
(3)船舶運航者などからの要望
(4)気象・海象条件
(5)設置の費用対効果
 
第4表 航路標識の種類(平成16年度末)
種類 機能 基数
光波標識 夜標 灯台  船舶が陸地、主要変針点又は船位を確認する際の目標とするために沿岸に設置した構造物及び港湾の所在、港口等を示すために港湾等に設置した構造物で、灯光を発するものをいう。 3,345
灯標  船舶に岩礁、浅瀬等の障害物の存在を知らせるため又は航路の所在を示すために岩礁、浅瀬等に設置した構造物で、灯光を発するものをいう。 466
照射灯  暗礁、岩礁、防波堤先端等を照射して、船舶に障害物の存在を知らせるために設置したものをいう。 158
導灯  通航困難な水道、狭い湾口等の航路を示すために航路の延長線上の陸地に設置した高低差のある2個以上の構造物で構成され、かつ、灯光を発するものをいう。(船舶はこれら2個以上の灯光を一線に見ることによって、航路に導かれる。) 51
指向灯  通航困難な水道、狭い湾口等の航路を示すために航路の延長線上の陸地に設置した構造物で、白光により航路を、緑光により左げん危険側を、赤光により右げん危険側をそれぞれ示すものをいう。 18
灯浮標  船舶に岩礁、浅瀬等の障害物の存在を知らせるため又は航路の所在を示すために海上に浮かべた構造物で、灯光を発するものをいう。 1,306
昼標 立標
浮標
 機能が灯標及び灯浮標と同じで、灯光を発しないものを、立標及び浮標という。 40
32
電波標識 ロランC局  船舶がロランC受信機によって船位を測定するための電波を発射する施設をいい、3から6局で1チェーンを形成している。(船舶がチェーン内の主従局から発射される電波の到達時間差をロランC受信機で測定して船位を求める。) 有効範囲 4
昼夜間
2,000km
ディファレンシャルGPS局
(DGPS局)
 船舶がDGPS受信機によってGPSにより測定した位置の誤差補正値及びGPS衛星の異常情報を得るための電波を発射する施設をいう。 昼夜間
200km
27
無線方位信号所 中波
ビーコン
 船舶が方向探知機によって送信局の方位を測定することができるように、常時又は定時に電波(中波)を発射する施設をいう。 昼夜間
200km
17
レーマーク
ビーコン
 船舶のレーダー映像画上に送信局の方位を輝線で表すように電波(マイクロ波)を発射する施設をいう。 昼夜間 37km 45
レーダー
ビーコン
 船舶のレーダー映像画上に送信局の位置を輝線符号の始点で表すように、船舶のレーダーから発射された電波に対応して電波(マイクロ波)を発射する施設をいう。 昼夜間 17又は9km 30
音波標識 霧信号所  霧、雪等により視界の悪い時、船舶に灯台等の位置を知らせるために音による信号を発する施設をいう。 187
その他 船舶通航信号所  レーダー、テレビカメラ等により港内、特定の航路及びその付近水域又は船舶交通のふくそうする海域における船舶交通に関する情報を収集し、その情報を無線電話、一般電話又は電光掲示板により船舶に通報又は表示する施設をいう。 25
潮流信号所  潮流の強い海峡の潮流の流向及び流速の変化を形象、灯光、無線電話、一般電話又は電光表示板により船舶に通報する施設をいう。 8
 
4 航路標識の必要性の検討
4.1 沖ノ鳥島と航行ルート
 海上保安庁海洋情報部発行の「近海航路誌―書誌第402号(平成8年7月刊行)第2編「航路記、第8節 オーストラリア」の太平洋横断航路についての記述を引用させていただくと、「日本各主要海域からオセアニア方面へ向かう船舶の主要接続点までの航路を記載する。・・・」として、次のとおり掲載している。
 沖ノ鳥島に関しては、「屋久島南方からの航路」の記述の中で、「屋久島南西約24Mの大隈平瀬灯標(灯高33m)の東北東約9Mから沖ノ鳥島(20度25分N136度05分E)に注意しつつ、北太平洋を南南東に進み・・・」となっている。
(図-3参照)
 
図-3 沖ノ鳥島と航行ルート
(拡大画面:167KB)
 
 また、具体的な沖ノ鳥島付近の航行ルートについては、先回調査時のレポート(大貫 伸:日本海難防止協会主任研究員)から、引用させていただくと次のとおりである。
(1)豪州北西岸及びニュージーランドから、北関東・東北・北海道の太平洋沿岸に至る鉱石運搬船の航路
(2)豪州東岸から、中国地方及び九州沿岸に至る石炭運搬船の航路
(3)フィリピン南岸及びインドネシア東岸から、関東・東北・北海道の太平洋沿岸に至る木材運搬船の航路
(4)豪州東岸から、韓国沿岸に至る石炭運搬船の航路
 
4.2 船舶通航状況
 日本海難防止協会が、平成13年度に調査を行った「日本沿岸域航行環境調査報告書」を解析した結果、沖ノ鳥島周辺(60海里)海域内を航行する外航商船は、年間約1,000隻に達するものと推定されるとしている。
 今回の調査において、可能な限り航洋丸の船橋に立ち、目視及びレーダー等航海計器を利用し船舶の通航状況を調査した。航洋丸は3月25日門司港を出航し豊後水道を出てコースラインを164度にとり南下航行していったが、27日の0935、北緯23度17分、東経135度40分の地点で、巨大コンテナ船(長さ300m、台湾高尾港向け、仕出し港は不明であったが、コースからみて米国からのものと思われる)を認めた以外、その後は航行船舶を認めることはなかった。この状況は調査を終え東京港向けコースライン19度で帰途についた30日においても同様であった。
 また、最近、海上保安庁が行った調査では、平成17年4月16日から4月24日までの7.5日間に沖ノ鳥島周辺半径30海里海域で認めた船舶は、第5表に示すとおり漁船3隻(述べ16隻・日)及び商船等9隻の計12隻であり、商船等の内訳は、LNG船、LPG船、油タンカー、コンテナ船、自動車専用船、バルク運搬船等であったとのことであり、現状では航行船舶は多いとはいえないと思われる。
 一方、図-4に示すとおり、商船等が沖ノ鳥島からどの程度離れて航行しているのか、その分布を見てみると、沖ノ鳥島から20海里以上離れて通航している商船と、10海里以内の海域を航行している商船に大きく分かれており、大型危険物積載船等が比較的沖ノ鳥島に近づいて航行している実態が明らかとなった。
 
第5表
日付 時刻 沖ノ鳥島からの位置 針路 速力 船種 船名 船の長さ 総トン数 国籍 仕出港 仕向港 参考事項
4/16 1230 120.2°1.4海里 操業中 漁船 A 船 14 13 日本     レーダー及び目視
宮崎県     4/18 移動
4/17 0730 101.1°1.5海里 操業中 漁船 B 船 14 12 日本     レーダー及び目視 
宮崎県     4/22 2025 移動
4/17 0730 101.1°1.5海里 操業中 漁船 C 船 14 11 日本     レーダー及び目視
宮崎県     4/23 1800操業中
4/17 1309 190.8°2.1海里 231.4 18.9 LNG船 D 船 282 102,390 日本 川崎 BLANGLANCAN(インドネシア) AIS
4/18 1714 230°27.8海里 158 14.1 不詳         AIS
4/18 2310 209.2°28.6海里 334.8 12.1 自動車専用船 F 船 164 23,107 パナマ   ULASN
KOREA
AIS
4/19 0052 264°6.4海里 26 13.4 LPG船 G 船 224 42,341 日本   横浜港 AIS
4/20 0730 242°22.6海里 241.5 12.8 バルク運搬船 H 船 190 27,656 パナマ   CAPE
PLATTERY
AIS
4/20 2357 226.6°21.2海里 135 11.6 コンテナ船 I 船 119 6,543 パナマ   SAIPN AIS
4/22 0143 321.8 14.5 不詳         AIS
4/22 1755 316.1° 9.7海里 39 14.8 タンカー J 船 241 56,311 リベリア   SAN FRANCISCO AIS
4/23 0950 232.6° 6.3海里 327 13.8 バルク運搬船 K 船 167 16,252 韓国   INCHEON/S KOREA AIS
 
図-4







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