(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年9月9日19時00分
北海道浦河港西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第十八清宝丸 |
総トン数 |
19トン |
全長 |
21.86メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
467キロワット |
3 事実の経過
第十八清宝丸(以下「清宝丸」という。)は、平成2年12月に進水した、いか一本つり漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人(昭和50年4月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.8メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成15年9月9日09時00分北海道浦河港を発し、同港西方沖合の漁場に至って操業を行い、いか900キログラムを漁獲して操業を終え、18時02分少し前浦河港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から260度(真方位、以下同じ。)11.7海里の地点を発進し、同港に向けて帰途に就いた。
ところで、浦河港西方沖合の、南防波堤灯台から248.5度2,000メートル、253度2,330メートル、287度2,100メートル及び289度1,750メートルの各地点を順次結んだ線により囲まれる海域は、定置漁業の漁場区域となっており、同区域内に丘網及び沖網と称するさけ定置網がそれぞれ設置され、同区域の南端に白色閃光の簡易標識灯(以下「標識灯」という。)が設置されていた。
また、A受審人は、毎年1箇月間ほど浦河港を基地とする日帰りの操業を繰り返しており、前示定置網及び標識灯の存在を熟知し、平素同港に出入港するときには、標識灯の南方沖合0.5海里ほどを航行していた。
発進したとき、A受審人は、単独の船橋当直に当たり、針路を標識灯の南方沖合0.5海里の地点に向く084度に定めて自動操舵とし、折からの西流により3度左方へ圧流され、10.8ノットの対地速力で進行した。
18時52分A受審人は、南防波堤灯台から257.5度2.6海里の地点に達したとき、ほぼ正船首1.5海里のところに標識灯を認め、同じ針路のままで続航すると、短時間のうちに定置網に乗り入れる危険があったが、そのころ、漁業協同組合へ報告する漁獲量の確認作業を思い立ち、同作業終了後に同網を替わしても間に合うものと思い、直ちに右転して定置網を避ける措置をとらず、前部甲板に赴き、漁獲したいかの箱を数えながら進行した。
こうして、A受審人は、定置網を避ける措置をとらないまま続航し、漁獲量の確認作業を終えて船橋に戻ろうとしたとき、19時00分清宝丸は、南防波堤灯台から253度1.2海里の地点で、原針路、原速力のまま定置網に乗り入れ、これを乗り切った。
当時、天候は曇で風力1の東北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期に当たり、付近海域には西流があった。
その結果、清宝丸は、損傷がなかったが、定置網の沖網を破損した。
(原因)
本件定置網損傷は、夜間、北海道浦河港西方沖合において、同港に向け帰航中、定置網を避ける措置が不十分で、同網に向けたまま進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、北海道浦河港西方沖合において、同港に向け帰航中、ほぼ正船首に定置漁業の漁場区域の南端に設置された標識灯を認めた場合、短時間のうちに定置網に乗り入れる危険があったから、直ちに右転して同網を避ける措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、漁業協同組合へ報告する漁獲量の確認作業を思い立ち、同作業終了後に定置網を替わしても間に合うものと思い、同網を避ける措置をとらなかった職務上の過失により、前部甲板で漁獲量の確認作業を行い、定置網に向けたまま進行し、同網に乗り入れる事態を招き、定置網の沖網を破損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。